提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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農業用ドローンの利用は、農薬散布を中心に拡大してきており、実装化が急速に進みつつある。
利用に際しては、「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」(2019年7月30日制定、2020年5月18日改正)に空中散布の方法(飛行高度、飛行速度等)が定められているものの、実際の営農現場において、その散布性能や防除効果等を検証した客観的な評価実績は少ない。
そこで、今回市販機種を対象として営農現場での散布性能、防除効果等の検証や調査研究を実施した。
●主要諸元
○供試機:T20K
散布幅6m、最大散布速度22.5km/h、タンク積載水量12L、ノズルTX-VK08
○対照機:MG-1SAK
散布幅4m、最大散布速度22km/h、タンク積載水量10L、ノズルXR11001VS
供試した農業用ドローン(左:T20K 右:MG-1SAK)
1.試験内容
(1)作業能率(散布水量0.8L/10a、1.6L/10a)
(2)散布精度
(3)ダウンウォッシュ測定技術の検討(予備)
2.試験時期
(1)作業能率: 令和2年8月19日
(2)散布精度: 令和2年8月20日
(3)ダウンウォッシュ測定技術の検討: 令和2年8月20日~26日
3.試験区の構成
●作業能率
●散布精度
1.作業能率
散布作業は、農業用ドローンは操縦者1人、ナビゲータ-1人の計2人で行った。
散布面積は、T20K(0.8L/10a)及びMG-1SAK(0.8L/10a)は4ha(2ha×2筆)、T20K(1.6L/10a)及びMG-1SAK(1.6L/10a)は2ha(2ha×1筆)とした。また、ドローンの飛行方法は自動飛行モードで、高度2mで行った。
2.散布精度
感水紙は薬剤散布後、速やかに回収、乾燥し、スキャナーで画像を取り込んだ。
その後、取り込んだ画像について感水紙被覆面積率算出ソフトウェア(窪田ら、2010:農業・食品産業技術総合研究機構)を用い、被覆率を算出した。また、風向・風速は超音波風向風速計ウィンドソニックで測定した。
図1 感水紙の設置方法
感水紙は薬剤散布後、速やかに回収、乾燥し、スキャナーで画像を取り込んだ。その後、取り込んだ画像について感水紙被覆面積率算出ソフトウェア(窪田ら、2010:農業・食品産業技術総合研究機構)を用い、被覆率を算出した。また、風向・風速は超音波風向風速計ウィンドソニックで測定した。
3.ダウンウォッシュ測定技術の検討(予備)
農業用ドローンで薬剤散布を行うにあたって、重要となってくるのがダウンウォッシュである。
今回の散布精度試験でも、ダウンウォッシュの強さにより被覆率に差が出ていると推測していたが、実際にダウンウォッシュが強いかどうかの試験をしたわけではない。
そこでダウンウォッシュを数値化する装置の製作を試みた(図2、3)。
装置にはS字タイプ汎用型ロードセルLC1205(定格容量200N)、データロガーDC3100を使用した。
ダウンウォッシュの数値化は可能であったが、より詳細な数値化を計測するため、今後さらに装置の改良を進めていく。
図2 測定装置の設置状況(左) / 図3 測定装置の構造(右)
試験時の天気は晴れ、温度はT20K区が34.5℃、MG-1SAK区が35.6℃。
湿度はT20K区が52%、MG-1SAK 区が47%、風速、風向は両区とも約2m/s、飛行方向右からの風であった(図4、5)。
図4 散布精度試験時の風速 T20K(左)とMG-1SAK(右)
図5 散布精度試験時の風向 T20K(左)とMG-1SAK(右)
1.作業能率試験の結果
T20K(0.8L/10a)の1haあたりの作業時間は、散布作業時間が4.8分でMG-1SAK(0.8L/10a)の8.0分に比べて少なかった。
T20KはMG-1SAKに比べて、散布幅が2m広く、最大作業速度が速いことが散布作業時間の差になっている。また、薬液調合時間がT20K(0.8L/10a)は0.7分でMG-1SAK(0.8L/10a)の1.3分に比べて少なかった。T20KはMG-1SAKに比べて、タンクの積載水量が多く、交換回数が少なくてすむことが薬液調合時間の差になっている(表1)。
表1 作業能率試験の結果
2.散布精度試験の結果
感水紙被覆率は両区とも0m地点で最大となり、T20Kが1.9%でMG-1SAKの1.7%に比べ高い傾向にあった。
また、MG-1SAKの散布幅の両端にあたる±2m地点のそれぞれの被覆率も、T20KがMG-1SAKに比べて高く、これらのことからT20KはMG-1SAKに比べて、ダウンウォッシュ(吹き降ろしの風)が強いことが示唆された。
図6 散布精度試験における感水紙被覆率の比較
図7 設置位置0mの被覆状態の一例(左:T20K 右:MG1-SAK)
3.今後の課題・展望
(1)小規模面積かつ複数点在するほ場の作業能率比較
(2)多様な気象・飛行条件下での散布精度
(3)ダウンウォッシュ測定技術の確立
(令和2年度 鹿児島県農業開発総合センター大隅支場農機研究室)