提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
MENU
秋田県横手市ではミニカリフラワー栽培が急速に拡大している。なかでも、近年設立が多い集落営農組織の取り組みが多く、米・大豆以外の複合部門を強化するとともに、農閑期労働力の有効利用が図られている。一方、集落営農組織の栽培では、収穫、調整等を行う作業者数が多く、労賃がかかり増しする傾向にあり、課題となっている。
今後、個々の組織で栽培面積拡大を図り、更なる産地規模の拡大につなげるためには、作業の省力化とコスト削減技術が求められている。また、肥料高騰や環境調和型農業へのニーズの高まりを受け、より肥料効率の高い施肥体系の検討が求められている。
このことから、機械化体系の導入による省力・軽労化効果を明らかにし、同時に施肥体系の検討として化学肥料の低減による栽培実証を行い、肥効調節型肥料施用と減肥(窒素成分)による収量・品質への影響を検証する。
具体的には、
慣行区 (平うね、肥料条施)、
実証区1 (作うね、うね内全層施肥)、
実証区2 (作うね、うね内局所施肥 :うね中央部地表下15㎝に線状に施肥) で、施肥法の違いが生育に与える影響の検討を行った。
機械化体系により、慣行に比べ労働時間を10a当たり35時間短縮できただけでなく、移植や補植、土寄せ作業においても作業の軽労化を図ることができた。
組織で取り組むミニカリフラワーでは、基幹作業以外の補助作業や収穫・調整作業の労働時間が多いことが収益性向上の課題となっていた。このため補植、追肥等、作業の軽労化が図られることによる規模拡大の可能性を確認できた。
作業ごとの延べ作業時間
<施肥量>
●10a当たり窒素施肥量は、想定外の追肥を入れると慣行区に対し、
実証区1 :うね内全層施肥区で7%減(地域慣行に対し16%減)、
実証区2 :うね内局所施肥区で12%増(同1%増) となった。
実証区1では、ほ場慣行(及び地域慣行)に対して10a当たりの施肥量を低減しながら、同等以上の生育量及び収量を確保できることがわかった。
肥料の分布状況
左 :実証区1(うね内全層施肥区) / 右 :実証区2(うね内局所施肥区)
<生育>
●生育初期は、実証区(1、2区とも)が慣行区より良かったが、暗渠等の実施と作うねによる排水対策が湿害を軽減した効果が高いためと考えられる。
●実証区では、うね内全層施肥と局所施肥との違いにより、生育差が確認された。初期生育は、全層施肥区が局所施肥区を上回り、生育後半に局所施肥区が全層施肥区の生育量に近づいた。局所施肥区では、施肥位置が深かった(地下15㎝)ことが影響したものと考える。
<収量>
●実証区はいずれの区においても、調査株の全てで葉の巻きが十分あり、出荷可能な花蕾形成が見込まれることから、慣行区と同等の収量を得ることが可能と判断した。
●慣行区については、欠株率が高く、補植が多く、また、拾いどりしている現状から厳密な収量は確定出来なかったが、最終的な株立ち割合と栽植密度を勘案して実証区と同等とした。収穫株数は、慣行区2,851株/10a(株間25cm)、実証区2,726株/10a(株間27.6cm)。
<品質>
●慣行区と比べて実証区の品質は良かった。出荷率は慣行区90%、実証区95%と判定した。
●実証区2では、生育後半及び花芽分化期以降も肥効が続き、草勢が強く、実証区1に比べて花蕾の毛羽立ちが多くなった。茎の部分の空洞は、花蕾の大きさに比例して大きい傾向があり、区による相違はなかった。
右 :ミニカリフラワー花蕾の状況
≪まとめ≫
●肥効調節型肥料のうね内施肥、減肥により、慣行栽培と同等の生育量及び収量を確保することができる。品種特性の発現と高品質化のためには、生育初期に必要生育量を確保し、花蕾肥大期に必要以上に肥効を残さない施肥法が望ましい。
●今回の実証内容では、特にうね内局所施肥区について施肥位置が深く、施肥量も多かったことから、生育後半にかけて草勢が強くなった。このため、花蕾の毛羽立ちが若干多いなど、品質面で、うね内全層施肥区より若干悪い傾向であった。今後、うね内局所施肥の施肥位置(深さ)、施肥量を検討する必要がある。
●実証区では、うね内全層、局所施肥、いずれの区も減肥率を更に高めることが可能と予想される。今回の施肥量では、植えつけ株数が少なかった事もあり、一株当たり施肥量は十分であり、うね内施用で一株当たりどの程度まで成分量を低減出来るか、収量・品質への影響はどうかについては更に検討が必要である。
秋田県横手市