信州発 “農”と言える日本人 【20】
2010年11月22日
品種の多様化は生産者にも消費者にも良いことだ
高見澤勇太
今年、わが南牧村では、白菜やキャベツなどアブラナ科野菜の栽培に大きなダメージを及ぼす病害『黒斑細菌病』が猛威をふるった。
分かりやすく例えるならば、宮崎県で大きな被害を及ぼした『口蹄疫』と同じぐらいの状況と言っても過言ではない。
2年ほど前から徐々に増えた黒斑細菌病だが、発症が予測されたので、各農家では農薬散布などの防除を徹底して対応した。しかしその努力のかいもなく、被害の大きかった農家では、1枚70aの畑が全滅という状況であった。
先日、次年度からのアブラナ科野菜安定生産をめざし、研修会が開催された。講師には、独立行政法人 野菜茶業研究所の白川隆氏を招いた。村の中央公民館に100名ほど集まっただろうか、誰もが熱心に聞き入っていた。研究員の方なので難しい専門用語を交えた、約2時間の研修会だった。
この内容を説明すると長くなり過ぎるので、研修会後近くのレストラン・ストローハットで開催された、農業士協会・南佐久支部の勉強会での、印象に残った会員の一言を紹介したい(彼の名は林君)。
こちらの勉強会は、農士会・南佐久支部が近隣にある(株)嶋屋種苗に声をかけて、毎年大手の種苗会社からブリーダーをお呼びして、新品種の情報交換会をするものである。
林君は・・・
「最近、野菜の品種の入れ替わりが早過ぎる。その時々の病気にすべて対処しようとして、あれもこれも欲ばり過ぎて、オールマイティーな品種が一番良い品種になっている。だけど、どの病害にも対応する品種ほど、どの病害にも完ぺきじゃない」
「野菜に対して味を優先する人、見た目優先の人、病気に強い品種を優先する人。病気の中でも、Aという病気・B・C・D・・・いろんな種類がある。そして農家もAに悩む人B・C・D・・・悩みはさまざま」
・・・中略・・・
そして最も印象に残った一言は・・・
「もっと、それぞれの農家に一番ベストな品種が欲しいなぁ~」
これって、一般の生活者も同じことを思っているんじゃないか。
例えば、同じキャベツでもいろんな特徴がある。
まん丸のタイプ、扁平タイプ、とんがり型。
見た目の良さ、保存性が良い、重量がある、もちろん味が良い。
味で見ても甘いタイプ、すっきりタイプ、苦味があるタイプ。
歯触りがシャキシャキした食感、やわらかいタイプ、生では硬いが炒めると最高に良い味が出るもの。
こんなにいろいろな顔を持ったキャベツだから、それぞれの家庭の献立や趣味趣向に合わせたチョイスができたら、それだけでワンランク上の食卓ができあがるのは間違いなし。
そんな食卓のお手伝いができる八百屋さんの復活、それともスーパーの野菜売り場にいつも野菜ソムリエがいてくれたらいいのに・・・と、筆者の思いは頭の中を駆け巡りながらも懇親会でのお酒はすすみ、農業青年たちの話は多岐にわたり、お店も渡り、夜は更けて行ったのであった。

たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」