べにばな栽培
2008年10月07日
べにばなの特徴
「はじめに」
「まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花」。
この句は、芭蕉が奥の細道の旅で山寺に向かう途中に詠んだものです。
べにばなで有名な山形県では、安土桃山時代に、すでにべにばな栽培が始まったとされており、芭蕉が訪れた頃には、紅花なくして山形が語れないほど栽培が盛んでした。
「由来と特徴」
●べにばなは、きく科の植物です。
●自生地は、中央アジア山岳地帯、エジプトナイル川中流地帯、エチオピア、地中海沿岸など、年間降水量の少ない乾燥地帯(砂漠、未耕地)です。
●栽培に適する条件は、雨が少なく、生育適温は10~25℃で、生育が進むほど高温、多日照条件になる環境が望ましいです。
●耕土が深く、排水の良い、中性ないし弱アルカリ性の肥沃な土壌が適します。
●相対的短日植物で、開花は高温長日で促進し、低温短日では抑制されます。
●花芽分化には、13.5時間以上の日長が必要で、温度よりも日長が大きく影響します。
●花芽の発達、開花は、日長よりも温度に影響されるので、高温で促進されます。
「用途」
●観ても美しいですが、べにばな染めや、加工品も多く作られています。
●そのひとつ「紅(べに)もち」は、昔ながらの技法で摘んだ花を発酵させて、もち状に形を整えたものです。比較的新しい手法で作る「すり花(ばな)」とともに、染料として用いられています。
●「乱(らん)花(か)」は、摘み取った花をそのまま乾燥させたもので、主に食品加工に用いられています。
写真 :紅(べに)もち (提供 :山形大学附属図書館 紅花の歴史文化館)
栽培
「品種」
●葉緑に鋭い刺のある剣葉種と、刺のない丸葉種があります。
べにばな品種と特性
「圃場の準備」
●土質をあまり選びませんが、土壌の過湿に弱いので、排水対策を徹底します。
●酸性土壌を嫌うので、pH6.5程度に矯正します。
●施肥量は、10aあたり成分量で窒素、リン酸、カリとも10~15kg程度を基本とします。
「播種」
●直根性で移植には適さないため、直まき栽培とします。
●播種期が早いほど生育が旺盛で、分枝が多く、草姿が大きくなります。
●播種適期は3月下旬から4月下旬の、比較的短い期間です。
●融雪後、土壌水分が十分にあるうちに、圃場を耕耘、播種し、発芽を揃えるのがポイントです。
「間引き・土寄せ」
●本葉2~3枚頃に、生育の不良なものを間引きます。
●本葉5~6枚頃に一本立ちにして、株間12~15cmにします。
●土寄せは、倒伏防止のため草丈20cm時におこないます。
●土寄せ終了後、1~2m間隔で支柱を立て、地上15cmにフラワーネットを張り、生育に合わせて上げます。
写真 :支柱立て
「かん水」
●播種後、本葉2枚頃までの生育初期は、やや多めにかん水し、床面を乾燥させないようにします。
●その後は少なめに管理し、生育後半は、かん水量を控えます。
「病虫害予防」
●病害は、炭そ病の被害が最も大きく、降雨や高温多湿で多く発生がみられます。
●特に、発芽から分枝がスプレイ状に伸長するまでの、茎葉が柔らかく旺盛に生育する期間に発生します。
●種子消毒を徹底します。
●適期播種を心がけるとともに、窒素肥料の多用を避けます。
●薬剤散布とあわせて、被害茎葉を圃場から取り除いて適切に処分するなどの、耕種的防除も行います。
●害虫では、生育初期から収穫期まで、ハモグリバエ類に注意します。
●多発すると、切り花として出荷する場合、商品価値を損なう恐れがあるので、適期に薬剤散布を行います。
「収穫・出荷」
●加工品にする場合は、7~8分咲きの頃に収穫します。
●べにばなには刺があるので、「すり花」や「紅もち」等にする場合は、早朝の朝露が残る頃に収穫し、「乱花」(乾燥花弁)にする場合は、晴れた日の日中に作業手袋などをして収穫します。
●切り花で出荷する場合は、3~4輪開花した頃、地際から切り取り調製し、10本1束にして水上げ後に出荷します。
●分枝が伸び過ぎたものは、頂花を摘花し、草姿を整えます。
髙橋 享
山形県農林水産部生産技術課
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