機械収穫に適したアズキ新品種を育成しています
2010年03月04日
●大粒アズキ栽培上の問題点
京都府では、丹波地域を中心に、大粒で風味・香りがよい「丹波大納言」と呼ばれる大粒のアズキを生産しています。煮くずれしにくいことから、和菓子の材料として高い評価を受けています。
アズキの生産拡大に向け、京都府は、一連の作業を機械化した省力的な栽培体系の導入をすすめています。しかし、京都府の主力品種「京都大納言」と「新京都大納言」には、倒伏しやすいという欠点があります。倒伏すると、機械でうまく収穫できず、刈り残しや、粒が土で汚れるという問題が発生します。
そこで、これらを改善し、収量や品質を損なわずに機械収穫できるアズキ新品種の育成を行っていますので、これまでの成果をご紹介します。
●新品種育成の経過
過去に府内各地で栽培されていたアズキを収集し、遺伝資源として約350系統が、京都府に保存されています。これら系統の中から、倒れにくい、収穫時期が早く揃っている、子実品質が優れている等の特徴を持っている系統を選び出し、交配に利用することとしました。
アズキ遺伝資源の特性調査。収穫期を迎えて黄化している系統とまだ緑色の葉が残る系統が見られる
左から 京都大納言、新京都大納言、遺伝資源193、遺伝資源200
交配親として用いたアズキ品種・系統の草姿
(左2株は大粒大株系統、右2株は小粒小株系統)
草丈が低く、枝が横に広がらない草姿の遺伝資源系統(遺伝資源193や200)と「京都大納言」や「新京都大納言」等を交配しました。得られた雑種アズキは、両親の様々な特性を持ちあわせています。その後は、1年に2回栽培し、これまでに約6000個体について、開花や収穫時期、草姿や倒伏しにくさ等の特性および、大納言にふさわしい粒の大きさ・色であるかの品質を調査してきました。
赤莢と白莢のアズキを交配し、得られた種子から生育した赤莢の交配後代
左上 :世代を進めるための冬季の温室栽培
右下 :特性調査のための夏季の普通栽培
その結果、これらの特性を兼ね備えた6系統を有望として、選抜しました。
これらの有望系統と「京都大納言」を比較したところ、「京都大納言」は草丈が伸び、根元付近からしなって倒伏していましたが、選抜した系統は、株の姿が真っ直ぐで、草丈も低くなり、倒伏しにくくなっています。そのため、これら有望系統は、収穫時にコンバイン等の機械で収穫しやすくなってきていると言えます。
「京都大納言」と遜色ない粒の色や揃いが確かめられた「選抜系統」
●今後の計画
今後も調査を続けて、有望系統をさらに絞り込む予定です。また、加工適性や製餡特性調査を行い、品質面でのチェックを行うと同時に、京都府内のアズキ産地で試験栽培することで、実用性を評価する予定です。
これらの結果をふまえて、機械収穫に適し、製餡特性の優れた新品種を普及・展開してアズキの生産振興につなげたいと考えています。
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執筆者
京都府農林水産技術センター 生物資源研究センター 応用研究部
静川幸明