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ナス新品種「あのみのり」で農作業の大幅な省力化が可能に

2007年04月19日

~受粉や植物ホルモン処理なしでも実の着くナスの新品種~


2006年12月に品種登録出願公表
 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所は、受粉や植物ホルモン処理なしでも実の着くナス新品種「あのみのり」(旧系統名:ナス安濃交4号)を育成しました(品種登録出願番号第20113号、2006年12月18日出願公表)。


一般的ナス品種の栽培
 通常のナス品種は受粉しなければ果実は肥大しません。特に冬季の施設栽培等においてはうまく受粉が行われないため、果実が肥大しません。そこで、着果および果実の肥大を安定化させるために植物ホルモン剤処理や訪花昆虫が利用されています。

しかし、植物ホルモン剤処理には多大な労力を必要とし、栽培に要する全労働時間の約1/4~1/3に達します。

また、訪花昆虫利用は花粉形成に必要な最低温度を確保する必要があるほか、広く使われるセイヨウオオマルハナバチは「特定外来生物による生態系等に係る被害防止に関する法律」(外来生物法)において特定外来生物に指定され、利用に当たってはいくつかの適切な措置が必要となっています。


受粉や植物ホルモン処理が「不要」な画期的品種
「あのみのり」は、受粉しなくても果実が自然に肥大する性質(単為結果性)をもっているため、植物ホルモン剤処理や訪花昆虫を利用しなくても果実の生産が可能である画期的な品種です。

1994年にイタリアから導入したナス品種「Talina」を素材とし、国内品種の「中生真黒」や「なす中間母本農1号」と交雑した後代から選抜した系統間の一代雑種(F1)で、果実外観や食味も良好で、生食用および加工用として利用可能です。


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「あのみのり」果実 (黒線は10cm)


試作種子の有償分譲が可能
「あのみのり」種子については、民間種苗会社より市販の予定ですが、市販されるまでの期間は、試作種子の有償分譲が可能ですので、野菜茶業研究所 企画管理部 業務推進室 運営チーム(059-268-4623)までお問い合わせ下さい。

 なお、当該品種の育成は、農林水産省プロジェクト研究「画期的園芸作物新品種創出における超省力栽培技術の開発」の中で得られたものです。


「あのみのり」の主要特性
1)花粉が受粉しなくても果実が肥大する単為結果性をもっています。
2)着果促進処理が不要であること、側枝の伸長がゆるやかで整枝が容易なことから、省力栽培が可能です。
3)果実は長卵形で、1果重は「千両二号」よりもやや重く、果皮の光沢に優れ、外観は良好です(写真)。
4)関東以北の半促成栽培地域や露地栽培地域で好結果が得られており、暖地の促成栽培でも利用可能です。


【用語説明】
 植物ホルモン剤:
 植物の生長を調節する物質のこと。ナスの着果および肥大を促進するためには、その一種であるオーキシン(4-CPA等)が利用されています。


執筆者(研究担当者)
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜育種研究チーム
齊藤 猛雄
TEL:059(268)4653