提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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野菜編:果菜類

促成ナス栽培の作業体系のポイント

圃場準備

●促成ナスは、加温機と内張カーテンを装備し、9月に定植、10月から翌年7月上旬まで収穫する、比較的長期間の栽培となります。
●ハウスの休閑期間が2カ月間と短いことから、土壌消毒、堆肥投入などの土作りを計画的におこなう必要があります。
●ハウスの間口は6mおよび7mが標準であり、間口により畝数と畝幅を決めます。
●春から初夏を中心に、積極的なかん水が必要となるため、排水良好な圃場を選択することが重要です。排水不良の圃場は、定植前に暗渠や明渠を設置します。
●定植前に土壌診断を実施し、pHや塩基バランス等を確認し、基肥の種類と量を決めます。
●定植1カ月前に完熟堆肥を全面に散布・耕耘し、定植1週間前には基肥、畝づくりを終了させるようにします。土壌水分に注意して耕耘します。

作型

●定植時期は、8月下旬、9月上旬、中旬、下旬の作型があり、地域の気候、土壌病害、労働力などを考慮して作型を選定します。
●一般的な作型は、9月上中旬に定植し、収穫期間は10月~翌年7月上旬となります。
●定植が8月下旬の早植えは、年内の収量が高くなり収穫期間が長くなる反面、台風襲来、土壌病害発生の危険が高くなるなどの課題もあります。

育苗

●購入苗の利用と自家育苗があります。収穫終了後の後片づけ、土壌消毒、堆肥投入などの作業に集中できることから、大部分が購入苗利用です。
●青枯病、半身萎凋病等の発生抑制のため、接ぎ木苗を使用します。
●穂木品種は地域の品種を用い、台木は「トナシム」、「トレロ」など、土壌病害の発生程度などに応じて選定します。
●かん水量は、初期から多かん水とせず、1日に必要な量のみかん水し、生長するに従って徐々に増やしていきます。

定植 

●9cmポリポット苗は、第1花が蕾の状態で直接定植します。主枝の方向が定まらないので、 早めに4本主枝を選び誘引をおこないます。
●セル苗は、9cmまたは12~15cmポリポットに鉢上げ後、開花直前に主枝の方向を定めて定植します。
●畝穴底部の水不足は活着の遅れにつながることから、定植前の植穴にかん水を十分におこないます。

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左から上から 定植直前の苗姿(9cmポリポット) / 定植後 かん水資材設置

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着果処理の方法

施肥・かん水

●定植から活着(約10日間)までは、鉢土が乾かないように、株元から半径15cmの範囲に手かん水します。
●活着後はチューブでかん水しますが、栄養生長と生殖生長のバランスをとりながら、かん水量を調整します。
●厳寒期は、あまり水分を必要としませんが、少なすぎると草勢低下と病気発生に結びつくため、地温を低下させないように晴天日におこない、少量多回数に努めます。
●3月以降になると水分吸収量が増加し、葉の展開速度が速くなるので、かん水量を増加させます。通路が乾かない程度が目安です。
●5月以降になると、さらに水分吸収量が増加するため、夕方にかん水します。通路が濡れている程度が目安です。乾燥するとハダニ、アザミウマ類などの害虫発生が増加するので、気をつけます。
●追肥は、有機質固形肥料を利用する方法が一般的で、第3段花の着果時から開始します。施肥間隔は、月に1~2回を目安に年内は畝上に、1~3月は畝肩、4月以降は通路に施肥します。

一般管理

「生育初期管理(9~10月)」
●この時期は、生殖生長と栄養生長の草勢バランスをつけます。
定植後から活着までのかん水は、しおれない程度におこないます。過度にかん水すると草勢バランスが崩れます。
●4本主枝をU次型に紐で巻き付け誘引します。草勢を見ながら、4本の主枝を揃えるため、短い主枝は垂直に、伸びている主枝は傾けて、各主枝の草勢に応じて誘引をおこないます。草勢の強弱は、主枝の生長点から花までの長さで判断し、長いと強く、短いと弱いです。雄しべと雌しべの長さでも判断できます(雄しべが雌しべより長いと草勢が強い)。
●ハウス内気温は、日中は30℃以下に、夜間は18~20℃で管理します。
●開花時に各花1回、着果促進剤を使用して処理をおこないます。

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左から上から 支柱とマルチ設置の状況 / 誘引ひも設置の状況

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年内の生育状況

「年内管理(11~12月)」
●秋から冬の季節の変化に応じた栽培管理になります。
●地温が18℃以下の時にマルチ被覆、外気温の平均が15℃を下まわった時期に内張カーテン被覆、最低温度10℃を確保するために暖房機を稼働させます。
●側枝の果実は1芽どりを基本に、開花時摘心と不要な芽の除去をおこない、果実収穫時に側枝の芽を1つ残して側枝を切り戻します(下図:剪定(1芽とり)方法)

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●昼は28℃~30℃、夜間は10℃以上で管理します。

「厳寒期の管理(1~2月)」
●春の最盛期に安定した量を確保するため、草勢のバランスを整える期間です。
着果バランスをとるため、温度管理を中心に、芽の整理、摘葉などの管理をおこない、草勢の波をつくらないようにします。
●温度管理は、昼間28~30℃、夜間は10℃を確保します。温度が急激に低下しないように、2~3回に分けて換気します。

「3~4月の管理」
●温度上昇とともにわき芽の発生が早くなり、果実の収穫日数も短くなるので、かん水や追肥などの管理を厳寒期から春期の管理に切り替えます。
●かん水は、溝が乾燥しない程度で、少量多回数をおこないます。
●施肥は、収穫量の増加とともに、追肥間隔を短くしていきます。
●4月中旬以降に内張カーテンを除去しますが、除去後は草勢が強くなるので、草勢が強い場合は除去を遅くするなど、草勢に応じて除去するタイミングを図ります。
●受粉作業は、4月以降はハチ類(ミツバチ、マルハナバチなど)で省力化を図ります。
●ハチ類(ミツバチなど)交配のため、導入前にアザミウマ類、コナジラミ類などの害虫の密度を下げておきます。

「初夏の管理(5~7月)」
●日中はハウス内温度が30℃を超えないように谷、サイド面、妻面の換気をおこないます。
●かん水は地温を下げるため夕方におこないます。
●肥料は、最終収穫(7月上旬)の1か月前(6月上旬)まで溝に施肥します。
●障害果
 ○つやなし果 :果実肥大後期の果実への水分供給不足で発生します。高夜温と乾燥が発生要因です。
 ○着色不良果 :果実への光不足で発生するので、摘葉や芽の整理が遅れないようします。

病害虫防除

●灰色かび病やすすかび病等の病害の発生があり、薬剤感受性の低下により防除効果が低下しているため、病害発生前から予防剤による定期防除が基本となります。また、ハウス内温度、湿度、草勢、施肥の管理で発生を予防します。
●アザミウマ類・コナジラミ類等は、防虫ネット被覆により、虫の侵入を防ぐ方法が効果的です。
●連作に伴い、青枯病、半身萎凋病等の土壌病害の発生が問題となるため、太陽熱土壌消毒で発生を未然に防ぎます。

収穫

●温度が低い午前中に収穫します。果実の長さは、出荷基準に留意して判断します。
●側枝の果実は、収穫と同時に枝の切り戻し作業をします。

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主枝の果実収穫方法

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執筆者
福岡県農林水産部経営技術支援課

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