生乳生産量と所得を予測・調整できるソフトです ~「生乳計画生産・所得推定ソフト」のご紹介~
2007年07月12日
●はじめに
酪農家の皆様の経営に役立つよう、月別に生乳生産量と所得を予測・調整できるソフト「生乳計画生産・所得推定ソフト」を作成しましたので、その内容を簡単にご紹介します。
この「生乳計画生産・所得推定ソフト」は、既存の繁殖管理ソフトに、牛群検定成績を基に作成した、西南暖地における産次別、分娩月毎の標準泌乳曲線をリンクさせています。
基本画面(図1)を通じて繁殖状況入力後に泌乳能力の補正を行い、予想されるコストや月別乳価を入力すれば、予想乳量だけでなく、乳代・生産費・所得を予測できる内容になっています。(表6、図3参照)
また、瞬時に、出荷乳量枠に合わせた牛群構成の調整ができます。
「生乳計画生産・所得推定ソフト」は、(株)デーリィジャパン社のホームページ から、ダウンロードすることができます。また、利活用に当たっては「(生乳計画生産・所得推定ソフトの)使用解説書」もダウンロードし、参考にされると便利です。
●「生乳計画生産・所得推定ソフト」の内容
(1)基本画面
基本画面の繁殖台帳、個体乳量補正表、乳価、コストを入力すれば、表6、図3の月別出荷乳量試算/収支試算が表示されます。
(2)繁殖管理台帳
繁殖管理台帳は、「繁殖台帳 経産牛」(表1)に示した経産牛の繁殖管理台帳と、別途、育成牛の繁殖管理台帳があります。
記入日に続いて、個体番号、産次、分娩日、授精日、妊否、乾乳日を入力することによって、最新の繁殖成績、再発情予定日、乾乳予定日、分娩予定日等が表示されます。
(3)標準泌乳曲線と乳量予測
表2の「分娩月別の月間・日乳量(初産牛。別途経産牛用もある)」は、鹿児島県畜産試験場が牛群検定成績をまとめた、産次毎、分娩月毎の305日間の泌乳曲線を乾乳時点まで延長し、さらに、平成16年度の全国平均泌乳水準に再修正してあります。
毎月の牛群検定成績等の乳量を入力して標準乳量を補正し、今後の乳量を予測する仕組みです。
表2を泌乳曲線化したものが、「泌乳曲線(初産)」(図2)です。初産牛特有の泌乳曲線(泌乳後期が経産牛のようにダウンしない)や、分娩月の影響が読み取れます。
次産次の乳量や未経産牛の乳量も、予想される数値を入れることによって計算できます。また、妊娠確認を入力すると、自動的に乾乳期間が設定されます。
(4)乳価
予想される乳価の任意入力表は、表4です。
表3の実績乳量・実績乳価に数値を入力し、予想乳量・乳代・所得を補正します。
(5)生産コスト
生産コスト任意入力表は、表5です。
所得率20%を標準とし、別途5%間隔で、10~30%の4水準と任意の水準を設け、標準乳価の88.7円と所得率から計算される生産コストに、乳量を乗じて求める内容にしています。
(6)所得
乳代から生産コストを差し引いて計算される所得は、表6・図3に示しています。
所得は、乳代差し引き精算書から、さらに減価償却費や個人購買の費用等を差し引いたもので、乳代差し引き精算書よりも少額になる点にご注意ください。
(7)生産乳量の調整
最後に、生産乳量を随時見直しましょう。妊娠による乾乳期間の発生・泌乳トラブルの発生による減乳や、育成牛の妊娠確認による増乳が生じます。よって、年度初めには、生乳出荷枠の110%~115%の予測乳量が必須と思われます。110%未満の場合は、初産牛や経産牛の導入計画を即実行する必要があります。
(8)おわりに
今日の酪農経営は、生乳生産枠や季節別乳価に合わせた生乳生産体制が必要ですし、資金繰りの見通しも不可欠です。さらに、年々悪化する繁殖成績の向上も必須です。
泌乳曲線や乳価・コストは地域や産次や分娩月によって大きく異なります。地域の実態に応じた数値に入れ替えて利活用されることを期待しています。
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)
執筆者
熊本県農業技術課主幹 圓山 繁