提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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■すき込むわらの分量についてのご質問ですが、秋耕は来作の土づくりの手始めでもあるので、秋耕の意義や注意点等も含めてお伝えします。
○来春の田植の阻害物をなくす
刈り株、稲わら等を土中に埋没させて、代かきや移植を阻害するものをなくします。また、土をほぐして、作業しやすくする準備をします。
○土壌の乾燥を促す
荒く耕起することで乾燥を促します。湛水したままの状態や、耕起をせず土中に風を通さないと乾燥が不十分で、すき込んだ有機物の分解が進みません。
○有機物の分解を促す
土壌と混ぜて、土壌からの窒素等の栄養分(の供給源)として確保します。例えば、稲わらを牛の飼料に充当する場合のように、圃場の外へ持ち出すのは栄養分の持ち出しでもあります。
○土壌中の有機物分解を予想しておこう
土壌に混ぜて、微生物による分解を促進します。土壌中には根や、前作までに分解しなかった有機物が存在します。その状態に「加えて」地表部のわら等を土壌中に持ち込む際は、土壌中の有機物分解を予想して、すき込むタイミングや有機物の量等に注意が必要です。
○来作の倒伏に注意が必要
土壌中の有機物は、地力窒素の源でもあります。今年倒伏したところは要注意です。また、コンバインがターンを繰り返して周囲より深くなったところにはわらが集まりやすいので、「散らす」ことが必要です。
○分解には温度が必要
温度が高いと分解が進みます。秋耕の時期は温度低下が進む時期ですから、「なるべく早く」すき込むことが必要で、10月中には終えたいものです。また、秋は地温が上昇しにくいので「浅め」にすき込みましょう。
来春に気温が上昇し、温かい水が入ってくると、「急速に」分解が進みます。有機物の分解は土壌中の酸素を消耗し、結果的に「硫化水素」という、水稲の根に有害な物質の発生をもたらします。今作で「秋落ち」のみられたところには、すき込みをやめることなどが必要です。
○すき込むわらの量の目安
平坦地の湿田、準高冷地の乾田~半湿田で、上記のような倒伏や秋落ち等の要注意がなければ、半量程度が目安と思われます。
■すき込み量以外の秋耕の機能等についても以下に記します。
○雑草を防除する
オモダカやクログワイ等の多年生雑草は、秋耕で茎葉を切断することで塊茎の成長を防ぎます。また、秋耕すると塊茎が土壌表面に出て、「霜に当たる」ことや「乾燥する」ことで春の出芽力が低下します。
○病害虫を防除する
再生稲は、イネ縞葉枯病ウイルスを保毒したヒメトビウンカの越冬場所になり、また、伝染源にもなり得るので、土中へのすき込み処理が大切です。
○田面を均平にする
春作業だけで均平にするのではなく、秋耕段階から田を観察し、排水の改善、耕盤の深さや均平度の確保などを含めた土づくりを意識しましょう。
○砕土を細かくし過ぎないことに注意
耕起を何回も行うと砕土が細かくなりすぎ、土を練って、土壌中の空気を少なくする可能性があるので、注意しましょう。