ミカン園跡の傾斜地に作られたクラインガルテンで、都市・農村の交流を!(熊本県天草市)
2009年03月17日
20年にわたって放置されたミカン園が、金焼湾(漁港)を見下ろす熊本県天草市下浦町金焼地区の小山にある。この土地を天草市役所から借り受けた、NPO法人グリーンライフあまくさが、4月のクラインガルテン ※1) (ダーチャ金焼)開設に向けて準備を進めており、斜面を利用して菜園を整備中だ。
左 :港から現地を望む。斜面に見える建物の上が菜園 / 右 :完成間近のダーチャを見学
この耕作放棄地再生支援をおこなっているのが、(株)クボタのクボタeプロジェクトである。
2008年11月5日、NPO、市役所、eプロジェクト関係者が現況を確認した。放置されている間に、すっかり山にもどってしまったため、重機を使って立木等を撤去して、道(トラクタ進入路)を作る必要があった。
作業の完了を待って、12月23日に、第1回耕作放棄地再生支援作業が行われた。急斜面のため、作業は慎重を極めた。トラクタにプラウをつけ、根気よく木の根の掘り起こしと深耕、天地返しを行った結果、ようやく斜面に段々畑が現れた。
第2回耕作放棄地再生支援は3月8日、グリーンライフあまくさの第10回体験ツアーに合わせておこなわれた。グリーンライフあまくさの会員で、クラインガルテン利用を希望または検討している、九州各地や東京から参加の10数名も加わって、総勢30名余が作業に参加した。前夜の雨のため、粘土質の道は滑りやすく、参加者は足元に注意しながら菜園に向かって山を登った。
左 :トラクタを移動するeプロジェクトのスタッフ / 右 :現地の様子
当日の作業は以下のとおり。
1)ディスクロータリーで耕起(掘り起こし)
2)石や木の根の片付け(人力:全員参加)
3)バーチカルハローによる整地(表面を平らに)
4)家庭菜園用の管理機による整地や畝立て
左 :人力で石や木の根を拾う / 右 :バーチカルハローによる整地
トラクタが荒れ地に入り、ディスクロータリーによる掘り起こし作業が進むのを見た後、畑らしくなった菜園地に入り、参加者全員が、手作業で木の根や石などを取り除いた。
希望者には、実際にトラクタに乗っての作業や、家庭菜園管理機による畝立てなどを体験してもらった。
続いて参加者は畑の下にほぼ完成したダーチャ(建物)を見学。間取りや内部の様子、外の眺めなどを確認していた。
左 :参加者も作業機械を操作体験した / 右 :きれいな菜園が出来上がった
NPO法人グリーンライフあまくさの梅川事務局長は、「ポンカン発祥の地と言われるこの地区は自然に恵まれた素晴らしいところだが、現在では高齢化のため耕作放棄地が増えている。田舎暮らしをしたいと思っている人に、ぜひ天草に住んでもらいたいと思っている。そのために、実際に野菜づくりをし、自給自足の天草暮らしを一年間体験して、天草の四季を肌で感じていただきたい。eプロジェクトで再生していただいた農地は、南斜面で日当たりが良く、きっとよい野菜ができるでしょう」。
また、若山良孝・天草市役所審議員(都市農村交流担当)は、「イベント・ツアー等を利用して通っていただき、またはダーチャに滞在して自給自足的農業を体験してもらい、この土地の良さを感じていただきたい。気に入っていただいた方々の天草市内への定住につながり、天草全体の活性化のためになればと思っている」と語ってくれた。
参加者の中には、クラインガルテン(ダーチャ金焼)利用を希望している人や、市内に定住を考えている人もいるといい、この事業は上々のスタートを切っているようだ。(みんなの農業広場事務局)
グリーンライフあまくさの詳細はこちらから
※1) 「クラインガルテン」とはドイツ語で「小さな庭」を意味し、「市民農園」とも言われる。ドイツでは野菜や果樹、草花が育てられ、小さな小屋(ラウベ)が併設されていることもある。
日本では日帰り方と滞在型があるが、一般にクラインガルテンというと、菜園に併設された建物に滞在しながら田舎暮らしを体験する場をさすことが多いようだ。
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