提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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再生農地での作物のつくり方



陸稲栽培

2008年10月07日

(2014年4月 一部改訂) 

陸稲の特徴

「特徴」
●陸稲は、植物分類上では水稲と同じで、水に対する適応性から、水稲との分化が進んだと考えられています。
●長年にわたって畑栽培されてきたことで、耐干性、いもち病抵抗性、直播適応性など、水稲にはない栽培上の優れた形質を持っています。
●これらの形質は、水稲品種の育成にも役立てられ、在来品種の「戦捷」は、いもち病圃場抵抗性育種に貢献しました。

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収穫前の陸稲圃場

「栽培の歴史と現状」 
●過去には、陸稲は、東北以南の全国各地で栽培されていました。
●近年のコメ余りなどにより、1960年に186,000haあった栽培面積は、現在では1,720haと激減しています(平成25年産作物統計)。
●栽培地域は、関東東山地域の都県の一部に限られています。
●畑作物としての陸稲は、野菜等の連作障害を防止する効果が大きく、稲わらは有機物源として利用できます。
●水稲とほぼ共通の機械が利用できるので、省力生産が可能です。
●陸稲を上手に活用し、野菜などの連作障害軽減や遊休農地解消などに役立てましょう。

「利用法」
●現在栽培されている陸稲のほとんどは糯(もち)品種であり、その収穫物は、あられ、おかきなど、米菓の原料として利用されています。

種子の入手方法

●一部の県では、陸稲品種を県の奨励品種に採用していて、種子の入手が可能です。
●お近くの農業改良普及センター、またはJAにお問い合わせください。採用していない都道府県であっても、同様にお問い合わせください。
●茨城県の陸稲奨励品種は、極早生の「トヨハタモチ」、早生の「ひたちはたもち」、中晩生の「ゆめのはたもち」が栽培されていますが、中でも「トヨハタモチ」は全国的にも広く栽培されています。

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陸稲の株標本 (左から「ひたちはたもち」、「キヨハタモチ」、「トヨハタモチ」)

栽培

「種子の準備と種子消毒」
●種子はできるだけ毎年更新し、健全なものを準備しましょう。
●優良な種子を得る場合には、比重1.06で塩水選を行います。
●罹病種子を使うと、生育初期に陸稲株枯病(ばか苗病)が発生し、立ち枯れが発生します。
●この病害は種子伝染するので、薬剤による種子消毒を行います。

「土づくり」 
●土壌理化学性の改善のため、堆肥を投入します。
●陸稲栽培においては鉄、マンガン欠乏が発生しやすいため、堆肥は微量要素の供給源としても有効です。
●陸稲の最適pHは5.0程度で、やや酸性の土壌を好みます。
●リン酸は生育初期に効果が高いので、土壌改良材を可吸態リン酸で乾土100gあたり10mgになるように施用します。

「施肥」
●腐植質黒ボク土の場合、10aあたり窒素:リン酸:カリ =5:10:10(kg)を基肥として施用します。
●淡色黒ボク土、沖積土では、窒素量をそれぞれ4kg、3kgと減らします。
●窒素の多用は、過繁茂による干害の助長や、倒伏を引き起こすことがあるので控えます。

「播種」
●出穂までの生育量を確保するには、早播きが適します。
●苗立ちを確保するために、1日の平均気温が12℃を超える時期に播種します。
●播種は、播幅10cm、畦間45~60cmの条播で、播種量は10aあたり2~4kgとします。
●播種深さは2~3cmとし、播種後鎮圧をすると、出芽揃いが良くなります。

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手押し式播種機を用いた播種

「雑草防除」
●陸稲栽培で最も労力がかかるのが、除草作業です。
●陸稲の初期生育は遅く、雑草が生えやすいため、適期防除を心がけます。
●省力的に雑草防除をするには、播種後土壌処理剤を使用するとよいでしょう。
●使用前に、必ず陸稲に農薬登録があるかどうかを確認しましょう。
●生育期間中に発生した雑草は、中耕や手取り除草をします。

「中耕培土」
●中耕は、雑草の発生を抑えるだけでなく、土壌の通気性、透水性を良くし、陸稲の根の生長を促進します。
●断根による生育障害の発生が少ない幼穂形成期(出穂前約25日)の前までに、1~2回行います。
●生育中期の中耕を兼ねた培土は、過剰分げつの抑制、倒伏防止に効果があります。梅雨明けまでに行います。

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乗用管理機を用いた中耕培土

「追肥」
●追肥は、5~6葉期に10aあたり窒素成分で3kgを施用します。
●以降の追肥は、干ばつ害を助長しやすいので避けます。

「病虫害防除」
●播種時のコガネムシ類幼虫、ケラ類、ネアブラムシの薬剤防除は、使用基準に準じて全面土壌混和、または作条土壌混和します。
●その他、水稲と共通の病虫害が発生するため、適期に防除しましょう。
●水稲用の薬剤で、陸稲にも使用できる薬剤が多く販売されています。
●使用前に、陸稲にも農薬登録があり、使用できる薬剤かどうかを必ず確認しましょう。

「収穫・調製」
●収穫適期は、稔実粒の9割くらいが黄化し、穂の基部に少し青みを残す頃です。

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●水稲に比べて穂揃いが悪いので、判断には注意が必要です。
●刈遅れは胴割れ米、茶米や穂発芽粒の発生が多くなり、品質が低下します。
●収穫・調製は、水稲に準じて行います。

「梅雨明け後の灌水と追肥」 
●陸稲は、畑作物の中では耐干性の弱い作物です。
●畑灌漑設備のある圃場では、梅雨明けから出穂後25日頃まで灌水を行います。
●灌水の目安は、晴天が続き、軽い葉巻症状を認めた時で、5~7日おきに40mmの灌水を行います。
●灌水をすると肥料分の流亡がおこるので、10aあたり窒素成分で5kgの追肥が必要です。
●5~6葉期に加え(「追肥」の項参照)、幼穂形成期にも同量施用します。

※農薬の使用に関しては、もよりの農業改良普及センターや農協などにお問い合わせください

執筆者 
宮本 勝
茨城県農業総合センター 農業研究所 作物研究室

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