提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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農作業便利帖


野菜・果樹

ブドウ栽培の作業体系のポイント

圃場の準備・定植

●圃場が排水不良の場合、定植前に明きょや暗きょなどで排水対策を実施します。
●苗木は秋頃に購入し、1晩水につけて十分に給水させた後、定植まで仮植えします。定植は秋植え(10~11月)、または厳冬期を避けて春植え(3月~4月上旬:発芽前)にします。
●定植場所に直径0.8~1.5m、深さ30cmくらいの植え穴を掘り、堀り上げた土に堆肥、苦土石灰、熔成リン肥を混ぜて土壌改良します。
●接ぎ木部のテープは取り除いて、根は広げて植えます。接ぎ木部は15cm以上地上に出して、土中に埋まらないように土を埋め戻します。
●植え付け後に、苗木は太さに応じて30~50cm程度でせん定し、支柱に誘引ヒモなどで固定します。定植直後に十分にかん水します。
●乾燥防止や雑草対策として、植え付け場所を稲わらなどで被覆(マルチ)します。

若木の管理

「1年目」
●先端部の最も旺盛な新梢を支柱に誘引し、第1主枝候補として生育を促します。その他の新梢は3~4枚で摘心や稔枝して管理します。
●樹勢が強い場合、副梢を利用して第2主枝候補を伸長させます。
「2年目」
●発芽を促進するために芽傷を入れます。2月中旬~3月上旬に専用のハサミやせん定ハサミを使用して、芽の先5~10mmに深さ2mm程度、幅5~10mmの傷を入れます。

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芽傷のようす

●主枝先端から発生した新梢は、まっすぐに延長して主枝を養成します。新梢は棚面に誘引して、副梢は1~2枚の葉を残します。
●主枝候補は適時に摘心して枝の充実を図りながら、目標とする樹形や主枝長に近づけます。
●せん定は、樹形に応じておこない、棚面に主枝や結果母枝を誘引します。
「3年目」
●2年目と同様の管理をしながら、主枝は伸長させて樹冠を拡大して、目標とする樹形が完成するように努めます。

整枝・せん定

●落葉後はいつでも整枝・せん定できますが、厳冬期は避けます。切り口から樹液の流出をさけるために、2月までにはせん定が終わるようにします。
●長梢せん定は、自然形仕立てで使用される方法です。樹勢や枝の状態によって結果母枝数や切り返し程度を調整します。
●短梢せん定は、結果母枝(休眠枝)の1から2芽を残してせん定します。一文字仕立て、H型仕立て、WH仕立てなどの平行整枝に使用します。

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短梢せん定のようす

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短梢せん定の代表的な整枝方法
*主枝長は、品種、樹勢や地力から決めます


●芽座がない場合、前後の芽座の結果母枝を利用して新梢数を確保します。連続して芽座がない場合は、生育期に新梢を誘引して、欠損した芽座を補完します。

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欠損した芽座の補完のようす

新梢管理

「芽かき」
●新梢の生育を揃えるために展葉2~3枚時は不定芽、副芽を取り除きます。展葉6~8枚時は、極端に強い新梢あるいは弱い新梢を取り除きます。
「新梢誘引」
●新梢の伸長に応じて、新梢が交差しないようにテープナーを使って誘引線に固定します。巻きツルも同時に除去するようにします。
「摘心」
●花振い防止や果粒肥大促進のために、開花前は新梢の先端5mm程度をつまんで取り除きます。結実後は新梢の長さが目標を超えたら適時、新梢の先端を摘心します。
「副梢管理」
●各節から伸長した副梢の葉は、1~2枚(節)残して切除します。副梢から発生した二次副梢は基部から切除します。

果房管理

ここでは、種なし栽培の果房管理を説明します。
「摘房」
●基本として1新梢に形の良い果房(花穂)を1房残して、それ以外の果房は穂梗の基から切除します。
●弱い新梢(葉数10枚以下)は、すべての花穂を切除して空枝にします。
●花穂整形前は目標着房数の5割増の花穂を残し、第2回ジベレリン処理頃には目標着房数に調整します。
「花穂整形」
●適期は花穂が伸びきった開花初めです。「巨峰」、「ピオーネ」、「シャインマスカット」は、副穂を切除して主穂の房先3.5~4.0cmの花らいのみ残して、他の花らいは切除します。花穂先端が異常な場合、副穂や上段の支梗を花穂整形して使用します。

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花穂整形のようす(種なし栽培用)


 ブドウの収量、着果基準の一例 「シャインマスカット」
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「種なし処理」
●種あり果の混入を避けるために、満開2週間前から開花初めまでにストレプトマイシン剤の1000倍液を散布あるいは花房を浸漬します。
●第1回目のジベレリン処理は種なし化のために実施します。満開3日後くらいの花穂を25ppmのジベレリン液で浸漬します。「ピオーネ」など果梗が硬くなりやすい品種は、12.5ppmで処理します。
●着粒安定や果粒肥大の促進のために、第1回目のジベレリン液にホルクロルフェニュロン(フルメット液剤)を2~5ppm混用する場合もあります。
●第2回目のジベレリン処理は、果粒肥大のために実施します。満開10~15日後の果房に25ppmのジベレリン液を浸漬します。

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左 :第1回ジベレリン処理のようす *目印用の赤い染色液を使用
右 :摘粒の一例


「摘粒」
●第2回目ジベレリン処理の終了後、ただちに実施します。目標果房重、目標果粒重に応じて着粒数を設定します。
●内向き果、小粒(ショットベリー)、奇形果、傷・さび果を優先的にハサミで間引いて、適正な着粒数に調整します。
「袋かけ」
●摘粒、摘房が終わり次第、できるだけ早く実施します。袋かけ前には、晩腐病などの予防のために農薬散布します。
「傘かけ」
●日焼けの被害が多い場合、病害対策として、単用あるいは袋かけと併用します。

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袋かけと傘かけのようす

「参考情報:アシストスーツ」
●ブドウ(棚栽培)などの管理作業用にアシストスーツが開発され、普及も始まっています。
●アシストスーツは、肘を支えることで腕の重みを支え、腕を上げておこなう作業を楽にしてくれます。
●ブドウの場合は果房管理、とくに摘粒作業で軽労化効果が高いとされています。

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(提供 :株式会社クボタ)

アシストスーツ「ラクベスト」

収穫

●収穫基準は品種によって異なりますが、糖度18%以上、酸度(pH3.3以上)を目安とします。
●品種によって専用のカラーチャートを使用して、収穫期を判定します。

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カラーチャートの一例。「シャインマスカット」用

●早朝の気温が低いときに収穫します。
●果粉(ブルーム)を落さないために、穂軸を持って果粒に直接触れないように収穫します。

病害虫防除

●主な病害は、灰色かび病、うどんこ病、黒とう病、べと病、晩腐病などです。
●主な害虫は、スリップス(チャノキイロアザミウマ)、コガネムシ、カイガラムシ類、ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバ、クビアカスカシバ、ハダニ類などです。
●自根樹の場合、ネアブラムシ(フィロキセラ)が根に寄生する危険性が高まります。
●地域の公設試験場、農業普及指導機関、JAなどが主要病害虫の発生状況や防除歴の情報を提供しているので、それらを参考にして適期に薬剤散布します。

施肥

●元肥は落葉期(10月下旬~11月上旬)に緩効性肥料を施肥します。
●追肥(夏肥)や礼肥(収穫後)は樹勢や葉色から判断して、必要があれば窒素成分を主体とした速効性肥料を施肥します。
●土壌pHや養分欠乏症状などから判断して、石灰や微量要素(マンガン、ホウ素など)を施肥します。

執筆者
農研機構果樹茶研究部門
薬師寺 博