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遮光フィルムを用いたホワイトアスパラガス無培土栽培技術

2008年09月19日

 近年、ホワイトアスパラガスは、青果用としての需要が増加傾向にあり、北海道では、今後もギフト商品を中心にさらなる需要の拡大が見込まれています。


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 しかし、従来の培土栽培法(アスパラガスの畝上に土を盛って、土中で若茎を軟白化する栽培法)は、盛り土に適した砂質土壌を大量に必要とするため、栽培できる地域が限定されてしまいます。また、収穫に手間と熟練を要することもあり、培土栽培法で青果用ホワイトアスパラガスの生産量を増やすことは困難な状況です。


 そこで、今後の青果用ホワイトアスパラガスの需要拡大に対応するために、より簡易なホワイトアスパラガスの栽培法の研究に取り組みました。

 この研究では、ハウス作型のアスパラガスの畝上に大型遮光トンネルを設置して、暗黒条件下でホワイトアスパラガスを生産する技術、「遮光フィルムを用いた無培土栽培技術」について検討しましたので、ご紹介します。


 ハウス内に高さ1.5~2m程度の大型トンネルを設置し、遮光フィルムを被覆します。これにより、若茎を軟白化してホワイトアスパラガスが収穫できます(図1)。トンネル内は光が一切入らない暗黒条件下ですが、頭にヘッドライトを付けて手元を照らせば、グリーンアスパラガス栽培と同様な収穫ができ(図2)、従来の培土栽培法よりも収穫作業は簡単になります。


図1 大型遮光トンネルを利用したホワイトアスパラガス栽培の様子  図2 収穫作業の様子
 :図1 大型遮光トンネルを利用したホワイトアスパラガス栽培の様子
 :図2 収穫作業の様子


gijyutsu_whiteasupara_3.jpg また、この栽培法で収穫できるホワイトアスパラガスの頭部形状は、グリーンアスパラガスよりも締まりが良く、アントシアニン着色も目立ちません(写真 右)。遮光フィルム被覆によりトンネル内の地温上昇が抑えられるため、収穫開始期が5日程度遅れる傾向にあります。収穫本数は減少しますが、太い若茎が多く収穫できるため(写真 右)、グリーンアスパラガス栽培と同程度の収量性が得られます。
右:遮光フィルム被覆により生産されたホワイトアスパラガス若茎


 なお、この栽培法は、ハウス春どり作型、ハウス立茎作型(ハウス長期どり作型)の両作型で利用可能です。ハウス立茎作型に導入すると、同一ハウス内で春季にホワイトアスパラガス、夏季にグリーンアスパラガスを収穫することも可能です。


栽培上の留意点
gijyutsu_whiteasupara_4.jpg この栽培法は、3年生株以降のハウス圃場(ハウス立茎および春どり作型)に導入できます。春季のホワイトアスパラガス収穫以外の栽培管理はグリーンアスパラガス栽培に準じます。

 この研究では、遮光フィルムとして「ホワイトシルバー」((株)東罐興産:遮光率99.9%以上)を使用しました。
 被覆時の遮光フィルムの固定が不完全で、大型トンネル内にわずかでも光が差し込むと、若茎にアントシアニン着色が生じます(写真左)。常にトンネル内が暗黒条件となるよう、細心の注意を払ってください。また、収穫物も可能な限り光が当たらないようにしてください。
左 :ホワイトアスパラガス若茎のアントシアニン着色


執筆者
北海道立花・野菜技術センター 研究部 野菜科
地子 立 (じし たつる)