提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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農業経営者の横顔



小松菜発祥の地でコマツナと向き合う日々を送る

2015年08月25日

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小島啓達さん(東京都江戸川区)


 東京都江戸川区篠崎町の小島啓達(ひろさと)さん。家族で先祖から受け継いだ農地を守り、江戸川のほとりでコマツナを通年専作している。小島家のコマツナの栽培・収穫は、両親と若手夫妻に分かれ、腕を競う毎日だ。

 啓達さんたち若手は、主に、学校給食等の契約出荷や市場出荷向けのコマツナづくりを担当、鉄骨ハウスやパイプハウスを使って栽培を行っている。両親は施設のほか、露地圃場も使って市場出荷や加工向けのコマツナづくりを行っている。
 以前は水田もあり、しめ縄用の実とらず栽培も行っていたが、数年前に畑に転換し、近隣から田んぼは姿を消した。現在はコマツナ出荷に専念している。


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 :小島さんのコマツナのハウス。住宅街の一角に並んでいる
 :左側の畑は数年前まで田んぼだった


都内有数のコマツナ産地
 この地域発祥のコマツナ。今、江戸川区はコマツナ専作の産地として知られているが、40年ほど前(昭和45~55年頃)は夏ホウレンソウの産地だった。葉菜類の輪作でツケナ類(コマツナ、ベカナ、シントリナなど)のほか、シュンギク、ホウレンソウなどが作られていたが、夏ホウレンソウの価格低迷に伴い、コマツナの作付が次第に増え、30年ほど前からコマツナ専作に移り変わってきた。東京都のコマツナ延べ作付面積456haのうち江東地域(江戸川区、葛飾区、足立区)が221haを占め(平成23年産東京都農作物生産状況調査)、都内でも最大の産地である。


201508_yokogao_tokyo2_0000.jpg 小島さんのコマツナは、周年栽培で年6作ほど。品種は「いなむら」、「わかみ」など数種類を、季節によって使い分けている。夏場は、早ければ21日で収穫できる。

 施設は無加温の軽量鉄骨ハウスやパイプハウス。播種時や収穫などの作業時には、日よけシートを使っている。土作りは、堆肥を年1回入れている。ポイントである水やりは、灌水チューブを使用しているが、一斉に発芽をそろえるには均一に灌水しなくてはならない。チューブの配置や水圧に気を配るが、日当たりや風向きなども影響するという。
右 :施設でのコマツナ栽培


 コマツナは収穫が作業時間のほとんどを占める。小島さんが耕うん、種まき、灌水、消毒、収穫、出荷と全ての作業をする一方、奥さんや母、妹さんはもっぱら収穫を担当している。収穫したばかりのコマツナを根付きのまま、ハウスの中で素早くテープ結束。ステンレス製のカゴに詰めて持ち出し、自宅横の作業スペースへ。根についた泥を落とした後、水槽で全体を洗浄。その後、予冷庫で冷やして箱詰めを行い、市場に出荷している。


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 :収穫を待つコマツナ /  :カゴに詰められたコマツナ


市場には自ら搬入する
 地域の農家は市場に直接持ち込むのが普通で、小島さんも自分で市場へ運ぶ。販売先は大田市場が中心だ。出荷先の市場は各農家で異なっており、大田市場のほか、築地、淀橋、葛西など近隣の市場へ江戸川産コマツナが出荷されている。

 規格は出荷先で異なり、大田市場は一束500g、築地は一束400gが基本。加えて、お客さんの希望の草丈に合わせた規格で収穫、荷造りをしている。また、市場を経由してスーパー2店舗に週3回、出荷している。決まった曜日に店舗の規格に合わせた束を作らなければならないが、「市場出荷は自分のペースで出せるのがよい」そうだ。


 学校給食向け等の契約出荷も行っている。江戸川区内の小中学校92校では、地元のコマツナが、生産者自らの手で納入されている。小島さんも近隣の4校をカバーしているそうだ。給食の発注はkg単位なので、市場より草丈は長め、一束1kg前後の大きめの規格である。ほかにも都内の学校給食向けも出荷を手掛けている。


コマツナだけを作り続ける
 一年365日、コマツナだけを作る。一品目だけ、毎日、淡々と作業をしている。就農前はアスリート(長距離ランナー)だったそうで、ひとつのことに集中するのは性格的にお手のものかもしれない。

201508_yokogao_tokyo2_0044.jpg 両親は、昔はトマトなどもつくり、「コマツナは楽しくない」そうだが、小島さんは「つまらなくないです。むしろ、いろいろ作る方が大変」と思っている。それに、売り先、値段、作りやすさ(作付け期間が短い)などを踏まえて、「コマツナが一番。春先と秋の収穫が重なるのはちょっと大変だが、毎日出荷できて経営的に強いし、計算しやすい作物」と考えている。
右 :コマツナを結束。出荷先に合わせて重さは違うが、ほとんど秤は使わない


 コマツナの市況は変動が激しく、今年はまずますの相場が続いているが一概に安心はできない。以前なら市場出荷ひとすじで経営が成り立っていたが、安定した売り先を求めて、数年前から新たな契約先を開拓した。「給食でも市場でも、お客さんをしっかり持っていないと厳しい」とのこと。
 消費地のど真ん中での農業経営は、売上げや手取りを常に意識しつつ作るものだと知った。土地の値段を考えれば、小島さんのコマツナは日本一高いコマツナなのではないか。東京にオアシスのように残る農地を守りながら、末永く、江戸川産コマツナをつくり続けていもらいたい。(水越園子 平成27年6月23日取材 協力:東京都中央農業改良普及センター)