夏秋トマト栽培の作業体系のポイント
圃場準備
●夏秋トマトの栽培期間は、比較的長期間に及び、その間に梅雨や秋雨時期と重なるため、パイプハウスによる雨除け栽培がおすすめです。
●間口は5.4m~6.0mが標準ですが、台風等の影響を受けやすいことから、地域に応じた強化策を考える必要があります。また、特に積雪地帯では、春先に作業が集中するため、前年秋までにハウスの設置を終える必要があります。
●夏期高温期を中心に、積極的なかん水が必要となるため、排水良好な、圃場を選択することが重要です。排水不良な圃場については、暗きょや明きょを設置し、排水対策を万全に整えます。
●作付け前に土壌診断を実施し、pHやリン酸、塩基バランス等を確認し、土壌改良を進めます。
●施肥、畝立て、かん水装置設置、マルチ被覆等、主要な作業は定植1週間程度前には終了するように、作業を進めます。
左から上から
台風対策として、入り口を補強しハウスを連結 /
定植準備の状況(支柱による誘引、畝上面のみをマルチ被覆する例)
作型
●東北地方内陸部や中部地方高冷地の、暖房等の設備がない一般的な作型では、播種が4月上旬、仮植4月下旬、定植6月上旬、収穫期間7月中旬~11月上旬となります。
●加温や保温装置の整っているハウスでは、4月上旬に定植し、6月上旬から収穫することも可能です。
育苗
●自家播種する場合と購入苗利用の場合が想定されますが、新規栽培では、購入苗を利用すると、作業的に余裕を持った栽培が可能となります。
●自根での栽培も可能ですが、青枯病等の発生を考慮すると、初年度から接ぎ木栽培を行う方が安全です。
●低温期の育苗となるため、育苗トンネル等により、最低気温10℃を目安に保温管理の徹底を図ります。
●かん水量は、初期から多かん水とせず、1日に必要な量のみかん水し、生長するに従って徐々に増やす意識が重要となります。
●品種は「桃太郎」系が多く利用され、葉かび病抵抗性が付与された新品種の導入が進んでいます。
●地域によっては栽培品種を限定している例が多いため、事前に確認が必要となります。
左から上から 保温のため、トンネル内で育苗 / 定植適期の苗(第1花開花)
定植
●一般的に、定植は第1花房第1花の開花を目安とします。
●小径ポット等を利用する場合、老化苗となることを避けるため開花前に定植する例もありますが、初期生育が旺盛となり、その後の肥培管理が難しくなることから、基本の開花苗定植をおすすめします。
●定植時の土壌水分は、速効性の基肥施用量によっても異なりますが、畝内部の乾燥は活着の遅れにつながることから、定植前の植穴かん水等により、十分調整しておきます。
定植直後の生育・管理状況
施肥・かん水
●3段花房開花頃までは、樹勢が旺盛となりやすいので、速効性の基肥は控えめにし、追肥主体の施肥設計とします。地域によっては化学肥料(窒素成分)の上限が決められていることから、施肥量に注意します。
●追肥は、省力的な液肥を利用する方法が一般的です。3段花房開花期前後、1段の果実がピンポン玉大頃から開始し、樹勢や天候等を考慮しながら、開花段数に応じて段階的に施肥量を増やします。収穫開始となる6段花房開花期ころが最も着果負担が強まることから、樹勢が低下しないように、施肥量を調節します。
●一般的には盛夏期に1株当たり2~3Lのかん水量が必要とされますが、適正なかん水量は、圃場条件により大きく異なるため、土性、排水条件等に応じて適正なかん水量を見いだすことが重要となります。
左から上から 追肥開始前後の生育 / 収穫開始時期の生育
一般管理
●一般的に、夏秋期の栽培では、各段の開花間隔は7~10日間となりますが、その間に脇芽かき、摘果、誘引、受粉処理等の作業を計画的に進めます。
●梅雨時期を中心に、着果負担による樹勢低下が問題となるので、低段は3果程度に確実に摘果します。
●受粉作業は、ホルモン処理、振動受粉、マルハナバチ利用等によって行います。
●ホルモン処理は各段1回、振動受粉は作業適期が短いため、4~5日に1回の間隔で行います。
●高温期を中心に花質が低下すると着果が不安定となるので、ホルモン処理により確実に受粉させることが重要です。
左から上から 低段は3果程度に摘果 / マルハナバチによる受粉
成田 久夫
岐阜県農政部農業経営課
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