提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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農業経営者の横顔



ケイトウとオリエンタルユリを全国へ

2023年04月10日

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向井明日香さん(佐賀県太良町 明日香園)


 佐賀県の最南端にある太良町は、有明海に面して温暖な気候に恵まれた地域である。長崎県との県境にある多良岳、その佐賀県側の山腹にある明日香園の向井明日香さんは、コロナ禍の真っ只中、2021年9月に、父である山口秀行さんから代表取締役社長を継いだ。


自社で育種したケイトウを栽培
202304yokogao_asukaen04.jpg 明日香園のある土地は、元はみかん山だった。両親がキクの栽培を始め、いろいろな草花を育てた時期を経て、ユリ専作に転換。その後、夏場にケイトウを作るようになった。
 年間の出荷数はユリ15万本、ケイトウ40万本。ユリは、オリエンタルユリを40種類近く、ケイトウは父の秀行さんが育種(品種改良)を手がけ、地味なイメージを覆す、色とりどりの美しいケイトウを育てている。
 秀行さんは国内で名を知られたケイトウの育種家である。流行を見て、毎年のように新しい品種を生み出している。
 その努力の結果、10年に1度開催されている花の世界博覧会「フロリアード2022」アルメーレ国際園芸博覧会「その他の秋の花」部門にて、世界中から出品がある中、「アスカセレクト ラビリンス」が銀賞2席を受賞された。
 残念ながら、園を訪れた2月は端境期でケイトウはなかった。
右 :アスカセレクトシリーズ


こだわりの栽培で高品質の花を育てる
 ハウスは社屋(作業場)近くのほか、少し山腹を上がった場所にも拡がっている。複数の広いハウスを使って、出荷が途切れないように調整しながら育てている。
 雇用は現在10名で、3名がミャンマーからの技能実習生(特定技能)だ。話をうかがった午前10時半頃は、ユリの収穫が終わり、出荷に向けて調製作業が行われていた。


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 :明日香園のハウス群
 :収穫期のオリエンタルユリ


 「ユリもケイトウも、こだわって栽培しています。気をつけているのは、病気を出さないことですね」。もともとみかんを育てていたところなので土質が良い。その上、こだわりの自家製有機肥料を使っている。ユリはつぼみが全部咲かないで終わってしまうことがあるが、明日香園のユリはつぼみが全部開くという。それだけ丈夫に育っているということだ。


休日を設け、ゆとりある経営をめざす
 花の栽培は休みを取りにくいと聞く。明日香園は日曜を休日としている。そのため温度管理を工夫して出荷調整を行っているが、「ハウスのビニールの開け閉めが重なると大変なんです」と明日香さん。広大なハウスを見たあとだけに、その大変さがわかる。
 出荷は全国の市場に向けて行っている。コロナにより需要が落ちてたいへんな時期があったが、コロナ以前のレベルにほぼ回復した。

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 :収穫期のケイトウ
 :広いハウスでオリエンタルユリを栽培中。藤津農業振興センターの岩井主査(右)と打合せ


 社長となって約1年半、心境を尋ねると、「流れで(社長を)継いだんですよ」と謙遜するが、市場の動きや消費者の好みを探り、情報収集も怠らない。千葉県南房総市の花産地へ視察に行って「とても勉強になった」と話してくれた。両親や従業員とともに、これからも経営を守り立てていく。(水越園子 令和5年2月24日取材 協力:佐賀県杵藤農林事務所藤津農業振興センター)

株式会社明日香園 ホームページ
佐賀県藤津郡太良町伊福甲1927-2