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ホウレンソウの葉の表面に観察される白色顆粒

2008年09月17日

gijyutsu_hourensou_image1.jpg ホウレンソウを栽培していると、白色の顆粒が多数葉に付着しているのに気づきます(写真右)。通常は調製作業や流通の過程で、大半は脱落しますが、たまたま葉に残っていた顆粒を見た消費者から、残留農薬や化学物質ではないかと心配して、問い合わせがあるようです。
右 :葉に付着した多数の白色顆粒


 顆粒への問い合わせに対し、これまでは、シュウ酸カリウムの結晶ではないかとの回答がなされていたようです。
 しかしながら、シュウ酸カリウムは劇物でもあり、劇物が目に見える形でホウレンソウに残留しているという回答では消費者の安心を獲得することはできません。


 そこで、ホウレンソウの葉の表面の白色顆粒について、調査をしました。
 この顆粒は、ホウレンソウ品種に関わりなく観察されます。さらに、可能な限り昆虫や病原菌との接触を避けて、水耕栽培しても生じますので、病気や虫害とは関係なく、ホウレンソウ自体の生理現象によるものと考えられます。


gijyutsu_hourensou_image2.jpg 顕微鏡で観察すると、顆粒は直径0.1~0.2mmの球状です(写真左)。シュウ酸カリウムの結晶であれば、球状ということはありえません。この顆粒は乾燥すると90%程度重量が減少するため、水分を90%程度含むものと考えられます。また、顆粒は水に浸けても溶けたり破壊されたりしませんが、クロロホルム/メタノールのような脂溶性物質を溶かす溶媒に浸けると破壊されました。
左 :直径0.1~0.2mmの球状の白色顆粒


 これらのことから、ホウレンソウの葉の表面の白色顆粒が、水溶性の劇物であるシュウ酸カリウムの結晶ではないことは明らかです。脂溶性の膜で水を包んだもの、すなわち夜店などで売っている、風船に水の入ったヨーヨーのイメージではないでしょうか。

 それでは、この顆粒がどういう働きをしているのか、興味あるところです。


 顆粒をつぶして分析したところ、シュウ酸等の有機酸は検出できましたが、通常の野菜組織には含まれる糖やアミノ酸は、ほとんど含まれていませんでした(図 白色顆粒とホウレンソウの葉の間の成分比較)。


gijyutsu_hourensou_image4.jpg
図 白色顆粒とホウレンソウの葉の間の成分比較


 このことから、有機酸のような不用物を捨てるための、ゴミ箱のような役割ではないかと推測していますが、このことについてはさらに検討が必要です。


 顆粒は簡単に葉から落ちますので、出荷調製や流通の過程でほとんど失われます。また、家庭で調理する際にも、さらに脱落しますので、多量に口に入ることは考えられません。たとえ口に入ったとしても、顆粒に含まれるシュウ酸の濃度は低いため、安全上問題はありません。

 ただし、顆粒自体には砂粒のような食感があるため、家庭では水洗いして、よく顆粒を落としてから食べることをお薦めします。


執筆者
農業・食品産業技術総合研究機構
野菜茶業研究所 野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム 
堀江秀樹

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