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信州発 “農”と言える日本人 【8】

2009年12月08日

「うさぎとカメ」は、「目標や夢を持つ大切さ」の話だった

         高見澤勇太


  ♪もしもし カメよ カメさんよ♪~~でおなじみの「うさぎとカメ」のお話では、なぜうさぎがカメに負けてしまったのか。うさぎが途中で寝てしまったから・・・ではありませんよ。答えは、うさぎとカメの視点の違いです。“うさぎはカメを見ながら競争に臨んだ”一方、“カメは目的地点を見据えて競争に臨んだ”からです。

山本富士夫氏 長野県農業士協会東信ブロック研修会で、こう若手農家に語りかけてくれたのは、北佐久園芸株式会社 代表取締役、山本富士夫氏。童話をそのまま今の農家の現状に当てはめて、話が続いた。


「皆さんは仕事をする時に、何を目標にしていますか? 大概の農家は、隣近所の農家を見て仕事をしています。『隣の家が大きいトラクターを買ったからうちも欲しい』『隣の家がレタスを播いたからうちも』『隣の家が・・・』と、視線の先はつねに“カメ”です。
しかし、本当の目標は隣の家ではないはずです。自分が追い求める目標や夢があるはずです。無かったら持ちましょう」


「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
これは京セラの創業者、稲森和夫氏の考え方です、と次の話が始まった。

◎人生・仕事の成果=
考え方(人間としての生きる姿勢)×熱意(やる気)×能力(頭脳・健康・運動神経)
(-100~100)      ×(0~100)  × (0~100)


 能力がたとえ2でも、熱意が100あって考え方が50なら、=10000である。ところが、能力が100で熱意が100であっても、考え方がマイナス思考(世の中をすね、恨み、まともな生き方を否定する)ならマイナスがかかる。人生や仕事の結果は、能力があればあるだけ、熱意が強ければ強いだけ、大きなマイナスになる。と説いたそうです。「農業青年のみなさん、素晴らしい考え方、人生哲学を持つことで、未来は大きく変わってきますよ」と、わかりやすく解説してくれた。


 その他にも山本氏ご自身の生い立ち、市場・仲買人の裏話、マーケティング等、興味深い話が続いたのであった。
 研修会終了後は場所を食事処に移し、山本氏、普及所職員、農家総勢約30人で懇親会に突入した。酒が進むと、それぞれが今の思いや考え方をさらけ出し、熱い時間が過ぎていった。


◆◆◆


 講演を聴いて、昨今、栽培しやすく高く売れる品目を作ることに傾いて、本当に大切な、野菜を買って食べてくれる生活者のことをあまり考えていなかったことに気がついた。こんな野菜が食べたい。栽培方法は? 誰が作った野菜なの? そんな生活者の声に耳を傾けていなかった気がする。


 「元々農家の方より、新たに農業分野に参入した人のほうがポイントを押さえている。根っからの百姓は、作るのは上手くても売るのは苦手で、商売上手な新興勢力に負けてしまうからである」これは、印象に残ったマーケティングの話。

 それでは、既存の農家が負けないためには、どうしたらよいのだろうか。それには、もっと生活者に接近して声を聞き、要望に応える、難しい注文や意見にも耳を傾けて、課題に取り組む、生活者と意見交換をして、農家の実情もわかってもらう。そのような地道で、カメの歩みのようなゆっくりとした改革でも、進むのを止めなければ、やがては目的地までたどり着けるのではないだろうか。


 農家のみなさん、あわてずに歩きましょう。そして生活者のみなさん、日本の明るい未来のためにも、国産の農産物を応援して下さい。よろしくお願いします。

たかみざわ ゆうた

1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」


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