提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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よくあるご質問(pick up!)


稲作

昨年、トラクターで代かきを行いました。「練りすぎると地中が酸欠になって苗の生育に影響が出る」とあったので、浅めに代かきをしたのですが、水路の水が止まるのを見越して100%の湛水をしても、翌日には水たまりすら残らないほど減っていました(減水深でいうと10cm以上/日)。今年は思い切って、深めに代かきをしましたが、代かきから田植えまでの様子では、減水深は1cm未満/日となってしまいそうです。一発代かきだったのですが、「深い代かき≒練りすぎ」となるのでしょうか? 透水性が良すぎる(水持ちが悪い)と除草剤などの効果に影響がありそうですが、透水性が悪い(水持ちがよすぎる)ことによる稲への影響はあるのでしょうか?

「水田土中の酸素を意識して栽培体系を組み立てよう」


1.湛水の土壌にも酸素は必要
 水稲栽培で「毎日・継続的に必要」な仕事は水管理ですが、水は土中の「孔隙」を占有して「空気の居場所を奪う」ものでもあります。
 水稲は体内の通気組織で生育に必要な酸素を確保するとともに、運んだ空気の一部を土壌に供給しているようです。しかし、有機物分解の過程で消費されるので、湛水土壌中の酸素は「不足」状態です。酸素が不足している状態、すなわち還元状態の土壌では、硫化水素や有機酸等の水稲の根を痛める物質の生成が進みます。また、日減水深が小さいと中干しによる生育制御が困難になります。
酸素の豊富な水が上部から深い部分に降りてくると、土壌の還元状態を緩和するとともに、根を痛める物質を作土中から洗い去ることが期待されます(この作用が「中干し」の効果の一部です)。
すなわち、”適度な日減水深”を確保することは大切です(農林水産省が定めている「地力増進基本指針」の”基本的な改善目標”の日減水深は20~30mm/日)。


2.干し過ぎは禁物
 日減水深の小さな(透水性の低い)田については、例えば溝切り等で排水を促進して「水の更新」を図るなどの対策は考えられます。早めに干し加減にしながら、湛水しないで栽培する手法もありますが、留意点があります。
 まず、このやり方は茎数を抑制する方向性がありますし、除草剤の使用と考え合わせて水位調節が必要です。さらに、水田土壌が乾き気味であると、”水稲のカドミウム吸収”を助長する恐れがあります。水田のカドミウムについては、各県が調査の上でリスクのある地域への技術指導を実施していると思われますので、県農務事務所に確認いただくのが良いでしょう。


3.代かきの意義を整理
 代かきは、漏水防止以外にも、砕土、均平、雑草の埋没、基肥混和等の多様な作用が期待される作業です。この期待される作用を発揮できる作業方法が的確な代かき方法です。
 漏水については、代かき機で攪拌するとともに、トラクタの車輪が踏圧することで効果が発揮されます。また、代かきでできる均平は表面の凹凸を均す程度のことであり、砕土は苗がちゃんと植えられれば良いことなので、”深過ぎ”は不要であるとともに、深い層までこねると、せっかくの団粒構造が壊れるなど、”深過ぎ”る耕うんに良いことはありません。


4.冬仕事から準備
 このように考えれば、「稲刈りから田植までの間の準備」という基礎の上に、各圃場の水管理は成り立つ、と考えることが適切です。”練り過ぎない”という意味では、代かきを一発でこなすこともあり得ますが、均平等の 冬季作業と組み合わせて代かき作業の内容をご検討ください。