期待のアオジソ新品種「愛経1号」でシェア日本一を守る!
2007年09月27日
斑点病に強く、香りのよいアオジソ新品種「愛経1号」(仮称)が愛知県で育成されましたので、ご紹介します。
育成のねらい
愛知県の東三河地域で生産されているアオジソ(大葉)は、全国シェアの約6割を占める特産品です。
高品質周年出荷でシェアを維持してきましたが、近年、中国からの輸入も増えており、より安全安心な国産品で差別化を図り、先進産地としての優位性を強化する必要に迫られています。
大葉の産地では、長期の連作により、特に夏の高温多湿な条件でシソ斑点病が多発し、大きな問題となっています。全面マルチなどの耕種的防除法の開発により、10年ほど前に比べて被害は軽減されていますが、登録農薬も少なく、依然として難防除病害です。
そこで、このシソ斑点病に強く、香り等は従来の栽培系統と同等の高い品質性を持つ大葉の新品種の育成をめざしました。
育成の経過
市販品種の中から、斑点病菌による斑点症状が出にくい「青縮緬紫蘇」(アサヒ農園)を選定し、産地の高品質栽培系統と交配して、斑点病に強くかつ産地系統と遜色ない品質を持つ大葉を選抜育成しました。
産地の栽培系統は、長年にわたる選抜により、非常に優れた葉型や香りをそなえています。これらの優れた形質を、新品種に効率よく取り入れるため、選抜は主要産地のほ場で行い、生産者が参加して、外観品質と官能による香りが優れる系統を選ぶという体制をとりました。
さらに、斑点病抵抗性と、アオジソの香りの主成分であるペリルアルデヒド含量については、県農業総合試験場で分析や検定をして、最優良系統を絞り込みました。
※発病指数は現地栽培系統の斑点数を1.0とした指数で、小さいほど抵抗性が高い
図2 斑点病抵抗性とぺリルアルデヒド含量の比較
また、斑点病の抵抗性や香りの強さについて遺伝性を調べ、ペリルアルデヒド含量の広義の遺伝率は0.62と高く、個体選抜で優良系統が早期に固定できると考えられましたが、斑点病抵抗性は0.30と比較的低かったため、抵抗性の高い後代が多く含まれる系統から優良系統を選抜し、抵抗性の効率的な固定に努めました。
「愛経1号」の特長
・高温多湿時に多発する斑点病に強い。
・葉の縮緬が若干強いが、夏季の葉型は優れる。
・従来の栽培系統に比べて、葉裏のアントシアニンが出にくいので、従来よりも低温管理が可能。
・従来の栽培系統と比べて、伸長性、分枝性、節間長はほぼ同じで、単位面積あたりの収量は同等。
・以上の特徴から、盛夏期から晩秋にかけて出荷する作型に適応性が高いと考えられる。
品種登録
愛知県と、愛知県経済農業協同組合連合会(愛知経済連)の共同育成品種として、登録出願し、現在審査中です(平成19年3月出願公表)。種苗の入手には育成者の許諾が必要ですが、産地戦略として、当面、「愛経1号」の栽培は県内産地限定とされています。
執筆者(研究担当者)
愛知県農業総合試験場山間農業研究所 番 喜宏
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)