提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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■稲刈り後のヒエの防除について
水田の土中には多種類の植物の種子が”埋まって”います。野生植物の種子は、個々の種子の能力や置かれた環境によって、休眠・発芽が変動します。同一種が一斉に発生し一斉に消滅するリスクを低減させて、生き延びています。
今年は、稲刈り後の耕起が遅れたこと、高温であったこと等が埋土種子の出芽を促進させた可能性はあります。
ともあれ、このまま放置していると”出芽したヒエが種子を残す”可能性があるので対処は必要ですが、来作のための圃場づくりは秋から始まるものであり、いずれ耕起作業や場合によって資材投入を伴うことになるので、ヒエ以外のことも含めて対処を検討したいと思います。
○多年生雑草への対処
オモダカ、クログワイ等の多年生雑草は土中に塊茎を残します。塊茎は大きいし、出芽のタイミングがヒエよりも遅かったりするので、(効く薬剤はありますが)薬剤防除はなかなかに困難です。
この塊茎は、耕起して地表に出ていると冬の寒気・霜で凍結・死滅するので、耕起を繰り返して塊茎を地表にさらす努力を重ねるのは、多年生雑草を減らすのに有効です。
○排水改良や均平
排水改良や均平は冬の作業として重要です。雑草対策のタイミングと合わせて、作業計画を調整することが大切です。
○生えているヒエへの対処
ヒエに限らず、田面の稲わらも含めて”地温が低くならないうちにすき込む”ことで土中での分解を促進し、来春の”ガス沸き”等の被害を軽減させます。
なお、上述した排水改良と関連しますが、砕土を細かくやりすぎると土の乾燥を妨げます。
○土中の種子への対処
土中のヒエ種子は”休眠”していますが、”目を覚ます”しかけをして、寒い時期に出芽させると、寒さで枯死させることができます。目を覚ますしかけは「石灰窒素」を施すことです。
資材の包装にも使用法が書かれていると思いますが、40~50kg/10aを散布します。ただし、このしかけがうまく働くには平均気温18℃が15日以上続くこと、田の土が発芽できる程度に湿っていること(乾燥していないこと)が必要です。
お住いの地域の気象庁のアメダス平年値では、10月18日頃までは平均気温がこの条件を満たしますが、その後、急激に低下するようですから、石灰窒素施用による休眠打破は”適期ぎりぎり”のところに来ているようです。
施用してもすぐには効かないで、春になってから”やや早め”に出芽するものもあるので、これは代かきですき込むことになります。
いずれにしても、この手法の場合は「冬は耕起しないでヒエの芽を出させる」ことになりますから、前述の多年生雑草対策等とは逆のやり方になります。
■結論
秋になって、たくさんの出芽があった状況からは、土中の種子の”目を覚ます”ことで退治したくなりますが、時期がやや遅くなってきていること、石灰窒素を施用すれば来春の窒素施肥にも減肥の配慮が必要になるであろうことを踏まえ、今回は「現在のヒエから種子を落とさせない」ことを主眼に、なるべく早く耕起・すき込みをすることが適切と考えます。
また、秋のヒエの多発は、除草剤の効果が”実は不十分”であった面はあるので、
●より丁寧な均平
●剤の投与タイミングや後期剤の見直し
●秋の稲刈り前後の作業スケジュールの見直し などを検討してみてはいかがでしょうか。
稲刈りが終わって「一息ついた今」が、来年への準備のスタート地点です。