提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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全国農業システム化研究会|提案一覧


野菜

新たな自走式えだまめ収穫機の作業精度に関する実証調査(山形県 令和2年度)

背景と取組のねらい

 山形県置賜地域ではえだまめの栽培を推進しており、令和元年度の共同選果施設の稼働に合わせて、新規栽培者の増加、栽培面積の拡大とともに機械の導入が進んでいる。共同選果施設を効率的に利用し、収益性の高い農業経営を実践するため、更なる収穫の作業の効率化による規模拡大が求められている。
 そこで、省力・低コスト化に対応するため、規模拡大に資する新しい自走式えだまめ収穫機(以後、コンバイン)と、既存のえだまめ収穫機(以後、ハーベスタ)を比較し、作業効率や経済性について調査をおこなった。

対象場所

●山形県高畠町
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 高畠町は、山形県南部の置賜地域に位置しており、「まほろばの里」と呼ばれる。「まほろば」とは、古事記などにみられる「まほら」という古語に由来し、山や丘に囲まれた稔り豊かな住みよいところという意味を持つ。その言葉のとおり、肥沃な平坦部では稲作や畑作、山間地では果樹(ぶどう、西洋なし等)の栽培が盛んである。盆地特有の四季がはっきりした気候で、夏は暑く、冬は降雪が多い地域である。

実証した作業体系


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※培土は、長雨により実施できなかった

耕種概要

●各区の概要
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●圃場条件
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●排水対策の実施状況
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●主な栽培基準
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作業の能率と効果


コンバインによる収穫作業 能率と効果

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コンバインによる収穫作業
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コンテナに排出されたエダマメの莢

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(慣行)ハーベスタによる収穫作業


・8月28日収穫。
・ハーベスタ(慣行)による収穫時間は、10a当たり3.73時間。
・コンバインの収穫速度は
約0.28m/sで、1時間当たり
4.8a、1日当たりでは26.7aの面積を収穫可能であり、慣行のハーベスタの約2倍の作業効率が見込まれた。

●型式
コンバイン
クボタ EDC1100-C
(コンテナデッキ仕様)


▼(参考)収穫機械現地検討会

成果

(1)生育について
 播種前後に降雨が少なく、土壌がやや乾燥していたため、発芽は少し遅れた。その後、生育初期からの長雨により生育は停滞ぎみで経過し、一部では湿害と見られる下葉の黄化が見られた。また、土壌が乾かず、予定していた中耕・培土作業ができなかった。開花は平年並みの7月20日頃から始まったものの、上位から下位節の開花がばらついた。収穫期までの生育は、平年より草丈がやや短く、分枝の数が少ない傾向であった。なお、調査時の草丈は101cm、最下着莢高は10cmであり、機械作業ができる適正範囲内であった。

(2)病害虫雑草防除について
 虫害の発生については、ヨトウムシ類が散見され(平年並み)、病害の発生については、べと病の葉への発生が散見された(平年並み)。いずれも適期防除され子実への被害はなかった。雑草の発生程度は少から中で、えだまめの生育収量への影響は少なかった。

(3)収量・品質について
 収量は平年よりやや少なかった。生育期間の長雨、開花後期の大雨の影響で、生育量がやや小さかったことに加え、着莢数が少なかったこと、開花がばらついた影響により未熟莢(欠粒、薄莢)の割合が高く、商品率が低かったためと考えられた。

(4) コンバイン収穫について
 収穫速度が約0.28m/sで、1時間当たり4.8a、1日当たりでは26.7aの面積を収穫可能であり、慣行のハーベスタの約2倍の作業効率が見込まれた。
 今回の実証では圃場の奥に十分な枕地を設置していなかったため、コンバインでの収穫は一方向からのみのスイッチバック方式となったことから、機械に合わせた圃場づくり等の工夫が必要と考えられた。

●収穫時の生育
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 ※生育は、実証機械の適正範囲内

●作業速度と作業能率評価
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 収穫ロス率は、慣行区のハーベスタ収穫が15%だったのに対し、実証区のコンバイン収穫は19%と、やや高くなった。

●収穫ロスと推定収量
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※推定収量:手収穫で調査した商品収量(697㎏/10a)より推定


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収穫ロス(枝残り)の状況。実証区:コンバイン(左)と慣行区:ハーベスタ(右)

当該技術を導入した場合の経営的効果

 コンバインを導入する場合、現状と同規模(100a)では10aあたり所得が低下するものの、省力化した労力を規模拡大(200a)に充当することで、所得が向上すると試算された。

●経営試算(円/10a) r2sys_yamagata_h5.jpg

今後の課題と展望

 収穫コンテナ内への土の混入、脱莢ローターの詰まり、草姿の大きい晩生品種の適応性が課題として残された。
 当地域では、共同選果施設の整備により、えだまめの生産者、栽培面積が増加している。収穫機械の導入は、収穫効率が向上し、1戸あたりの栽培規模拡大が期待できる。今後、産地拡大を図るためには、品種の組合せによる長期安定出荷の体制確立が課題である。共同選果施設や機械を活用し、個々の栽培面積の拡大を促すとともに、品種の組合せによる収穫時期の分散を提案しながら支援していきたい。

(令和2年度 山形県置賜総合支庁産業経済部農業技術普及課、山形県農林水産部農業技術環境課)