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麦・大豆

麦編 病害対策 -赤かび病とその他の重要病害-

(2021年10月 改訂)

はじめに

 赤かび病は、麦の開花期に赤かび病菌が穂に感染することによって起こる病害です。収量や品質を低下させるだけでなく、人や家畜に対して有害なかび毒を生成するため、適切な時期に適切な対策を実施する必要があります。
 ここでは、赤かび病とその他の重要病害について、説明します。

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赤かび病に罹病した小麦()と六条大麦(
(提供: :農研機構 九州沖縄農業研究センター 久保堅司 /  :農研機構 西日本農業研究センター 黒瀬義孝)

かび毒汚染防止・低減対策のポイント

●かび毒汚染を防止・低減するために実施すべき取組とその効果を下図に示します。かび毒の低減効果が高い項目については個別に解説します。

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かび毒汚染を防止・低減するために実施すべき取組とその効果
(出典 :麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアル改訂版

赤かび病抵抗性が高い品種を選択

●作付け品種を選ぶ際には、実需者の評価やニーズも考慮した上で、できる限り赤かび病抵抗性の高い品種を選ぶことが重要です。
●「麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアル改訂版」に麦類主要品種の赤かび病抵抗性が示されています。

かび毒汚染を防止・低減する効果が高い薬剤の選択

●品種の抵抗性だけでは、赤かび病を抑えきれないため、薬剤による防除は必須です。
●かび毒汚染を低減する効果の高い薬剤成分として、チオファネートメチル、テブコナゾール、メトコナゾールが挙げられ、トップジンM剤、シルバキュア剤、ワークアップ剤などがそれらの成分を含みます。
●近年、効果の高い薬剤の開発・登録も進められているため、常に新しい情報を得て、薬剤を選ぶことが必要です。

適期防除および追加防除の実施

●1回目の防除適期は、小麦と六条大麦では開花始期~開花期、閉花受粉性の二条大麦では葯殻抽出始め(受粉を終えた葯が小穂から押し出される時期で穂揃い期の10日後頃)です。

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開花した小麦()と葯殻抽出した二条大麦(、矢印が葯殻)
(提供 :農研機構 西日本農業研究センター 黒瀬義孝)


●赤かび病の防除は適期を逃さず行うことが重要です。防除適期に降雨が多い場合であっても、短い晴れ間を利用するなどして、確実に防除を実施する必要があります。
●麦の発育は年によって大きく異なるため、圃場をこまめに巡回し、麦の生育状況を把握する必要があります。防除適期がいつ頃になるかは地域の普及指導センターや農業団体等からの情報に注意しましょう。また、開花期予測システム等も活用して適期防除を実施しましょう。
●気象条件や品種の赤かび病抵抗性程度などを考慮して、必要に応じて追加の防除を行います。追加防除では、薬剤の総使用回数や使用時期等を遵守してください。
●2回目以降の防除では、薬剤耐性菌の発生を防ぐために、1回目の防除とは異なる種類の薬剤を用います。

適期収穫および赤かび病被害麦の仕分け収穫の徹底

●麦粒中の水分が30%を下回ると収穫適期です。適期収穫はかび毒の低減に有効です。
●収穫が遅れると、かび毒濃度が高くなりやすいので、圃場をこまめに巡回し、麦の成熟状況を把握する必要があります。また、地域の普及指導センターや農業団体等からの情報に注意し、適期に収穫を行う必要があります。
●赤かび病が発生し、赤かび病被害粒が混入する恐れのある圃場では、健全な圃場と仕分けして収穫を行うことが必要です。

赤かび病被害粒の仕分け乾燥および選別の徹底

●農産物検査規格では、赤かび病被害粒の混入限度は0.0%と定められています。
●赤かび病被害粒は、全体が白変し表面がしわになります。

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小麦の健全粒(左)と赤かび病被害粒(右)
(提供 :農研機構 九州沖縄農業研究センター 久保堅司)


●赤かび病被害粒は、粒厚が薄くなったり、比重が軽くなったりすることが多いので、粒厚選別や比重選別をすることで、かび毒汚染を減らすことができます。
●共同乾燥調製施設の荷受け時には、赤かび病被害粒のチェックを行い、赤かび病被害粒が見られた場合には仕分け乾燥を徹底する必要があります。

「その他の注意事項」
●赤かび病菌が感染した麦は、倒伏するとかび毒濃度が高くなりやすいため、適切な肥培管理を行って、倒伏しないように注意します。
●より詳しい内容ついては、「麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアル改訂版」をご覧ください。かび毒汚染を低減するために有効な技術などがまとめられています。

麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアル改訂版
開花予測システム(リアルタイムアメダスを用いた麦の発育ステージ予測)

赤かび病以外の重要病害

●赤かび病以外の重要な麦の病害には、「うどんこ病」や「赤さび病」「縞萎縮病」などが挙げられます。
●これら病害への対策は、抵抗性品種の利用と薬剤防除が最も重要です。
●うどんこ病と赤さび病には、赤かび病防除に用いる多くの薬剤が同時に防除効果を示しますので、赤かび病の適切な防除によって、これらの病害による被害も減らすことができます。

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 :小麦のうどんこ病 /  :小麦の赤さび病
(提供 :九州沖縄農業研究センター 藤田雅也)

 
●縞萎縮病の被害対策には、反転耕起、播種量の増加、晩播、麦種転換なども効果があります。

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小麦の縞萎縮病 (提供 :九州沖縄農業研究センター 八田浩一)

執筆者 
久保堅司
農研機構 九州沖縄農業研究センター赤かび病研究チーム

黒瀬義孝
農研機構 西日本農業研究センター 研究推進部 技術適用研究チーム

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