鉄コーティング種子による稲作湛水直播技術に注目集まる
2007年04月02日
増加する水稲直播栽培面積
水稲の直播栽培面積は、全国で現在1万ha超。最近は、北陸~東北地域で増加傾向にある。これを今後5年間で5万ha程度に拡大できるよう、国は環境整備の方針を示している。
クボタの田植機で効果を実証

浮き苗を防ぎ、直播がより確実に!
この技術は、催芽した種子を鉄粉でコーティングし、代かき後に湛水あるいは落水した圃場の表面に直接播種する技術だ。
鉄粉でコーティングすると播種する種子が重くなり、浮き苗を回避できる。コーティングに使う鉄粉の量は、種子の重さに対し0.5倍程度とされる。
発熱による種子障害に注意を
コーティング方法は、従来法とほぼ同じで、酸素発生剤(カルパー)の代わりに鉄粉と焼石膏を混ぜ、水をスプレーして種子をコーティングする。コーティング後は種子を薄く広げ、酸化・放熱を進めると同時に自然乾燥させれば、コーティング種子ができあがる。
注意しなければならないのは、コーティング時の発熱による種子の障害だ。近畿中国四国農業研究センター発行の技術マニュアルでも、発芽率の高い種子を使うこと、処理中に異常な発熱を起こさないよう強調している。
圃場表面へ播種するわけは
圃場の表面に播種する理由は、土中に播種されることによる苗立ち障害を回避するため。表面に播種すると倒伏の危険性はあるものの、条播すれば実用的には問題ないとされている。
メリットは4点
主なメリットが4点ある。1)従来の方法に比べ種子の生産コストが格段に安い。鉄粉などの資材費が10a当たりおよそ1000円程度で済む。
2)雀の食害がほとんど見られない。種子の皮膜が堅くなっているためと考えられているが、当初予期していなかった大きなメリットだ。
3)コーティングした種子が長期間保存できる。よって、農閑期での作業が可能となる。
4)市販している直播機を若干調整すれば十分対応できる。
今後の課題:大規模営農に対応したコーティング種子の大量製造・流通

今後の課題は、「大規模営農に対応したコーティング種子の大量製造・流通」にある。栽培面では、「湛水下における能率的な表面条播技術の向上」だろう。湛水下での技術が確立すると、さらに進んだ雑草防除が可能になり、直播栽培を大きく推進するものと期待される。
((株)クボタ機械営業本部技術顧問 高木清継、月刊「日本の農業」2007年1月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)