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酪農経営の簡易経営分析と経営改善ができる ~「酪農簡易経営分析ソフト」のご紹介~

2007年09月10日

●はじめに

 酪農家の皆様の経営改善に役立つよう、簡易に経営分析ができ、経営規模別に全国平均値との生産費構成比較や、生産費や技術の水準把握を通じて経営改善試算ができるソフト「酪農簡易経営改善ソフト」を作成しましたので、その内容を簡単にご紹介します。


この「酪農簡易経営改善ソフト」は、農林水産省統計情報部の牛乳生産費調査と、全国規模で調査された調査結果が、基本となっています。


 牛乳生産費調査は、地域別、規模別に搾乳牛部門についてとりまとめられていますので、生産コストを入力すると、費目ごとに、ご自分の経営の水準を調査値と比較することができます。

 繁殖成績、自給飼料コストや労働報酬(所得)は、分娩頭数、自給飼料部門のコストや労働時間を入力すると、知ることができます。

生産費や技術水準は、5段階に区分された状態で表示されていますので、改善目標値を入力すると、別途設定された計算式により、改善後の数値が試算されます(生産費は表1、技術水準は表2を参照)。


 「酪農簡易経営改善ソフト」は、(株)デーリィジャパン社のホームページ から、ダウンロードすることができます。また、利活用に当たっては「(酪農簡易経営改善ソフトの)使用解説書」もダウンロードし、参考にされると便利です。


●「酪農簡易経営改善ソフト」の内容

(1)基本画面

 「基本画面」(乳用経産牛生産コストの概算システム)が主たる入力画面です。画面左上の経営概況欄に繁殖成績等の「農家台帳値」と、その下の金額欄に費目ごとのコストを入力します。微細な費目でデータが不明な場合は、牛乳生産費調査結果の値が採用される仕組みです。

 また、自給飼料コストを計算したい場合は、別途、シート名「自給飼料」に数値を入力すると、基本画面に反映されます。

 以上の作業によって、基本画面には、分娩間隔、所得、自給飼料生産単価が表示されます。

基本画面 (クリックすると大きく表示されます)


(2)地域別、規模別の費目毎の比較

表4には、規模別の、北海道と都府県の費目毎コスト平均値と比較した表・グラフが表示されています。

これによって、経営の特徴や改善項目が明確になります。

表4 (クリックすると大きく表示されます)


 (3)費目の5段階評価と改善効果

表1には、全国規模で調査された収支の5階層平均値と分析農家の実績値、実績値の階層が表示されています。

経営の特徴が明らかになるとともに、改善試算値を入力することで、試算結果が表示されます。

表1 (クリックすると大きく表示されます)

 
(4)収益性の5段階評価と改善効果

表2には、5階層の平均値と実績値、実績値の階層が表示されています。
経営の特徴が明らかになるとともに、改善試算値を入力すれば、試算結果を知ることができます。

表2 (クリックすると大きく表示されます)


●終わりに

 このソフトは事例と理論をもとに作成しています。ここでは概略のみ解説しましたが、要因が複雑に絡んでいたり、地域によって基礎数値も異なる等の事情がありますので、基礎数値を組み替えたり、要因を勘案した上で試行する必要があります。

 また、このソフトは「暗中模索の酪農経営ではなく、全国の調査事例を教科書として酪農経営の改善に役立て」ることを願って作ったものです。

 これからの酪農経営は、収益性の向上を目指すのであれば、酪農が好きとか勤勉さだけでなく、経営管理能力として、将来の見通し、経営形態を含めた改善計画に問題が生じないように、自己責任感覚の向上を含めた経営管理能力の向上が必要と強く感じています。

(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)


執筆者
熊本県農業技術課主幹 圓山 繁