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野菜・果樹

伝統野菜の品種紹介 【ダイコン編】

在来品種が見直されています

 国産農産物の見直しは年々高まっています。
 そうした中で、各地に受け継がれている伝統野菜が、いま人気です。
 ここでは在来品種として日本各地で栽培されるダイコンを取り上げ、それぞれ特徴ある由来や栽培方法、食べ方などを紹介します。

安家地大根


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安家地(あっかじ)大根 (岩手県岩泉町安家地域)

●由来と特徴
 安家地(あっかじ)大根の表面は鮮やかな赤ですが、紅白やピンク、白などもあります。赤色は表面の3mmくらいで、内部は白色。肉質が硬く繊維質に富み、貯蔵性に優れています。
 冬の厳しい安家地区では、この貯蔵性の良さが最も大事な特徴でした。味については、普通のダイコンと比べ辛味が非常に強く、ビタミンC含量が高いです。
 ルーツは中国華北地方といわれ、いつ頃から栽培されてきたかは不明です。先祖代々種が引き継がれて、60年前くらいまではどの家でも安家地大根を生産していましたが、戦後は品種改良された青首ダイコンに切り替えられました。
 また、冷蔵庫の普及により保存食としての価値が低下したことから生産は激減しました。

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聖護院だいこん


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聖護院だいこん (京都府全域)

●由来と特徴
 聖護院だいこんは、直径20cm、重さ4kg以上にもなる丸形の大型ダイコンで、美しい白い肌と肉質の緻密さが特徴です。
聖護院だいこんの栽培の始まりは、江戸時代も終わりに近い文政年間(1818~30年)に、尾張の国から黒谷の金戒光明寺に2本の長ダイコンが奉納されました。たまたま、聖護院(京都市左京区)に住む田中屋喜兵衛という篤農家がこれを見て、その当時、聖護院地区で栽培されていたダイコンよりはるかに大きく、非常に立派だったことに驚きました。そして懇意であった門主から頼んでもらい受け、聖護院の自分の畑で採種を続け、栽培を続けていくうちに、細長いダイコンの中に短形のものが出てきました。その中から、太くて短い形のものを選んで採種を行い、栽培を続けていくうちに、とうとう丸形の固定した品種が育成されました。
 このダイコンは、当時栽培されていたダイコンより品質が良く、耕土の浅い土地での栽培にも適する等の優れた特性を持っていたことから、聖護院一帯で急激に栽培が広がり、「聖護院だいこん」という名で、京都各地で栽培されるようになりました。

 昭和初期になると、京都市の南にある御牧村淀地区(現:久御山町付近)での栽培が盛んになり、品質の良い聖護院だいこんが収穫されたことから、特に、この地区で収穫される聖護院だいこんは、今でも淀大根として親しまれています。
 また、毎年12月7日・8日千本釈迦堂で行われる大根焚(だいこだき)は有名です。聖護院だいこんに梵字を書き、加持祈祷が行われた後、大釜で炊かれ、参拝者に授けられます。これを食べると無病息災で過ごせるといわれ、毎年多くの参拝者が訪れます。

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庄大根


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庄大根 (愛媛県松山市(旧北条市庄地区))

●由来と特徴
 「庄大根」は、根形は尻詰まりの長円筒形、根首部分から約3分の1が赤紫色、根の内部色は純白で肉質は緻密でスが入りにくく、トウ立ちが遅い品種です。青首種と比べると甘味が強く感じられ、霜に当たるようになると甘味が増してくるダイコンです。

 庄大根の栽培は、松山市(旧北条市) 庄地区で160年前から行われており、県内で耕土が深く、小石が少なく排水の良い当地区に集約されてきました。
 昔から地元で受け継がれ、小規模ながら生産者が一体となって栽培に取り組んでおり、地域特産で歴史もあることから「愛媛のふるさと農産物」にも選ばれています。

 庄地区では7月20日は「虫祈祷(むしきとう)」といい、地域の人がお寺に集まり、稲に悪い虫がつかないように願い、数珠を回します。その後、みんなで庄大根を使った「口金汁(くちがねじる)」でご飯を食べる行事がある等、今でもなじみの深いダイコンです。

 首の部分が赤紫色の庄大根であるが、いつの間にか赤が緑になったため、昭和57年、愛媛県農業試験場(現:愛媛県農林水産研究所)に依頼し、原種に近い種の組み合わせ実験を繰り返し、平成6年、有望な系統が得られ再誕生となりました。平成9年に地域の高齢者を中心に「庄大根研究会」が結成され、現在も技術継承が行われています。

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田辺大根


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田辺大根 (大阪市東住吉区)

●由来と特徴
 「田辺大根」は、大阪市東成郡田辺地区(現大阪市東住吉区)の特産である白首のダイコンで、天保7年の「名物名産略記」に記載があります。
 本品種のルーツは、白あがり京大根とねずみ大根との交雑後代が、当地区に土着したのではないかとされています。
 明治時代の田辺大根は、短根で縦横がほぼ同長のものでしたが、次第に長型に淘汰改良されました。根部は白色の円筒形で、末端が少し膨大し、丸みを帯び、長さ20cm、太さ9cmほどで、葉には毛(もう)じがありません。

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とっくり大根


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とっくり大根 (山口県徳山・新南陽地域)

●由来
 「とっくり大根」は、山口県の瀬戸内沿岸にある徳山・新南陽地域で漬物用として栽培されてきたダイコンです。
 栽培の始まりは定かではありませんが、100年以上の歴史が確認されており、明治時代から昭和の初期にかけて、このダイコンを漬物にした「徳山沢庵粕漬」が京阪神や関東をはじめ、全国各地に広く出荷されていました。
 収穫後の乾燥は、柿の木に吊して乾かす方法が今も続いており、この風景はこの地域の風物詩になっています。
 現在では、周南市福川の羽島・かせ河原町・中綴(なかなわて)町の数戸の農家が段々畑で生産を続けています。

●特徴
 根形がとっくりの形をした小型のダイコンで、首部の直径が1.5~2.0cm程度と細く、尻太で、最大部の根径は6~8cm、根長は13~17cm、根重400~500g前後が一般的な大きさです。
 他の地区で栽培すると、なかなかとっくり型にならないといわれています。

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花作大根


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花作(はなつくり)大根 (山形県長井市花作地区)

●由来と特徴
 「花作(はなつくり)大根」は、山形県長井市花作地区で、長期保存できる漬物用として伝えられてきた小さなダイコンです。根部の形は円筒形または徳利形、大きさは一般のダイコンの3分の1程度です。肉質がしっかりしており、漬物にした時でもパリパリした食感を持つことが第一の特徴です。苦味があり、生食用には適しませんが甘みがあります。

 江戸時代に米沢藩上杉家の殿様から「花作大根」の名称を授かったと伝えられています。  かつては県南部の置賜地域一円で栽培されていましたが、生産性の低さや食生活の変化などから栽培面積が減少しました。
  今では、長井市花作地区周辺でしか栽培されていない"幻のダイコン"です。

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米良糸巻大根


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米良糸巻大根 (宮崎県児湯郡西米良村)

●由来と特徴
 西米良村で古くから作り続けられている固有のダイコンです。
 根に赤紫色の糸を巻き付けたような縞模様が入るところから「糸巻大根」と呼ばれますが、地元では「米良糸巻大根」「米良大根」と呼ばれます。地色が白いものと赤いものとがあり、形状は自家採種されているものでは丸~紡錘~長とさまざまです。糖度が普通のダイコンに比べて2度から3度高く、肉質が緻密でやわらかいのが特徴です。

 「米良糸巻大根」の歴史は古く、16世紀初頭には栽培されていたと考えられていることから、500年以上も作り継がれてきている伝統野菜と言えます。
 西米良村は96%が山林原野であり田畑が非常に少ないため、古くから焼畑(コバ)で栽培される糸巻大根は、粟や稗とともに貴重な食糧でした。
 現在でも、その特長を活かした煮物・なます・切り干しなどに幅広く利用されていますが、その中でも切り干しは昔「米1升と切り干し1升が交換できる」ほど高価なものだったようです。
 現在は普通畑で作られることが多いですが、焼畑で栽培された物は特に甘みが強いと言われており、まさに山間地帯の西米良村の風土に適した野菜です。

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