提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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カメムシ類のうち、イネの穂を吸汁して斑点米を発生させるものを斑点米カメムシ類といいます。斑点米カメムシ類は地域によってその主要種が異なり、アカヒゲホソミドリカスミカメは北海道や東北・北陸で、アカスジカスミカメは東北太平洋側と関東以南で、オオトゲシラホシカメムシは東北と北陸で、トゲシラホシカメムシは北陸以南で、クモヘリカメムシとホソハリカメムシ、シラホシカメムシは関東以南で主に問題になります。
アカスジカスミカメは北陸や九州などで近年増加傾向にあり、今後の対策に注意する必要があります。これらのカメムシに加えて、最近、西日本を中心にミナミアオカメムシの分布が拡大していることが知られています。
ミナミアオカメムシ(写真右)は熱帯から亜熱帯、温帯地方南部に広く分布しています。ミナミアオカメムシによく似ているアオクサカメムシは、日本や朝鮮半島、中国、東南アジアに分布しています。この2種のカメムシは、イネのほか大豆をはじめ広範囲の植物を加害する害虫として知られています。
このうち、より南方系の種であるミナミアオカメムシは、1950年代頃には鹿児島県や四国、和歌山県などの本州西部の南岸のみに分布していました。
その後、1990年代になると九州の数県で見つかるようになりましたが、2000年以降さらに分布が拡大し、2004~2005年には海岸沿いを中心とした九州全域や、中国、四国地方各地でも見られるようになりました。
ミナミアオカメムシは、1月の平均気温が5℃以下のところでは越冬できないとされています。九州北部では、1986年までは1月の平均気温が5℃以下の年が多く見られましたが、1986年以降6℃以上で推移していることから(図)、本種の分布の北上は温暖化に伴う冬期の気温上昇と関係していると
考えられています。
図 1961年から2011年までの福岡市の1月の平均気温の年次変化
(気象庁HPより)
2010年には千葉県でも初めて発生が確認されています。今後の発生量増加に注意する必要があります。ただし、2011年1月は全国的に近年にない低温であったため、ミナミアオカメムシのような南方性の害虫の今年の発生がどのようになるのかは注目する必要があります。
ミナミアオカメムシを含めた斑点米カメムシに対する本田での薬剤防除は、水稲の穂揃い期とその7~10日後の2回行うのが基本ですが、対象種や発生量に応じて変更が必要です。
カメムシの種によって、効果の高い薬剤が若干異なる場合がありますので注意が必要です。
現在、食品衛生法に基づく農薬等の残留基準に関するポジティブリスト制度が制定されているため、農薬散布時には、使用法や使用回数を守るとともに周辺農作物への農薬の飛散防止に努めることが必要です。
松村正哉
(独)農研機構九州沖縄農業研究センター 生産環境研究領域