大豆編 収穫・乾燥調製
(2024年2月 一部改訂)
刈り取り適期の判断
●コンバインによる大豆収穫作業の実行は、収穫時期と収穫時刻で判断します。
左上 :コンバインによる大豆の適期収穫作業
右下 :収穫適期の大豆 (品種 フクユタカ)
「収穫時期の判断」
●大豆は、成熟するにしたがって葉や葉柄が落ち、緑色から褐色に変化しながら、全体の水分が低下します。
●収穫適期は、子実水分が20%以下、茎水分が50%以下となり、莢を振るとカラカラと音がする頃(成熟期)です。
●収穫時期が早いと、茎や莢の水分が高く汚粒が発生したり、子実の水分が高く損傷粒が発生したりすることがあります。
●収穫時期が遅いと、しわ粒が増加したり、自然落粒などの損失が多く発生したりすることがあります。
「収穫時刻の判断」
●大豆の水分は、気象条件によって1日の中で変化します。前日や当日の気象条件などによって、収穫できる時間帯が異なります。
●晴天の場合は、午前10時から午後5時頃までが最良です。
●前日が晴れで当日曇りの場合は、11時頃から3~4時間程度におこないます。
●前日まで降雨が続いた場合は、当日晴れていても収穫が不可能な場合があります。
大豆水分の日内変化
コンバインの使用方法
●収穫作業を始める前に、大豆仕様部品の装着と清掃を行い、機械を大豆用に調整します。
「大豆仕様部品の装着・清掃」
●機体内に汚れがあると、汚粒の原因になります。マニュアルなどにしたがって、掃除口等を開けて清掃します。
●異なる品種の大豆や異なる作物を収穫する場合には混入を極力防ぐため、搬送経路を中心に念入りに清掃します。
●特に残りやすい部位は、2番還元上部オーガや排出オーガ受け継ぎ部等です。
●マニュアルに沿って清掃した場合でも数十g程度は機内に残留することがあります。
●品種が替わった場合、最初の排出時に、10~30kg程度分別することで、混入を大幅に低減できます。
●プラットフォーム底板、オーガ底板、受け網などを、大豆仕様部品に交換します。
「機械条件の調整」
●脱穀部回転数(脱穀部こぎ胴のプーリー)、送塵弁の開度、とうみ回転数、チャフシーブの開度などを、大豆用に調整します。
●リール回転数は、リール速度と作業速度の比を、1.2~1.6程度に調整します。
左上 :大豆仕様の交換部品の例
右下 :揺動を取り外せメンテナンスしやすい機種の例 ((株)クボタ ホームページより抜粋)
汚粒の発生と防止対策
●土の噛込み、収穫時刻、雑草などが、汚粒の主な発生要因になります。
汚粒の発生要因 (大豆の機械化栽培とコンバインの収穫事例集 :P19より)
「土の噛込み」
●土の噛込みを防止するためには、まず栽培法で対応します。
●畦高さをできるだけ低く抑え、倒伏が少なく、最下着莢位置が高くなるように栽培します。
●収穫作業中にヘッダ部に土が入ったら、速やかに作業を停止します。ほうき等を使って土を取り除きます。
「収穫時刻」
●大豆の水分が高い朝方および夕方の収穫では、機体内に塵が付着しやすく、その塵が大豆に着きやすくなります。
大豆水分の違いによる揺動選別部に付着する塵の例
収穫時刻8時30分(茎水分45%、莢水分20%)では機体内に排塵が付着し、汚粒が多く発生した。13時(茎水分20%、莢水分15%)では付着は無く、汚粒の発生は低くなった。
「雑草」
●培土等の適期作業によって、雑草の発生を防ぎます。
●中耕培土の時期が梅雨期と重なるため、なるべく晴天時を選んで作業します。
●湿潤な土壌条件でも土を練りにくいタイプの中耕培土機を使うとよいでしょう。
▼湿潤土壌でも土を練りにくく高速作業が可能なディスク式中耕培土機
●雑草は、収穫作業の前にあらかじめ取り除いておきます。
「コンバインによる汚粒防止技術」
●コンバインの送塵弁を開くことで、汚粒の発生を減らすことができますが、同時に脱穀選別ロスも増えるため、送塵弁の操作は慎重に行います。
送塵弁開度が汚れ指数および脱穀選別損失におよぼす影響
●作業速度を落とすと、汚粒を減らすことができます。脱穀処理量の増加に比例して、汚粒も増えるためです。
●脱穀部の受け網を回転軸と平行にパイプを配置したロール式にします。脱穀部に茎が残りにくくなります。
▼大豆の汚粒を低減させるコンバイン用受け網
●コンバインの揺動選別機構や大豆専用交換部品を、フッ化樹脂コートされたものを使います。
●排出オーガ縦パイプの側面に対して土抜き用のスリットを設けます。
▼汎用コンバインの大豆収穫時における汚粒発生低減技術
製品化された排出オーガ縦パイプの土抜き用スリット((株)クボタ ホームページから)
製品化されたフッ化樹脂コートが施された揺動選別機構 ((株)クボタ ホームページから)
●脱穀こぎ胴をバータイプとした脱穀方式を有するコンバインを用いる(新たに準備する)ことにより、収穫作業時における大豆の割れ、傷、汚粒の減少が期待できます。
バータイプの脱穀方式((株)クボタ ホームページから)
●主要部位の開閉・脱着の簡易化が図られているコンバインや工具を用いずに開閉可能な掃除口を有するコンバインを用いる(新たに準備する)ことにより、汚粒の原因になる機体内の汚れを落とす清掃作業の軽労化・高能率化・高精度化が期待できます。
▼機内清掃しやすいコンバインの新構造を提案
コンバイン主要部位の開閉・脱着の簡易化((株)クボタ ホームページから)
工具を用いずに開閉可能な掃除口の例((株)クボタ ホームページから)
ヘッドロス防止
●ヘッドロスには、刈残し損失、倒伏損失、落莢損失と裂莢損失があります。
●「刈残し損失」は、切株に残った子実をいいます。
●「倒伏損失」は、倒伏等によって、切断されずに圃場に残った子実をいいます。
●「落莢損失」は、莢に子実が入った状態で圃場に落ちている子実(茎や分枝から離れていない状態は枝落ち損失)をいいます。
●「裂莢損失」は、莢から子実が出た状態で落ちている子実を指します。
頭部損失の分類
「刈残し損失の発生要因と対策」
●刈残し損失は、最も低い位置に着く莢の高さ(最下着莢高)が低いと、多く発生します。
●最下着莢高を高くするためには、不耕起無中耕栽培技術(※1)を導入することも有効な手段です。
※1 不耕起無中耕栽培技術:
耕耘・整地をせずに最小限の掘削で播種し、中耕・培土を行わない栽培方法。耕耘・整地しないことで、地耐力を維持し、降雨後すぐに播種することができる。また、条間を狭くし裁植密度を高めることで雑草の発生を抑え、中耕を省略することができる。
「裂莢損失および落莢損失の発生要因と対策」
●裂莢損失は、リールや切断部等の衝撃で、莢が弾けて発生します。
●落莢(枝落ち)損失は、切断された茎が機体よりも前に落ちて起こります。
●頭部損失は、大豆の主茎の長さが60cm付近で最も少なくなります。
●主茎長が40cm以下になると、リールでの掻き込みが悪くなって急激に増えます。
●狭ピッチ切断部を使うと、切断による振動や茎の前方への飛び出しを減らせます。
▼大豆のコンバイン収穫損失低減技術
市販化された狭ピッチ切断部 ((株)クボタ ホームページから)
狭ピッチ切断部は、クボタARH650等に採用されました
乾燥調製
●大豆は米麦と比べて乾きにくく、無理な乾燥をすると、しわや皮切れが発生します。
●乾燥工程における被害粒の発生を抑えるには、穀粒水分を20%以下で収穫する必要があります。
●品質を低下させない方法で乾燥させるようにします。
「循環式乾燥機の利用」
●機械的な衝撃による破砕、皮切れ、しわ等の被害粒が発生しないようにします。
●穀粒水分が18%になるまでは時々循環し、加温せずに通風によって乾燥させるようにします。
●もみ殻を混合して乾燥させる方法もあります。もみ殻が、循環による衝撃をやわらげて、破砕等による被害粒を減らすことができます。
▼米麦用循環式乾燥機を利用したモミガラ混合大豆乾燥調製法
●循環式乾燥機の上部から、温度制御付きの温風ヒータで裂皮の発生しない温度に調節した温風を通します。
●スピードを落としてゆっくり循環することにより、損傷しやすい大粒大豆であっても、損傷を減らしながら乾燥調製することができます。
▼循環式乾燥機を利用した上部加温通風による大豆の低損傷高品質乾燥調製法
「静置式乾燥機の利用」
●静置式乾燥機では、送風温度が30℃以下、穀温が気温より15℃以上に上がらないよう、送風温度を設定します。
●乾燥むらを防ぐため、ときどき撹拌しながら乾燥させます。
主任研究員 梅田直円
農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター 生産システム研究部 収穫システム研究
グループ長補佐 栗原英治
農研機構 農業機械研究部門 無人化農作業研究領域 革新的作業機構開発グループ
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