10年以上の耕作放棄地を新規就農者向けのハウス団地へ(福井県あわら市)
2016年12月07日
福井県最北端に位置し、あわら市と坂井市で構成される坂井地区は、九頭竜川を水源とした「水田地域」、あわら市・坂井市三国町の畑作地帯の「坂井北部丘陵地域」、坂井市三国町の「三里浜砂丘地域」、あわら市・坂井市丸岡町の「中山間地域」に分類され、それぞれの特徴を活かして農林業が営まれている。
そのうちの坂井北部丘陵地域は、昭和44年から62年にかけて国営の農業開発事業によって約1,000haの畑が造成された。畑には、春夏作でスイカ、カボチャ、カンショ、秋冬作でダイコン、ニンジン、ナシ、柿等の露地品目が作付けされ、メロンや軟弱野菜等の施設品目とあわせて、福井県の園芸生産の中心地域となっている。
しかし、平成15年頃から高齢化が進行し、耕作放棄地が増加していった。
耕作放棄地対策のため、坂井北部丘陵地営農推進協議会は平成23年に「丘陵地農業支援センター」を設置し、県も平成26年に「ふくい園芸カレッジ」を開講。県外からの担い手確保に努めている。
今回のクボタeプロジェクトへの依頼は、県と協議会、さらに市やJAも加わり、福井県が一団となっての取り組みとなる。
対象の耕作放棄地は約2.5ha。昭和57年から平成10年頃まではこの辺りもハウス団地であったが、担い手不足によりハウスを手放す人が増え、今ではセイタカアワダチソウや圃場周辺を取り囲む木々、10年以上も放置され、地にしっかり張り付いてしまったクズが背丈まで繁茂していた。
10月11日から作業が開始され、草刈機やバックホー、木々はチェンソーを用いての除去作業となった。面積が広いうえ、長らく放置されたクズは根が太く、作業は難航した。
また、圃場を二分するように設けられている排水路付近は、機械での作業が行えないため、人の手によって掘り起こされた。
約150mある排水路は機械で作業を行うと壊してしまう恐れがあるため、人力で行われた。圃場周辺だけでなく、圃場内にも大きな木が生えていた
2週間をかけ、圃場内の雑草や樹木が除去され、同月の25日、大きいプラウを用いて、表土を掘り起こし、レベラーと手作業にて、クズの根を取り除いていった。
左上 :2週間かけてここまできれいになった。しかし、まだ根が深くまで伸びているクズがあちこちに見られる
右下 :プラウで表土をクズ根ごと掘り起こす
左上 :長くて太いクズ根もプラウで掘り起こすことによって拾い上げが可能となった
右下 :レベラーで表層のクズ根を集める
ふくい園芸カレッジの生徒と県職員、(株)北陸近畿クボタおよびクボタアグリサービス(株)の47名で最後のクズ根拾い作業が行われた
1カ月にわたる作業は延べ158名が参加し、あたり一面、伸び放題であった雑草や樹木はすべて除去され、再び農業が行える圃場へと生まれ変わった。(株)北陸近畿クボタとともに作業に当たったクボタアグリサービス(株)金沢事務所の社員は「約1カ月に渡り、取り組んでいたクボタeプロジェクトが終了し、一度耕作放棄地となってしまった土地の惨状とその再生にかかる労力を身をもって感じた。耕作放棄地を増加させないためにも、私達が機械を普及させ、お客様の作業負担・コストの軽減に貢献し、既存のお客様に離農させず、新規就農者を増やす必要性を改めて認識した」とのことであった。
左上 :クボタeプロジェクトの作業者で記念撮影
右下 :作業前からは見違えるほどキレイになった
再生された圃場は平成30年までに、ふくい園芸カレッジを卒業した新規就農者向けのハウス団地となる。JA花咲ふくいの協力により、リースハウスが建てられ、スイカやメロン、トマトなどが栽培される予定だ。(みんなの農業広場事務局)