提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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●背景
実証地域の余目町農業協同組合管内では、水稲の収益性向上を目指し、低コスト技術の実証と導入に積極的に取り組んでいる。現在、湛水直播栽培面積は約80ha(主食用・飼料用合計)であり、鉄コーティング種子を用いた湛水直播栽培が主流となっている。しかし、当管内では特別栽培の面積比率が高く、共同乾燥調製貯蔵施設の利用率が高いため、慣行栽培で、しかも収穫時期の遅い直播栽培は、作付面積を拡大しにくい状況にある。そうした中で、直播栽培の省力・低コスト技術により、育苗管理、移植作業省略、作期分散による労力とコストの低減を図るとともに、特別栽培を組み合わせて、直播による特別栽培技術の安定性を実証し、地域に広く普及させるための優良事例とする。
●目標
鉄コーティング種子を用いた直播栽培、基肥一発肥料、播種同時除草剤散布による省力・低コスト化と、特別栽培による高品質・良食味米の安定生産を確立する。
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●成果
圃場の一部で苗立ちが不足したと推察され、さらに9月上旬の豪雨により圃場の3~4割程度で倒伏がみられ、実収は慣行区に及ばず、売上高は慣行区の93%となった。しかし、肥料・農薬はほぼ同額であるものの、減価償却費を含めた生産原価は低く抑えられた。特に育苗に係る施設・資材経費、減価償却費を削減でき、減収を上回る費用削減効果があり、1ha当たり7,700円の所得増を実証した。生産原価全体では実証区の方が約12,000円/10a低コストとなった。
10a当たり生産原価の比較
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実証区の作業時間は慣行区の59%となり、省力効果は十分に高い。特に大きな割合を占める育苗が省略でき、播種作業が一人でも可能になるなど、春先の省力効果が高い。水稲全面積を直播栽培とすることによる複合化や、移植栽培との組み合わせによる作期拡大などにつなげることで、農家の所得向上に有効であると考えられる。
作業時間の比較
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