信州発 “農”と言える日本人 【40】
2012年07月26日
高校球児と見栄っ張りおじさんの記
高見澤勇太
先日、夏の甲子園出場を賭けた、第94回全国高校野球選手権長野大会を観戦に行った。
自分の子供が出場しているわけではないが、
娘が通う小海高校を応援に行った。
小海高校は1学年3クラス、全校の生徒数は360人に満たない。
先生が全校生徒の顔と名前を把握できるほどの、小さな高校だ。
5月には親と先生の交流を目的としたPTAソフトバレー大会があり、
大会後には懇親会が催され、酒を酌み交わし、先生方とフレンドリーになれた。
こんな高校は珍しいだろう。
そんな流れもあり、ただ応援したくなった。
対戦相手は私立の強豪校で、善戦及ばず敗退した。
一回負ければそれで終わりの高校野球、
子供たちの真剣なプレーを見ていると、それだけで感動する。
農作業が暇になったから出かけたわけではない。
観戦したいと思ったから、仕事をやりくりして時間を作った。
農業は、仕事を探すと、いくらでもすることが見つかる。
畑作りの堆肥まき、肥料まき、耕うん、石拾い、マルチ張り、マルチ穴あけ・・・
育苗管理の種まき、水やり、ハウスの開け閉め、植え付け、草取り、防除作業・・・
収穫作業をして二毛作のための畑掃除、除草剤散布、マルチ穴あけ・・・
大小20枚ある畑の見回り。
月に一度は堆肥の切り返し。
いきなりやってくる大雨後畑の排水、晴天続きで灌水作業・・・。
夏になると山道の雑草は繁茂し、雑木林の木々が道路を塞ぐ。草刈り機とチェーンソーの出番だ。
作業機や機械類の故障は、自分のできる範囲で修理。
畑の小屋の雨漏り修繕。
中国人の実習生からは、「パソコンがほしいので休日に電気屋さんに連れて行ってくれ」
さまざまな仕事や雑務に追われる。
「忙しいから・・・」と言って、仕事ばかりでは寂しい人生だ。
忙しいという漢字は“心”と“亡”からできている。
心がお亡くなりになってしまっては、人間という名の機械になってしまう。
何のために生きているのか分からない。
「農業は自由な職業だろう!!」
だから無理してでも時間を作り、やりたいことをやってみる。
次の日にしわ寄せがきて、厳しい毎日を送ろうとも、
「おれは何でもできる男なんだ!!」と自分にいい聞かせ、やせがまんをしながら、また農作業に励むのだ。

たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」