信州発 “農”と言える日本人 【4】
2009年07月23日
産地廃棄に今年も考える
高見澤勇太
産地廃棄とは、「でき過ぎてしまった野菜を、産地の畑で一定割合処分し、価格の維持を図る」ことを指す。難しい言葉であらわすと、市場隔離対策・需給調整事業などともいうが、要するに、丹精込めて育てた野菜を畑で捨ててしまう。今年もまたその季節がやってきた。
長野県では、毎年7月に入ると、県全体で野菜の収穫量が増えて飽和状態となる。価格が下落し、再生産価格を割り込む。そこで、JA全農長野が中心となり、農協に出荷している野菜の流通量を調整して、価格をある程度上昇させる努力をする。
その調整方法とは、「廃棄」。圃場廃棄とも呼ばれる。
白菜なら6玉、レタスなら16玉を一山にして、指定された割合で畑に並べる。後日、役員が数量の確認に回り、廃棄した野菜に一山100円~300円の補助金が出る、というシステムだ。
出荷報告の50%廃棄という日もある。大雑把な数字だが、長野県全体で白菜・レタス・サニーレタスなどで約20万ケースの出荷量があるとすれば、10万ケース分の野菜が畑で処分される計算になる。ちなみに、白菜は7月21日から31日まで、国の廃棄事業が実施される。
以前、牛乳が飽和状態になり、搾った乳をそのまま捨ててしまう話がニュースになった。その後牛乳が足りなくなり、乳製品・チーズが不足する事態に。米も、捨てはしないが、減反減反で思うようには作れない。それなのに、海外から汚染された米を輸入して、目的外使用で世間を騒がせる・・・。野菜もこの状況だ。
農家では飯が食えない、と廃業する農家があり、若い担い手も農業という職業を選択しない。「米農家なのに飯が食えない国、日本」と誰かが言っていたけれど、本当にどうなっているんだろう? この国は。
それでいて「食料自給率が現在40%という危機的状況を何とかしましょう」「国内の農業を守りましょう」・・・と御上は言う。どう考えても無理ではないか。
政治・経済・法律、難しい勉強をいっぱいして有名大学を卒業し、エリート官僚になった方々、そして有能な国会議員・政治家の方がいて、どうしてこんな状態なんだろうか? マネーゲームや他国のご機嫌伺いのほうが、大切なのか?
農業を大事に育ててしっかりした基礎を作る。農業を土台にして、その上に商工業・サービス業の柱を立て、一朝事ある時にもびくともしない、骨太な国にしよう! そして、諸外国からの圧力に対しても、“農と言える日本”にしようではないか。
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たかみざわ ゆうた
1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」