イタリア野菜を宮城から 「プンタレッラ」と「タルディーボ」
2011年03月16日
●背景
宮城県とイタリア・ローマ県は伊達正宗の家臣、支倉常長がローマ法王に謁見したという歴史的な背景により、2001年10月に友好姉妹県となっています。
そこで、ローマとゆかりのある宮城から、日本ではまだあまり知られていない「プンタレッラ」や「タルディーボ」等の魅力あるイタリア野菜を届けようと、宮城県農業・園芸総合研究所では、平成18年度より栽培試験を始めました。
「プンタレッラ」
●特徴
プンタレッラは、主にローマ近郊で10月下旬~3月初旬にかけて収穫されるローマの伝統野菜で、「冬の野菜の王様」と言われています。
キク科キクニガナ属、チコリの仲間でカタローニャという野菜の若芽の部分が「プンタレッラ(プンタレッレ)」です(写真上、左下)。この部分をサラダにして食べるのが、地元ローマでは一般的です(右下)。
日本では昭和61年ごろから栽培が始まりました。これまでにない風味と、ユニークな形状が個性的・魅力的な野菜です。英名ではアスパラガスチコリと言われます。
茎の中は中空で、シャキシャキの食感とほろ苦さは「大人の味」。サラダやパスタ、スープの具材として最適です。
左上 :プンタレッラ(晩成種) / 右下 :プンタレッラのサラダ
●宮城で取り組んでいる栽培・流通の現状
高付加価値化を図るため、種子をローマから取り寄せ、その中で優良な2系統(早生種※1と晩生種※2)を選択し、安定した出荷ができる生産技術を確立しました。その種子と栽培技術を現地に移転し、産地形成を図ってきました。
※1 早生種 11月~1月収穫、葉数が多いタイプ
※2 晩成種 2月~3月収穫、茎が太く、色が白いタイプ
左上 :プンタレッラ(早生種) / 右下 :パイプハウスで栽培
産地化している「JAみやぎ仙南西洋野菜研究会」では、現在生産者15名がパイプハウス内でプンタレッラを栽培し(写真右上)、11月~翌春3月まで、主に仙台や東京市場に向けて安定した出荷をしています。
鮮度のよいものをできるだけよい状態で実需者に届けられように、注文量にあわせて、前日収穫した株を翌日には市場へ出荷できる体制をとっています。さらに、全国で利用してもらえるように、県内の卸業者から宅配する体制もできており、市場になじみにくい稀少食材を安定供給できる流通システムを構築しています。
その他にも、独自に産地化を図ってきたグループや、ホテルやレストランに直接販売している個人の生産者もいます。
今後さらに多くの方に知ってもらえるように「プンタくん」(下図)とともに安定生産・販売促進に力をいれています。
キャラクター「プンタくん」
「タルディーボ」
●特徴
主にイタリアのヴェネト州で生産され、冬に出荷される高級野菜です。キク科キクニガナ属、チコリの一種で、中肋(ちゅうろく)が白く、葉身の部分が赤紫色の赤チコリーで有名なトレヴィーゾの中の晩生種が「タルディーボ」(写真右)です。
葉が細身で白と赤紫のコントラストが美しく、食べると少しほろ苦いのが特徴です。ほとんどが生食用でサラダとして食されますが、イタリアでは栽培に手がかかる高級野菜として、創作料理が次々作られるほど人気があります。
畑で株養成した後に株を掘り上げ、天然の水槽で軟白し、中心部が赤紫に伸びるように育てます。
●宮城で取り組んでいる栽培・流通の現状
7月下旬~8月上旬に播種します。
30日程度育苗し、露地に移植して株を養成、その後、暗室で水耕栽培により軟白し、12月下旬~3月上旬に出荷しています。
「JAみやぎ仙南西洋野菜研究会」等に技術移転して、昨年から栽培を開始しました。プンタレッラと同様に、こだわり出荷をしています。
購入種子の品質にバラツキが多いイタリア野菜の中で、「タルディーボ」は比較的よいものが収穫できます。軟白のめやすは株の中心部が赤くなった時期(写真左下)で、その後は露地に株を据え置きできるので、出荷時期(軟白には3週間程度要する)を考慮した計画的な栽培が可能です。
都内のイタリアンレストランでは、高級サラダ(右下)としてデビューしています。
まだ知名度が少ないので、県内でも利用できるように振興を図っています。
左上 :株の中心部が赤くなったタルディーボ
右下 :タルディーボのサラダ
今回は冬野菜の代表的な2品目を紹介しましたが、今後さらに品目をふやし、おいしいイタリア野菜「フィノッキオ」「チーマ・ティ・ラーパ」等も、周年で宮城からお届けできるようにしていきたいと考えています。
執筆者
宮城県農業・園芸総合研究所
山村真弓
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