提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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取り組みレポート



再生田で獲れた米を小中学校の学校給食に!(長野県軽井沢町)

2014年11月06日

 長野県の軽井沢といえば、高原の避暑地が思い浮かぶ。農業は高原野菜が中心であるが、軽井沢町発地地区には、昭和40年代に基盤整備されたものの、作付け開始3年後に減反により放棄地となった水田跡が、20haもの規模で広がっている。


 JA佐久浅間のグループ企業である(株)グリーンフィールドは、高齢化のため作付けができない町内の農地を引き受け、平成23年からキャベツ、レタス、ハクサイ等の栽培を行い、地域活性化対策に取り組んでいる。


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左 :クボタeプロジェクトの看板
右 :隣接放棄地は葦が茂り秋風にたなびいていた


 今回、水田跡20haのうち3.5haを再生することになったが、畑地化がむつかしい3haは、復田して町内の学校給食1年分(1中学校、3小学校の生徒児童約1500名)の米(目標17t)を作ることになった。

 該当する田んぼは30年以上耕作されず、用水路は老朽化して、水が常に流れ込む排水不良田であり、葦が生い茂り、一部には柳が自生するような状態だった。そこを農地として再生することで、耕作放棄地の解消と地域活性化に取り組みたいと、再生作業(草刈、あぜ塗り)、稲作(代掻き、田植え、収穫)小麦作(耕うん同時播種)について、クボタeプロジェクトの支援を受けることとなった(※1)


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左 :草刈り / 右 :あぜ塗り


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左 :代掻き / 右 :軽井沢中学校2学年生徒による田植え


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お米の一生を学ぶ。軽井沢町内では田んぼは珍しく、中学生は田植機による田植えに見入った


 5月に田植えした品種は、長野県育成品種の「ゆめしなの」。北海道育成の品種「空育(くういく)143号」とコシヒカリを掛け合わせた、高冷地用の品種だ。好天に恵まれて、10月下旬に始まった刈り取りでは、乾燥機の問題(※2)はあるものの、目標収量17tを上回る見込みという。


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左 :収穫作業(乾燥施設の受け入れ状況を把握しながら)
右 :収穫を待つ稲はすでに霜に当たり変色していた


 自ら収穫機を運転し収穫作業をおこなった(株)グリーンフィールドの髙栁社長は、「予想を上回り、10aあたり700kgは獲れそうだ。上出来で、むしろ獲れすぎ」と話した。6条刈120馬力の収穫機(KSAS対応機)は、稲が詰まらないように速度を落として作業をおこなうほどの豊作だった。


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左 :収穫作業をおこなう(株)グリーンフィールドの髙栁社長
右 :6条刈120馬力の収穫機


 軽井沢町役場の青木さんは、「昨年(25年)は1ha分の米を収穫して、26年1~3月の学校給食に使われた。今年は1年分の供給をめざして、面積を広げて取り組んでいただいた。(株)クボタさんとJA佐久浅間、佐久農業改良普及センターの協力があってこそ実現した地産地消で、町としてもできることをしたいと水路の補修を行っているところだ。食育の観点からも、今後も継続して学校給食に地元産の米を提供していきたいと考えている」と説明した。


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左 :籾の搬出
右 :補修が完了した水路


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左 :軽井沢中学校2学年生徒による稲刈り
右 :収穫された米は天日干しで脱穀を待っていた


 (株)グリーンフィールドは、排水対策に課題はあるものの、県産小麦「ゆめかおり」の再生農地への作付けも始めている。小麦とキャベツの輪作や、町内他地区での農地再生の取り組みにも広げていければと構想し、実現をめざしている。(みんなの農業広場事務局)


※1 20haの放棄地のうちほかの50aでは、2年前にクボタeプロジェクトの支援により、同じ(株)グリーンフィールドが再生農地でキャベツ栽培に取り組んだ。

※2 軽井沢町には乾燥施設がなく、佐久穂町まで運んで乾燥機を借りている。そのため受入能力にあわせて刈り取りを行う。