信州発 “農”と言える日本人 【6】
2009年10月01日
作物の成長と子育て
高見澤勇太
「春はのんびり、夏は早足、晩秋は立ち止まるもの、な~んだ?」答えは作物の生育速度です。
作物の生育は、気温や土中水分、栄養分、日長などに敏感に反応します。難しい説明はしません。我が家(以後「太陽農園」)で栽培している野菜「サニーレタス」を例に、種まき、植え付けから収穫までのスピードに、春・夏・秋でどんな違いがあるか、お話しします。
まず太陽農園の野菜栽培環境から。畑の標高は1000m~1400mと高冷地に属します。冬の最低気温は-20℃と極寒です。対して夏の最高気温は、25℃を超える日が数日、という涼しい気候です。ここで、サニーレタス(以後サニー)を中心に作付をしています。
この環境の中で3月10日に種まきをしたサニーは、育苗ハウスで約30日育て、その後畑に定植します。夏場の暑い時期には、最短15日で定植する場合もあります。
畑での生育も、4月上旬に定植したものは、霜にあたりながらのんびり育ち、収穫まで45日程度かかります。7月定植では最短30日前後で収穫できるので、トータルすると、収穫まで春75日に対して、夏は最短45日。同じ作物で、なんと1カ月の生育期間の差があるのです。秋の10月中旬を過ぎると、朝晩は0℃を下回ることもあるので、サニーはほとんど成長しない状況になります。夏場に収穫せず放置したサニーは、人の背丈ほどまで伸びるのに比べると対照的です。
一見すると夏場は短期間で収穫ができて、効率がよく経済的に見えます。しかし味の視点から見たらどうでしょう。どんな野菜や果物でも言えることですが、寒さに当たってじっくり育った作物のほうが、甘み・旨みが増すのです。
長男の名前が「太陽」で、農家の後を継いでほしい気持ちから、17年前から農園名に息子の名前を使っています。その太陽が現在高校で野球をやっています。弱小野球班でレギュラーにもなれない程度の実力です。でも、それでいいんだよ! 好きなことを一生懸命やるだけで。人間も野菜と同じ、その場所でじっと耐えて辛抱すれば、味のある人間になるんだよ。
「いつもはのんびり、たまには早足、時には立ち止まって考える」野菜を育てるのも、子育てするのも、慌てず騒がず行きたいですねー。だって、百姓にゃいつも御天道様(太陽)が付いているのだもの。

たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」