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全国農業システム化研究会|提案一覧


稲作

バイオエタノール用水稲の低コスト・多収穫生産実証調査報告 (新潟県・平成19~21年度)

背景と取組みのねらい

 新潟県では、平成21年度から米を原料としたバイオエタノール製造プラントが稼働しており、原料米の生産・供給に取り組んでいる。また、原料米の価格が食用米に比べ格段に安いため、省力・低コスト・多収穫栽培技術を早期に確立することが求められている。

 新潟農業普及指導センターでは、新しい低コスト技術である「鉄コーティング直播栽培」と「密播疎植栽培」の2技術に、収量性が極めて高い飼料用水稲品種を組み合わせた超低価格米の生産実証に取り組んでいる。さらに、化石燃料を使わない低コスト乾燥技術として、「立毛乾燥」と「育苗ハウス内乾燥・貯蔵」の試験にも取り組んでいる。

実証した作業体系

 

作業別の能率と効果 (鉄コーティング直播)

1.種子の鉄コーティング 能率と効果
 
 
種子の鉄コーティング


コーティングマシンに種子を入れ、噴霧器で水を噴霧しながら、鉄粉と焼石膏の混合物を数回に分けてコーティングする。最後に仕上げ用の焼石膏でコーティング。
発熱するため、コーティング作業終了後は、速やかに薄く広げる。

作業時間は、10a当たり15分程度であった。 
育苗にかかる経費(育苗ハウス、土、肥料、農薬、被覆資材、労働時間など)と比べ、格段に低コストであった。 



2.施肥、耕耘、代かき 能率と効果

 
施肥、耕耘、代かき

 
施肥は背負式動力散粒機で行い、その後耕耘した。
耕耘後、水田に水を入れ、数日後、土に水を十分吸収させた後に代かきを行った。



3.播種 能率と効果

 
播種機

 
播種された鉄コーティング種子

 
播種作業は、1台で移植・直播をどちらも行うことのできる多目的管理機(播種条数は8条。条幅は30cm)を使用。種子は土の中に埋めず、地表面に落とす表面播で行った。

作業時間は10a当たり22分程度(苗運搬時間含まず)であった。移植栽培と比較し、苗の運搬や作業途中での苗継ぎが不要なので、作業効率は良かった。

●型式 : 
WELSTAR MAX NSU87



4.立毛乾燥
(直播・密播疎植共通)
能率と効果

 
 
立毛乾燥

 
成熟期を過ぎると、稲体の水分は下がっていくので、籾の水分をできるだけ下げるため、そのままほ場で栽培を続け、立毛状態で籾を乾燥させた。

収穫適期後、概ね1カ月で玄米の水分が15%程度まで下がった。雨が降ると水分は上がるが、3日程度雨が降らなければ降雨前の水分まで下がることが分かった。
化石燃料を使わず、低コストで乾燥できた。 

5.収穫
(直播・密播疎植共通)
能率と効果
 

コンバイン収穫


収穫作業は、普通の食用米と同様に行った。
食用米より収穫量が多いので、作業能力の高いコンバイン(今回は5条刈り)を使用した。コンバインのタンクが満タンになるたびに、メッシュのフレコンパックに排出し、運搬した。

作業時間は10a当たり22分程度と、収穫量が多い割に作業効率は良かった。 

●型式 :
DYNAMAX ER572

●仕様 : 
刈幅 1720~1770mm
適応作物範囲 550~1300mm
倒伏適応性
 追刈り 85mm以下
 向刈り 70mm以下
タンク容量 1950L (約39袋)

6.乾燥、貯蔵
(直播・移植共通)
能率と効果
 

ハウス内乾燥、貯蔵

 
メッシュのフレコンパックに入った籾を育苗ハウスに入れ、乾燥・貯蔵した。
気温が低い冬期間であったので、10月から4月まで、6カ月間、籾の貯蔵ができた。

通気性のあるメッシュのフレコンパックのため、外周部は乾燥したが、それ以外の内部(大部分)は、水分に変化はなかった。 

作業別の能率と効果 (密播疎植)

1.播種・育苗 能率と効果
 
通常の播種(左)
密播(右) 


通常播の稲(左)
密播の稲(右) 
(播種後2週間)


通常の2倍量の種子を育苗箱に播種する。
(北陸218号) 

このことで、10a当たりの育苗箱数を減らし、育苗にかかる経費を削減した。 

2.施肥、耕耘、代かき 能率と効果
 
施肥、耕耘、代かき


施肥は背負式動力散粒機で行い、その後耕耘した。
耕耘後、水田に水を入れ、数日後、土に水を十分吸収させた後に代かきを行った。



3.田植え、除草、病害虫防除 能率と効果
 
こまきちゃん(左)
箱まきちゃん(右)

 
田植機、同時施薬機

 
 
低コスト化のため、通常より広い間隔で苗を植えた(疎植)。密播育苗と併せ、10a当たりの使用箱数は、通常の半分以下(21.2箱→7.4箱)に削減することができた。

作業時間は、10a当たり23分程度であった。除草剤散布と殺虫殺菌剤散布を同時に行ったので、その分の労働時間が削減でき、効率的であった。また、薬剤の散布量も適正であった。

●型式 : 
WELSTAR MAX NSU87 (田植機) 
CS-20 (こまきちゃん)
HSY8 (箱まきちゃん)

●仕様 : 
WELSTAR MAX NSU87
植付条間 30
植付株間 14、16、18、21、24
 (30はオプション)
植付株数 80、70、60、50、45
 (37はオプション)

CS-20(こまきちゃん)
薬剤形状 粒状
散布幅 1.2~2.4m
ホッパ容量 5L

HSY8(箱まきちゃん)
ホッパ容量 3.5L×2


4.立毛乾燥
(直播・密播疎植共通)
能率と効果

 

立毛乾燥



成熟期を過ぎると、稲体の水分は下がっていくので、籾の水分をできるだけ下げるため、そのままほ場で栽培を続け、立毛状態で籾を乾燥させた。

収穫適期後、概ね1カ月で玄米の水分が15%程度まで下がった。雨が降ると水分は上がるが、3日程度雨が降らなければ降雨前の水分まで下がることが分かった。
化石燃料を使わず、低コストで乾燥できた。 

5.収穫
(直播・密播疎植共通)
能率と効果
 

コンバイン収穫

 
収穫作業は、普通の食用米と同様に行った。
食用米より収穫量が多いので、作業能力の高いコンバイン(今回は5条刈り)を使用した。コンバインのタンクが満タンになるたびに、メッシュのフレコンパックに排出し、運搬した。

作業時間は10a当たり22分程度と、収穫量が多い割に作業効率は良かった。 

●型式 :
DYNAMAX ER572

●仕様 : 
刈幅 1720~1770mm
適応作物範囲 550~1300mm
倒伏適応性
 追刈り 85mm以下
 向刈り 70mm以下
タンク容量 1950L (約39袋)

6.乾燥、貯蔵
(直播・密播疎植共通)
能率と効果

 

ハウス内乾燥、貯蔵

 
メッシュのフレコンパックに入った籾を育苗ハウスに入れ、乾燥・貯蔵した。
気温が低い冬期間であったので、10月から4月まで、6カ月間、籾の貯蔵ができた。

通気性のあるメッシュのフレコンパックのため外周部は乾燥したが、それ以外の内部(大部分)は、水分に変化はなかった。

成果

● 密播疎植(坪当たり40株前後)は、10a当たり粗玄米重が849kgあり、900kgが見込める結果を得た。コシヒカリの平均収量が概ね500kg/10aなので、その1.8倍の高収量であった。
● 直播栽培は倒れやすい栽培法のため、密播疎植栽培より肥料を控えたことから、10a当たり粗玄米重で700kgを超えられなかった。
● 平成20年度の1kg生産原価は、密播疎植栽培で83円、鉄コーティング直播栽培は113円であった。

sys_baioine_niigata_zu2.jpg

● 立毛乾燥試験では、収穫適期後、概ね1カ月で玄米の水分が15%程度まで下がった。雨が降ると水分は上がるが、3日程度雨が降らなければ降雨前の水分まで下がることが分かった。 
● 育苗ハウス内乾燥・貯蔵試験では、籾の乾燥が進まないことと、籾の水分が19%以下では腐敗しないが、25%の場合は腐敗することが分かった。また、籾の水分が19%以下で収穫した場合は、長期のハウス内貯蔵が可能であることが分かった。

対象場所

新潟市北区浦木


 

 
 新潟市は、新潟県の中心からやや北寄りに位置し、水田面積が24,100haと、全国の市町村中第1位である。市の中央部を信濃川が流れ、用水が豊富なことから水田地帯が多いものの、海岸線が長く砂丘畑も多いので、園芸も盛んである。都市部を離れると広大な田園地帯が広がり、田園型政令指定都市として農業振興を進めている。

 環境に配慮した取組が盛んなため、エコファーマーが多く(3,067人、H21.6.30現在)、特別栽培農産物等の栽培面積(7,424ha、H20年産)も多い。

(平成19、20、21年度 新潟県新潟農業普及指導センター)

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