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全国農業システム化研究会|提案一覧


野菜

新型エダマメコンバインの現地導入に向けた作業性調査(秋田県 令和3年度)

背景と取組のねらい

 秋田県のエダマメ栽培では、省力的な機械化一貫体系の導入が進んで労働時間が短縮され、作付けを拡大してきた。収穫脱莢作業は、小型から大型までさまざまな作業機が活用されており、近年はこれまでにない、自脱型で引抜式の高能率・高精度を特徴とするエダマメコンバインが発売された。
  そこで、秋田県で栽培されるエダマメの形態的特徴がエダマメコンバインの収穫適性に及ぼす影響と、収穫物の収容方法の違いが収穫作業時間に及ぼす影響を明らかにすることで実用性を検討し、エダマメコンバインの普及提案の資とすることとした。

対象場所

 ●秋田県秋田市(秋田県農業試験場内ほ場)

 秋田県のエダマメ栽培では、日本一を旗印に、関係機関が秋田県内全域で取り組みを進めてきた。現在、栽培面積は約1,300haで、おもに排水不良の転換畑を中心に作付けされ、天候の影響を受けて上下するものの、栽培面積の増加とともに、近年の出荷量は、東京都中央卸売市場でトップレベルとなっている。エダマメ栽培は機械化が進んでおり、県内でも機械導入が進み、大小さまざまな機械が、播種から調製のほぼ全作業において使用されている。

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実証した栽培体系


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耕種概要

●各区の概要
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※早生品種は、本来はマルチ栽培であるが、エダマメコンバインの脱莢性能を評価するため、あえて無マルチ栽培とした

●圃場条件
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●主な栽培基準
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供試機械

●播種作業
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直進アシストトラクタ(SL350GS)+枝豆整形マルチ同時播種機(MW2-150)

播種時の砕土率と出芽率、株間
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●収穫作業
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エダマメコンバインのタンク仕様(左:EDC1100-T)とコンテナ仕様(右:EDC1100-C)の比較

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成果

1.収穫時の草丈は、エダマメコンバインの適応範囲内であり、茎径は適応範囲よりやや細い場合があったが、収穫作業に支障はなかった。
 また、本試験では土落としオプションを装着して作業を行ったことで収容部への土の混入は少なく、収穫作業時間は1.94h/10a~3.86h/10aであった。

収穫時の生育量と収量
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注1:規格内収量は、1莢あたりの粒数が2粒以上で出荷基準に適合するものとした
注2:規格内莢率は、全莢重量に対する割合(%)として算出した


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左から「おつな姫」「味風香」「湯あがり娘」。赤い線は地下部と地上部の境界

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収穫時の作業方法の違いによる収穫作業時間の試算
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注1:理論作業時間は、長辺100m、短辺7.5(10条)で、直進時0.30m/s、旋回時0.15m/sで作業するとして、搬出、調整は除いて試算した

2.地際からの最下着莢高は0.6~3.6cmであった。これは、コンバインの適応範囲外であったが、デバイダを土中に潜らせ、引抜きベルトをできるだけ下げることで、培土によって土中に埋もれた茎を搬送ベルトで把持することが可能で、収穫作業を行えた。

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デバイダを土中に潜らせて、培土後の土中に埋もれた茎を引き抜く(引抜きベルトには注意する)

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引抜き部をできるだけ下げる

3.最下着莢高と収穫ロス(もぎ残し)に及ぼす影響は判然としなかった。
 また、主茎長が短いと収穫ロス(もぎ残し)が多くなる傾向であった。

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4.分枝折損率が高くなると、莢が分枝についたまま選別ドラムから排出されるため、収穫ロス(落下)が多くなる傾向であった。

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5.タンク仕様では電動コンベアの排出速度が速いため、コンテナを2個並べて排出することで、1個の場合に比べて搬出時間が短縮された。

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当該技術を導入した場合の経営的効果

 エダマメコンバインの導入により、収穫作業時の省人化、効率化が図られ、所得向上に寄与できる。
 一方で、収穫作業のみを効率化すると、収穫調製作業が律速要因となる可能性があるので、収穫作業後の調製作業も併せて省人化、効率化を図る必要があると考えられた。

今後の課題と展望

 エダマメコンバインを用いて効率的な作業を行うためには、播種時から収穫作業の効率化を見据えた播種作業方法についても検討が必要である。したがって、播種作業の省力化と効率化が期待される直進アシスト(GS)トラクタや枝豆整形マルチ同時播種機の活用についても、今後検討していきたい。
 また、現状、エダマメコンバインは無マルチ栽培のみに対応している。エダマメ栽培は無マルチ栽培だけでなく、低温期の出芽を安定化させるためにマルチ栽培も行われている。したがって、今後、エダマメコンバインの導入を含めた産地拡大を図るためには、マルチ栽培への対応も重要になると考えられる。

●実証年度及び担当指導普及センター:令和3年度 秋田県農業試験場