提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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野菜編:葉茎菜類

ほうれんそう栽培(春~秋作)の作業体系のポイント

(2022年2月 改訂)

作付計画

●高温期は約30日間で収穫が可能ですので、春~秋までの間に、4~5回の作付けが可能となります。
●収穫・調整作業に全労働力の約7割を必要としますので、それぞれの経営の中で、1日当たりの可能な出荷量に応じて、計画的に作付を行います。

圃場準備

●排水性の良い圃場を選択するとともに、圃場周囲の排水対策を徹底します。転作田で排水が悪い場合は、暗渠の設置やサブソイラー耕起で水はけを良くします。梅雨や秋雨による腐敗や立枯病等の発生を防ぐため、雨よけハウスを利用します。
●堆肥は十分腐熟したものを10a当たり2~4t程度施用し、あわせて土壌pH6~6.5を目標に土壌改良を行います。稲わらや未熟な堆肥を使用するとホウレンソウケナガコナダニが発生するため、使用は控えます。
●高温期は立枯病や萎凋病、株腐病等の土壌病害の発生が問題となることから、春1作栽培後の5~6月の間に、土壌消毒(クロルピクリン等)を実施します。
●生育期間が約1ヵ月と短いことから、基肥は必要量(N成分で10a当たり7~8kg)を全層に施肥します。ただし、春先の低温期は肥料の分解が遅れるため、倍量を施肥します。

品種選択

●春期や秋期の低温期は、低温伸長性の良い品種を選択します。
●5~7月は、長日による抽苔の発生が問題となるため、晩抽性の品種を選択します。
●高温期は発芽や生育の不揃いが問題となるため、発芽揃いが良く、高温条件下でも伸長性の良い品種を選択します。
●収穫を機械で行う場合は、立性の品種を選択します。開張性の品種は収穫時に軸が折れるなど、事故品のリスクが高まります。

播種・間引き 

●間引き・収穫作業等を考慮し、播種作業は、播種機を利用した条播(すじまき)を基本とします。最近は、真空播種機等を利用した無間引き栽培が多くなっています。
●無間引き栽培の場合は条間15~16cm、株間7~8cmとし、㎡当たり80~90株を目安とします。
●間引きを行う場合は、播種後10日前後の本葉2~4葉期に行います。

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真空播種機による播種作業

かん水

●播種後は、表面に水たまりができるまで、たっぷりとかん水します。その後、発芽が揃うまでの数日間は土壌の表面が乾燥しないように注意します。
●発芽から本葉4葉期までは特に立枯病の発生が問題となることから、かん水は避け、土壌表面は乾燥状態を保ちます。
●本葉4葉期から草丈10cm前後の間は生育を促進するため、2~3回程度かん水を行います。
●収穫7~10日前からはかん水を控え、株元の腐敗防止と株の充実に努めます。

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左から上から 発芽後はかん水を控える / 草丈10cm前後までは積極的にかん水を行う

防除

●アブラムシ等の微少害虫の進入を防ぐため、近紫外線カットフィルムで被覆します。サイド部分はシロオビノメイガ等の害虫被害を防ぐため、防虫ネット(1mm目)で被覆します。
●低温期はべと病とホウレンソウケナガコナダニの発生が問題となることから、生育初期からの定期防除により、予防を図ります。

遮光

●7~9月は、特に高温状態となることから、播種前から遮光資材(遮光率30~40%)を被覆し、地温の低下を図ります。
●全期間の被覆は、生育は早まるが徒長気味となり、収量が低下することから、播種後10~14日を目安に被覆資材を除去します。
●極端な高温乾燥時には、収穫期まで遮光資材を被覆することにより生育促進が可能となりますが、かん水に注意します。事故品や土壌病害虫の発生を防ぐため、遮光資材を外すと同時にかん水します。

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遮光資材の利用と防虫ネット被覆

収穫・調製

●播種後約30日で収穫可能となることから、出荷規格に合わせて草丈25cm前後を目安に収穫を開始します。
●収穫は朝夕の気温の低い時間帯に行い、特に夕方収穫の場合は、収穫前に遮光資材を被覆し品温を下げておきます。
●収穫後は予冷庫に搬入し、品温を低く保つことが鮮度保持や事故品対策として重要となります。
●FG袋での出荷の場合、1時間当たり40袋(2箱)前後を目標に調整作業を行います。

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左から上から 収穫時期を迎えたほうれんそう  / 自動包装機を利用した調整作業

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収穫機による作業(写真提供:(株)クボタ)

執筆者
渡辺 新一
岐阜県農政部農業経営課

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