提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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取り組みレポート



トキが舞う、全長1000mの谷津田再生を支援(茨城県牛久市)

2013年06月11日

 茨城県牛久市の霞ヶ浦周辺では、平成15年からNEC(日本電気(株))とNPO法人アサザ基金が「田んぼづくりプロジェクト」(※1)を共同で実施。耕作放棄地を再生しながら、酒米作りが進められている。今回、クボタeプロジェクトの支援を受けて、牛久市上太田地区の谷津田の再生に取り組んだ。


 対象地は、10~35年程度耕作放棄された谷津田約20a。湧水が豊富なため、アシなどの雑草が繁茂し、大きく育った雑木や倒木などが見られた。


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左 :再生前。 湧水によりヨシ原となっており、大きく生長した雑木も見られる典型的な谷津田
右 :排水路がなく、湧水が伏流水となって田んぼの真ん中から流出しているところも


 平成24年12月、事前調査で現況を確認した。排水不良による軟弱地盤の土地で、ヨシ原が広がり、雑木も散見された。排水路がなく、湧水が一面あふれ出ているところもあり、排水路の掘削、圃場の草刈り、耕耘などの作業が必要とされた。


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左 :事前調査。24年12月、クボタ、NEC、NPO法人アサザ基金立会いで、事前調査と打ち合わせを実施
右 :手作業で放棄地を再生し、作付け収穫された稲がハサがけ乾燥されていた(谷津田の入り口)


 作業第1日目(25年1月17日)、雪の残る谷津田で作業がはじまった。
 トラクタを入れるため、道路側に排水路を掘って伏流水を抜いた後、小型トラクタで草刈りをした。
 雑木はトラクタで牽引して伐採、除去。障害物を取り除き、一部でロータリによる耕耘を始めた。


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左 :排水条件を改善するため、道路側に排水路を掘削
右 :小型トラクタ装着の草刈機で、慎重に作業をおこなう


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左 :沈下した小型トラクタを他のトラクタで牽引して脱出をはかる
右 :畦畔に生えた雑木が大木となり、稲作に支障があるため切り倒す


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左 :雑木にチェーンソーで切れ目を入れ、トラクタで引き倒す 
右 :草刈作業が終わったところから、ロータリ耕耘作業


 2日目(1月18日)は早朝から作業を開始した。
 土が凍っていてトラクタが沈下しない間に、伏流水路を埋め戻し、全体をロータリで耕耘。2日かけて水田が甦った。


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左 :ロータリを逆回転させて伏流水流出路を埋め戻す
右 :割合地盤の良いところは、快調にロータリ耕耘が進展


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左 :大木の根元や軟弱地盤の部分は残しつつ、再生作業が終了。谷津田の水田が蘇る
右 :NEC職員やアサザ基金も共同作業に参加し、水田再生の喜びを分かち合う


 再生した谷津田では、平成25年度、無農薬栽培で環境保全・生物多様性に配慮した稲作(酒米栽培)が行われることになっている(平成25年3月現在)。(みんなの農業広場事務局)


※1「田んぼづくりプロジェクト」 
谷津田の水田を再生し、自然体験参加プログラム、生態系・生物多様性保全、霞ヶ浦の水源地の保全を目的とし、「100年後は野生のトキの復帰」を夢見て活動している。参加するのは、NECやNPO法人職員、地域住民等。