信州発 “農”と言える日本人 【9】
2010年01月05日
「農協」と「JA」 ~来年度の基本方針に物申す~
高見澤勇太
私の所属するJA長野八ヶ岳は、平成13年度に発足した。南佐久郡南部にある5町村の農協が1つになった、合併農協である。
先日、そのJA長野八ヶ岳 南牧支所の支部懇談会があった。その際のプログラムである。
1) 21年度野菜生産販売の総括、及び22年度の基本方針(案)
2) 22年度生産技術方針の説明(新品種の栽培技術指導、新資材の使用に関する注意点など)
3) 22年度農業資材注文書について(資材価格・助成金など)
4) その他
どれをとっても、JAの内容説明に対して、物申したいことばかりだった。全部を書いたらコラム1年分でも足りないので、そのほんの一部をここで述べたい。
■南牧支所の売上げは、前年対比10%減である
売り上げが前年の90%に落ちた。市場外流通が増えたことが、原因のひとつである。スーパー・量販店・外食産業などは、野菜の調達を市場から独自のルートにシフトしている。自社農場での栽培、特定の契約農家やJAから直接仕入れる、こだわり野菜の生産者と直取引、などだ。
その結果、市場流通の割合が減って取扱量が減少、おまけにJAは市場依存度が高いので、品薄にならない限り、価格もいつでも安値のままだ。どういう手を打つのか、JAには考えてほしい。
■大義名分はいらない!
22年度基本方針には、「そ菜生産の作柄安定と計画生産、計画出荷を推進し、消費者ニーズに沿う信頼される正直な産地として安心且つ・・・」
この後も大義名分が続くので省略する。美しい文章で飾られたこの基本方針には、“百姓の心意気”とでもいうような熱いものは全く感じられない。これでは、「絵に描いた餅」そのものだ。
■巨大化したJAは誰のためのものか
小さい農協では資金繰りなどの面で先行きが危ぶまれるといい、合併がどんどん進んだが、JAは巨大化し過ぎている。発足当時の協同の理念は、どこかへ行ってしまった。
大きなJA(JA長野八ヶ岳は農産物年間総売上高200億円以上、預金総額500億円超である)は、農家のための農協ではなく、JA自体が独り歩きした一民間会社にすぎなくなったのではないだろうか。農家の実情は二の次で、組合を存続させることが第一目的、そんな現実が見え隠れする。
農家のIさんがこう訴えた。
『農家のための農協なのに、農家が赤字でも農協職員の給料は減るわけではなく、農家の買う資材も安くはならない・・・』と。
同感である。
もしJAが農家のためのJAならば、稼ぎの多い年には農協職員・役員の給与も増えて赤字の年には少なくなる。そんな過激で大胆な農協があってもいいんじゃないか!!!??? 民間企業では、赤字なら役員報酬・従業員給与の削減・ボーナスカットは当たり前だ!
これをやらない、できない「JA全農グループ」は、テレビの時代劇によくある光景にたとえるならば、こうであろうか。「農民が凶作で苦しんでいても年貢を取り立てる、悪代官がJA」で「グループ企業の資材を高く売るのが、悪徳商人の越後屋」

たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」