提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ
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コブノメイガ(写真1)は我が国の九州以北では越冬が不可能であり、中国南部などから毎年梅雨時期に飛来して水田で1~2世代増殖します。飛来量は西日本で多い傾向にありますが、飛来源における発生量や梅雨時期の風の流れによって年ごとの飛来量は大きく変動します。九州地域における発生量は、長期的に見ると年々増加傾向にあります(図)。
図 九州地域におけるコブノメイガの発生面積率の推移
(JPP-NETのデータによる)
飛来した成虫がイネの葉に産みつけた卵からかえった幼虫(写真左)は、イネの葉を筒状につづって、その中に生息して葉を食害します。食害を受けた部分は白く変色するので、多発生した場合には水田全体の葉が白く変色します(写真右)。出穂前に止め葉が激しく加害された場合には収量に大きく影響します。コブノメイガは、窒素を多用した水田や、飼料イネなどで周辺の水田より遅く植えた場合など、葉色の濃い水田に集中して産卵して多発生することが多いので、注意が必要です。
左 :コブノメイガの幼虫 / 右 :コブノメイガによる被害
コブノメイガの防除は、機械移植当日に育苗箱施用薬剤を使う場合と、本田で薬剤散布する場合があります。九州地域のように毎年飛来量が多い地域では、前者が効果的です。本田散布の場合の防除適期は、粒剤を使う場合には飛来した次世代の成虫の発生最盛期であり、液剤や粉剤などを使う場合には次世代の幼虫ふ化期(成虫の発生最盛期の約1週間後)です。防除適期を判断するためには、コブノメイガの飛来時期や発生量を的確に把握することが重要になります。8月上旬頃に水田の中を歩くと1㎝ ほどの小さな蛾が多数飛び立つことがあります。その時期が次世代成虫の発生最盛期になります。
県の病害虫防除所などの防除指導機関では、毎年7月以降にコブノメイガやウンカ類の飛来時期や飛来量の情報を発表し、その年の防除適期についても予測していますので、それらの情報を参考にして適切な防除を行ってください。
なお、コブノメイガの防除薬剤については、今のところ、特に抵抗性が発達している薬剤はありません。
松村 正哉
(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター 生産環境研究領域