提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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全国農業システム化研究会|提案一覧


畜産

耕畜連携による自給飼料作物(コーンサイレージ)の有効利用と経済性、供給システム (岩手県・平成18~19年度)

背景と取組みのねらい

 岩手県岩泉町は林野が多いため、牛舎から遠方で標高差の大きい草地を開墾し、まとまった面積の飼料畑を確保する必要があった。また、大型肥育農家が共同で圃場の管理をしているが、オペレーターは2名と少人数のため、トウモロコシを収穫し、牛舎付近でサイロ詰めを行うには多くの人手と輸送時間を要することから、大規模での作付けには支障があった。

 一方、牧草収穫調製作業では、人手によるサイロ詰め作業が不要で、1~3名で行えるロールベーラ・ベールラッパ体系が普及している。この牧草調製作業と同様の方法で、ロールベールの調整が可能であり、収穫期間中のピストン輸送の手間がなく、品質も良好とのことから、トウモロコシ用の細断型ロールベーラによる収穫調製体系の実証を行った。

提案する作業体系(作業名と使用機械)

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作業別の能率と効果

1.耕起 能率と効果
 
丘曳きリバーシブルプラウ

刃が4連のため、一度の走行で広い面積を起こし、また、リバーシブルのため走行の向きを問わず耕起することができる。

●型式 :
丘曳きリバーシブルプラウCRNQY184VCS スガノ農機
●仕様 :
能率 1.05ha/hr
標準耕深 16~27cm

●使用トラクタ :
クボタM125DFQ2BMAL-HPC2 (セミクローラ 125ps) 


2.砕土・整地 能率と効果
 
バーチカルハロー
(パワーハロー)

砕土・整地作業において、高い能率を誇り、表層をやわらかく仕上げることができるので、トウモロコシの根張りを助けることが期待できる。

●型式 :
バーチカルハローDC230SP スガノ農機

●仕様 :
能率 0.70ha/hr
作業幅 230cm
ロータ回転数 300rpm

●使用トラクタ :
クボタMZ75QMAXTHPC2 (セミクローラ 75ps)  


3.施肥・播種 能率と効果
 
コーンプランタ(4条)

施肥同時播種機であることから、肥料散布と播種を一行程で行うことができる。また、種子の近くに溝を切って播種することから、従来の全層施肥と比較して、初期生育確保と雑草の抑制が期待できる。

●型式 :
ジェットシーダJS4106 タカキタ

●仕様 :
能率 0.67ha/hr
条間 63~80cm
株間 8~28cm

●使用トラクタ :
クボタMZ75QMAXTHPC2 (セミクローラ 75ps)  


 
4.刈取・梱包 能率と効果
 
コーンハーベスタ
+    
細断型ロールベーラ

従来のスタックサイロ体系の場合、刈取、梱包、密封作業は実作業人数5名が必要だが、当機器を使用したところ、1名での作業が可能であった。その結果、刈取・梱包・密封の一連の作業は、1ha当たりの作業時間が、慣行23時間に対して、16時間と省力化された。

●型式 :
細断型ロールベーラMR1000 タカキタ

●仕様 :
能率 0.20ha/hr
ベール寸法 φ100×85
ベール質量 415~500cm
ホッパー容量 3.0㎥

●使用トラクタ :
クボタMZ75QMAXTHPC2 (セミクローラ 75ps)  
 または
クボタM125DFQ2BMAL-HPC2 (セミクローラ 125ps) 


5.密封 能率と効果
 
自走式ラッパ

上に同じ

●型式 :
自走ラップSW1100W タカキタ

●仕様 :
能率 0.16ha/hr
適応ベール寸法 (φ80~110)×(85~100
フィルム幅 50cm×2条(ダブルストレッチ)


考察

●細断型ロールベーラ(ワンマン作業)体系は、収穫から梱包までの作業に1名、密封作業に1名の合計2名で、さらに少人数での実施が可能である。
●一方、スタックサイロ体系では、収穫作業に1名、鎮圧・均平・密封作業に4名の合計5名による組作業となる。
●細断型ロールベーラ(ワンマン作業)体系は、人員・労力両面を削減でき、また作業工程も簡略化される。
この結果、1.20ha/日の作業が可能であり、スタックサイロ体系より、述べ作業時間が58.4%短縮できた。
●トウモロコシサイレージの生産を10ha程度で行うと仮定した場合、細断型ロールベーラ体系は、スタックサイロ体系よりも10aあたり8,500円ほど(1kgあたり2円)生産費が高くなる結果となった。
●細断ベールは、変敗による廃棄量が少ないことや、給与の際サイロから取り出す手間も省け、日常作業の労力低減にもなるため、給与に係る導入の効果は更に大きいと思われる。

 以上より、細断型ロールベーラの利用については、トウモロコシサイレージの生産費が高くなるものの、作業の効率化が図られ、大面積の作付条件下においては、導入が期待できると考えられる。

対象場所

岩手県下閉伊郡岩泉町


 

 岩手県岩泉町は、面積が992.91k㎡と本州随一の広大な町であり、総面積の約93%を林野が占めている。
 基幹産業は農業であり、特に乳用牛、肉用牛といった畜産が盛んで、なかでも日本短角種の主産地として知られている。粗飼料利用性が高い日本短角種の特性を生かし、地域で自給可能な粗飼料を給与した、牛肉生産を行っている。

(平成18~19年度 岩手県宮古農業改良普及センター 岩泉普及サブセンター)

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