促成ピーマン栽培の作業体系のポイント
圃場準備
●耕土が深く、通気性および排水性、保水性が良い圃場が適します。特に土壌中の酸素濃度が低くなると生育が抑制される傾向があるため、堆肥等の有機資材を施用し、土作りに努めます。
●定植1ヵ月前に有機資材と苦土石灰等の土壌改良材を施用し、よく耕耘します。
●有機資材に切りワラを使用する場合は10aあたり1.5t程度、バーク堆肥の場合は3t程度を基準とします。苦土石灰は施用前にpHを測定して施用量を決定します。
●基肥の施用量は土壌分析結果に基づき判断しますが、10a当たり窒素成分で30~35kg程度が目安です。
●基肥は定植の15日前に全層に施し、定植の7日前までにうね立てをします。その際、土壌が乾いていると、定植・かん水後に土壌表面が硬くなったり、肥料の分解が遅れるので、適湿な状態で作業を行うように注意します。
品種
●地域で奨励・推奨されている品種を用います。
●青枯れ病や疫病等の病害抵抗性を有した台木が市販されており、これらの病害対策には接ぎ木苗の利用が有効です。
●トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMOV)対策としても抵抗性台木品種の利用が有効ですが、台木と穂木の抵抗性の遺伝子型が一致しない場合、どちらか一方が感染すると他方の抵抗性による過敏感反応で萎凋、枯死する場合があるので、接ぎ木にあたっては、穂木の抵抗性遺伝子型と一致した台木品種を選択する必要があります。
育苗
●育苗時期が高温期となるため、風通しが良く、日中の温度をできるだけ下げられるハウス条件が適します。
●ハウスの開口部には寒冷紗を張り、害虫の侵入を防ぎます。
●天敵昆虫利用防除の場合は、粘着資材を用いたり、育苗の段階から、天敵への影響日数を考慮した薬剤を使用するようにします。
●購入苗の利用と自家育苗があります。育苗日数は8月上~中旬播きで、15cmポット育苗の場合、28~35日前後です。自家育苗の場合には定植予定日から逆算して播種時期を決定します。
●かん水は生育状態、天候、土壌の湿り具合を見ながら過湿、過乾にならないようにこまめに行います。 また、曇雨天後の晴天時には散霧により葉を萎れさせないように注意します。
●本葉4~5枚になり葉が重なり合うと徒長して分枝下が長くなるので、葉が重ならない程度(30cm×30cm)に鉢間を広げます。
左から上から 購入(接ぎ木苗)の鉢上げ状況 / 鉢間を広げた状態
定植
●第1花の蕾が見え、第1分枝が確認できる頃が定植の目安です。
●樹勢の強い品種は、育苗日数をやや長くし、開花直前の苗を定植して樹勢を落ちつかせます。
●定植前々日~前日にかん水し、植え穴を十分に湿らせます。定植後活着までは手がけかん水とし、天候や生育状況を見ながら7~10日間は鉢の周りを中心に丁ねいにかん水します。
●栽植密度は、1条植え4本仕立ての場合、うね幅1.8m、株間60~70cm、790~925株/10a程度です。
定植時の状況
一般管理1(誘引・整枝・摘葉)
●誘引方法はうね幅によって直立に近いV字型から、ふところを大きく広げたU字型の方法があります。
●樹勢の弱い品種は、いったん弱まると回復が遅れるので、初期はV字型に立て、主枝摘心後、樹勢に応じて誘引糸を調節する方法をとります。
●側枝の整枝は樹勢に応じて行いますが、3~4節摘心、収穫後1~2節切り戻しが基準です。
●主枝の摘心は、草丈がうね上から1.1~1.2mの高さ(主枝節数10節前後)が目安です。
●摘葉は整枝と併せて実施します。古い葉で側枝に光が当たらないような葉を順次除去するようにし、一度に過度な摘葉はさけるようにします。
左から上から 主枝摘心前の生育状況 / 光線透過の良い誘引、整枝とする
一般管理2(かん水・追肥・温度)
「年内(12月)までの管理」
●ピーマンは水分要求量の多い作物で、やや多めのかん水で収量が増加する傾向が見られますが、排水の悪い圃場での多かん水は過湿による根傷みを生じやすいので注意が必要です。
●土壌条件によりますが、かん水量は1日当たり約2t/10aが目安です。
●9月上旬定植の場合、11月中旬頃にかけて着果数が増加するため、かん水量を徐々に増やしていきます。土壌条件や気象条件にもよりますが、2日に1回程度のかん水が目安です。収穫によって着果数が減った時にはかん水量も減らしますが、極端なかん水不足は根傷みを起こす場合があるので、1回量を少なくして回数は減さないようにします。
●追肥の開始は定植後20日を目安とします。1回の施用量は液肥の場合、窒素成分で10a当たり0.6~0.8kg程度とし、6~7日間隔で施用します。
●ピーマンの生育適温は昼温27~28℃、夜温18~20℃とされています。加温機の準備は早めに行い、ハウス内温度が18℃に下がる頃から加温を始めます。
「厳寒期(1~2月)の管理」
●天候にもよりますが、3日に1回のかん水を基本とします。時々、土の湿り具合を確認し、さらに着果状況や樹勢を見ながら1回量を調整します。
●追肥の1回の施用量は液肥の場合、窒素成分で10a当たり1.5~2.0kg程度とし、2週間ごとを目安に施用します。
●厳寒期はサイドの三重張りなどにより保温に努めますが、30℃以上になると樹勢の低下や受精不良から着果不良となるので、28℃以上にならないように管理します。
●地温は18℃を確保します。地温が低いと根の活力が低下し、樹勢の低下を招くため、冬期は株元まで光が当たるように整枝を行い、地温確保に努めます。
「春先(3月)以降の管理」
●3月以降は日射量が多く、気温も高くなるため、蒸散量が増加します。そのため、着果量が多く晴天が続く場合は、天候を見ながら全体のかん水量や回数を増やします。生育状況にもよりますが、晴天が続く場合には毎日かん水します。
●追肥も生育状況や収量をみながら、量と回数を増やします。1ヵ月当たり窒素成分で5.0~6.0kg/10a程度を数回に分けて施用します。
●日中はできるだけ30℃を超えないように、換気を十分に行います。夜間は4月いっぱいは引き続き18~20℃で管理します。
病害虫防除
●病害では、ウイルス病(PMMOV・TSWV等)、青枯病、黒枯病、斑点病、うどんこ病等が問題となります。土壌病害については接ぎ木利用や土壌消毒、地上部病害については、ハウス内温度、湿度、草勢、施肥の管理で発生の予防に努めます。薬剤防除については予防および初発期の対応が重要です。
●虫害では、アザミウマ類、タバココナジラミ、アブラムシ類の被害が問題となります。開口部への防虫ネット被覆により侵入防止に努めるとともに、発生初期の防除タイミングを逃さないように注意します。
●地域の農業指導機関やJAでも主要病害虫の発生情報を提供しているので、それらの情報も防除に有効活用します。
高知県農業振興部 産地・流通支援課
細川卓也
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