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畦立同時施肥・施薬技術に関する実証調査(畦立マルチャの違いが粒状資材の畦内混和に及ぼす影響調査) (鹿児島県・平成23~24年度)

背景と取組みのねらい

 サツマイモの施肥・施薬・土壌消毒・畦立・マルチ作業を同時に行う畦立マルチャは、大別すると駆動軸が機体中心部にあるセンタードライブタイプと、駆動軸が機体側面にあるサイドドライブタイプの2機種があり、鹿児島県内では、前者が多く普及している。
 一方、畦立マルチャは畦立時の土盛りを効率的に行うことを最優先して設計され、農薬等粒状資材を畦内に均一に混和することを主目的としていないことから畦内施薬において防除効果が不安定な事例も散見されている。
 そこで、畦立マルチャの種類と粒状資材の土壌混和の関係について検証し、より農薬・肥料の施用効果が高い畦立同時施用技術を確立する。

これまで得られた成果の概要 

(1)トラクタフロント施肥機等で事前に散布された農薬等粒状資材を畦立マルチャで均一に混和するには、畦全体を耕うんするサイドドライブタイプの畦立マルチャが適していた。

(2)畦立と同時に施肥機で畦立マルチャ前方に粒状資材を散布した場合の畦内混和についても、サイドドライブタイプが均一に混和されていることが確認された。

本年度のねらいどころ

 おもにセンタードライブタイプの畦立マルチャについて、均一的に混和するための耕うん爪配列、散布方法等の検討

試験内容

【試験1】
 畦立マルチャの違いが事前に土壌表面に散布された資材の畦内混和に与える影響について(粒状の農薬・肥料の事前散布及びトラクタ前方での畦立同時施肥・施薬を想定)

【試験2】
 畦立マルチャの違いが資材の畦立同時機械散布の畦内混和に与える影響について(トラクタ後方での畦立同時施肥・施薬を想定)

試験方法

「供試した畦立マルチャと爪の配列」
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図1 センタードライブタイプ1畦用畦立マルチャ(RT-11)の爪配列
(☽はプラウ爪、Lはナタ爪   上図 :RT-11、下図 :RT-11改良型)
注) 改良型は既存RT-11のロータ軸の最内側とチェーンケースとの間に加工したナタ爪を4本追加


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図2 サイドドライブタイプ1畦用畦立マルチャ(RAY907M)の爪配列
(☽はプラウ爪、Lはナタ爪)


試験方法-試験1

【試験1 (事前に土壌表面に散布された資材の畦内混和)】 
 4色の被覆肥料を供試し、図3のとおり畦中心部10cm幅に茶色被覆肥料、中心部10cmを除く畦裾幅右に黄色被覆肥料、左に白色被覆肥料、畦裾から左右の有効作業幅に赤色被覆肥料を散布した。それぞれの散布量は7kg/㎡に設定した。
 畦立後の分布調査は畦内の垂直断面に円筒形の採土管(内径5.0cm、高さ5.1cm、100ml)を水平方向に挿入後、採土し、土壌内の肥料を計数した(図4)

【試験区の構成】
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【調査方法】
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図3 試験1 事前の被覆尿素散布方法

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図4 畦立後の畦内分布サンプリング位置

試験方法-試験2

【試験2 (畦立同時機械散布の資材の畦内混和)】 
 作業機搭載型施肥機を利用し、畦中央(散布口数1口)または全面(散布口数2口)に被覆肥料を散布しながら畦立作業を行った(図5)

 畦立後の分布調査は畦内の垂直断面に円筒形の採土管(内径5.0cm、高さ5.1cm、100ml)を水平方向に挿入後、採土し、土壌内の肥料を計数した(試験1に同じ)。

 また、畦内から逸脱した肥料について、左右畦溝の畦裾から長さ30cm×幅25cm×深さ5cmで採土し、この土壌内の肥料を計数した(図6)

【試験区の構成】
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【調査方法】
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図5 畦立同時機械散布

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図6 畦立後の畦溝のサンプリング位置(点線部分)

結果と考察

【試験1 (事前に土壌表面に散布された資材の畦内混和)】 
 茶色、黄色、白色を合計した畦裾幅(機械散布の想定散布幅)でみた場合、センター区ではチェーンケースが位置する畦中心部への分布は少なく畦頂部へ偏る傾向であった。これに対し、センター改良区は畦中心部への分布がみられ、一定の改善が図られた(図8)。 

 また、すべての肥料を合計した有効作業幅(フロント施肥を想定)での散布では、いずれの区とも畦裾幅に散布した場合の分布に比べ、より均一に混和されていた(図8、図9)

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図8 畦裾幅散布時の分布状況
(茶色、黄色、白色合計、散布位置:3~7)


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図9 全面散布時の分布状況
(茶色、黄色、白色、赤色合計、散布位置:1~9)


【試験2 (畦立同時機械散布の資材の畦内混和)】 
1 センター改良作条区はセンター作条区と比べると畦頂部への偏りが改善されたものの、中心部の均一性は不完全であった(図10)

2 作条及び全面散布した区では作条散布に比べ散布幅の広い全面散布区の混和がより均一な傾向にあった(図10)

3 畦から逸脱した肥料は畦立マルチャの種類でみると総じてセンタードライブ区が多かった。また、センタードライブ区の中でもセンター改良作条区が最も逸脱した肥料が多かった(表1)。これは、散布した肥料を今回追加したロータ軸中央の爪で拡散させたためと考えられ、畦溝表面でも多くの肥料が散見された。

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図10 機械散布による畦立同時散布時の分布状況

表1 畦外(畦溝)の資材逸脱状況(粒)
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【まとめ】
 主にセンタードライブタイプの畦立マルチャについて、粒状資材を均一的に混和するための耕うん爪配列、散布方法等を中心に検討した。
 センタードライブ方式の畦立マルチャのロータ軸最内側に爪を追加することで粒状資材混和の均一性は向上したが、畦立同時散布では畦溝への粒状資材逸脱が確認されたことから散布した資材を確実に畦内に混和させ均一化する畦立同時散布技術の検討が必要である。

(平成23~24年度 鹿児島県農業開発総合センター 大隅支場 農機研究室)