提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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農作業便利帖


野菜・果樹

ニンニク栽培の作業体系

(2021年8月 改訂)

圃場準備

「圃場の選定」
●病害虫の汚染がなく、排水良好・肥沃な圃場を選定します。
●種子圃場は、生産圃場と別に設けるようにします。

「排水性改良」
(使用機械:トラクタ、サブソイラ、プラソイラ、パラソイラー、溝掘機等)

●圃場の排水性を考慮し、高うねや明きょ、硬盤破砕(パラソイラーやサブソイラ等)を施工します。

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溝掘機(小橋工業株式会社、スガノ農機株式会社、松山株式会社、株式会社IHIアグリテック)

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パラソイラー(松山株式会社)(左)と断面図(右)

施肥・耕起

(使用機械:トラクタ、マニュアスプレッダ、ブロードキャスタ、バーチカルハロー、ロータリ等)

「土壌改良」
●土壌診断結果により、良質堆肥、石灰分、リン酸分等を施用します。
●pH(H0)の目標値は、6.0~6.8です。
●有効態リン酸は50mg/100gを目標に改良します。
●完熟堆肥を2t/10aを施用します。

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 :プラソイラ(スガノ農機株式会社) /  :バーチカルハロー(松山株式会社)

【バーチカルハローの特徴】
●プラウ等の作業後、耕起された表層は凸凹しており、この凸凹を砕土・整地・鎮圧しています。各播種・移植の床づくりの前準備ができます。
●通常のロータリを使用すれば、鋤込んだ有機物をかき出すことになりますが、バーチカルハローはブレードが縦軸回転のため、鋤込んだ有機物を表面にかき出すことがありません。
●鎮圧用のスパイラルローラは、適度に表層を締めるため、蒸散防止と適度な土壌水分が保持できます。

「施肥」
(使用機械:トラクタ、ワイドスプレッダ、ブロードキャスタ、ロータリ、超耕速アクティブロータリー)

 ■青森県 ニンニク施肥基準
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 ※全量基肥体系か追肥体系を選択します。

●追肥時期
①マルチ栽培
1回目 :4月下旬
2回目 :透明マルチ(りん片分化期後10日頃)
     黒マルチ (りん片分化期~同後10日頃)
②無マルチ栽培
1回目 :4月上旬
2回目 :5月上旬

【りん片分化期について(青森県 福地ホワイト)】
・透明マルチでは消雪後0℃以上の積算気温で200℃を目安にりん片分化期を調査する。
・りん片分化期は先端が陥没したりん片の源基が1個以上発生した株が、8割以上となった月日である。調査には生育が中庸な株を用いる(最下部まで茎葉をむいて検鏡して調査)。
・緑および黒マルチのりん片分化期は透明マルチより約6日および10日遅くなる。
・「福地ホワイト」のA品収量が最も高い(収穫)時期は、マルチの種類に関わらず、りん片分化期から積算気温で1000℃以上に達した月日である。
※出典:青森県指導参考資料「りん片分化期後の積算気温からみたにんにくマルチ栽培の収穫」

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左 :ワイドスプレッダ(株式会社ビコンジャパン)
右 :アクティブロータリー(株式会社ササキコーポレーション)


「耕起」
●植付け2~3カ月前に緑肥(スダックスなど)を播種し、植付け1カ月前にすき込みます。
●砕土を十分にし、整地をていねいに行います。

「うね立てマルチ・栽植密度」
(使用機械:ニンニク成形マルチ同時土壌消毒機、スーパーエイブル平高マルチ)

●マルチの色は、透明、グリーン、黒などがあります。地域や雑草等の状況に応じて選択します。
●マルチ栽培は全量基肥体系が主体で、基肥は緩効性肥料を主体としたものを施用します。
●マルチ前に処理可能な除草剤があるので、利用すると良いでしょう。
●うね幅:150~160cm(通路込み)、条間:25cm(4条植)、株間:15cm、16,667~17,778株(10a当たり)。
●種子圃場はイモグサレセンチュウ未発生圃場とし、紅色根腐病等の土壌病害の発生に応じて土壌消毒することが望ましいです。

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 注)排水性がやや不良な圃場に作付けする場合は、高うねとする。

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ニンニク成形マルチ同時土壌消毒機(RT531-4AO:筑波工業株式会社)+(NKS-3RA:アグリテクノサーチ株式会社)

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スーパーエイブル平高マルチ(PH-MR143:鋤柄農機株式会社)

種子選別と植付

「種子の準備」
(使用機械:種子選別機)

●ウイルスフリー種苗を毎年一定量購入し、計画的に増殖します。
●種子りん片重は10~15g。これより大きめの種子は複数芽が発生しやすくなる傾向にあり、小さめのものは肥大が劣ります。種子量は、10a当たり約260~300kg準備します。
●種球をりん片に分割し、大小に選別して、チューリップサビダニ、黒腐菌核病、イモグサレセンチュウ対策の種子消毒を行います。

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左 :種球の準備
右 :ニンニク種子選別機(NTS-5C:株式会社岡山農栄社)


「植付」
(使用機械:種子供給機、ニンニク植付機)

●青森県での植付適期は、9月下旬から10月上旬です。
●種子りん片の発根部を下にして、逆や横向きにならないように挿し込み、覆土します。
●種子りん片の最上部から7cm程度覆土されるように挿し込みます。

【覆土の作業工程】
マルチング
→植え付け
→通路から管理機でマルチ上に土をとばす
→トンボでマルチ上の土を適度にならす
※覆土しながら同時に土をならす管理機もあります。

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左 :ニンニク種子供給機(NS120:株式会社ササキコーポレーション)
右 :ニンニク植付機(NU425:株式会社ササキコーポレーション)


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左 :覆土・マルチ押さえ用(ねぎ管理機:株式会社クボタ)
右 :にんにく覆土専用機(K550G-D:関東農機株式会社)

植付け後の管理

「追肥」
●追肥時期(再掲)
①マルチ栽培
1回目 :4月下旬
2回目 :透明マルチ:りん片分化期後10日頃
     黒マルチ :りん片分化期~同後10日頃

②無マルチ栽培
1回目 :4月上旬
2回目 :5月上旬 

「除けつ(わき芽かき)」
●大きい種子を植えると2芽以上萌芽してくる場合があるため、7~8葉程度の時期に1本を残してかき取ります。

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わか芽かき

「とう摘み」
●6月以降抽台してくるため、随時とうを摘み取ります。残すと肥大が劣ります。 

【穴あきマルチの追肥】
●前提条件として緩効性肥料を基肥に用い、基本的に全量基肥タイプが多いです。それでも追肥を行いたいときは、上記の施肥基準を目安に追肥します。
●追肥方法は、速効性の粒状肥料をマルチの上にバラバラと散布します。

防除

(使用機械:ハイクリブーム、ラジコン動噴、ドローン(今後の農薬登録を注視)など)

●春腐病、さび病、チューリップサビダニ、ネギコガ、アブラムシ類等の発生に注意し、予防を主体に計画的に防除します。
●茎葉に薬剤が付着しにくいので、浸達性のよい展着剤を使用します。

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左 :ハイクリブーム(BSA-651CE:株式会社丸山製作所)
右 :ラジコン動噴(MSA415R4C-RV:株式会社丸山製作所)


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ドローン(T20K:株式会社クボタ)

収穫・搬出

(使用機械:トラクタ、ロータリーカッター、マルチはぎ機、パワーハーベスタ、ニンニクハーベスタ、ルートシェーバー)

「収穫時期の判断」
●葉が30~50%黄変し、球の盤茎部とりん片の尻部がほぼ水平になった時期が収穫適期です。
●青森県では、6月下旬~7月上旬頃となります。

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「施肥」の項【りん片分化期について(青森県 福地ホワイト)】を参照

「収穫方法」
【パワーハーベスタ利用の場合】
●茎葉を刈り取り、マルチをはいでから掘り取ります。

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左 :ロータリーカッター(NC1253:株式会社ササキコーポレーション)
右 :パワーハーベスタ(HN1254(D):株式会社ササキコーポレーション)


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コンベア付パワーハーベスタ(HN1254GC1:(株)ササキコーポレーション)
※フロントローダー受取後フレコン収納


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マルチはぎ機 DR-101(左)、DR-202(右)(株式会社デリカ)

【ニンニクハーベスタ利用の場合】
●マルチを張ったままで4条同時抜き取り、土落とし、茎葉切断までが、この1台で行えます。
①事前に茎葉を刈り取る必要がありません。
②事前にマルチをはいでおく必要もありません。
③抜き取ったニンニクと一緒に付着してくる土塊の量が少なくなり、後の収納作業がやりやすくなります。
④やや湿潤な圃場においてもスムーズな収穫ができます。

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4条抜き取り+付着土除去+茎葉切断+収穫

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コンベア付きニンニクハーベスタ(HN404GL4:株式会社ササキコーポレーション)

※いずれの場合でも株は、茎を5cm付けて根を切り取って、コンテナ詰めにします。人力で作業するか、省力のためには茎と根を同時に切断するルートシェーバーを利用します。

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ルートシェーバー(GR454M:株式会社ササキコーポレーション)

「運搬」

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左 :リヤリフト(RL802:三陽機器株式会社)
右 :グレイタスローダ(三陽機器株式会社)

乾燥・調製

「乾燥方法」
●青森県では、ニンニクを詰めたコンテナをブルーシートで覆うシート乾燥が主流で、吸引式のシート乾燥が基本となっています。このほか、ニンニクを網袋に入れて棚に並べる棚乾燥、コンテナを井桁状に積んだ井桁積乾燥、スチールコンテナ乾燥もあります。スチールコンテナ乾燥は風量を強くする必要があります。
●日中35℃、夜間20℃とするテンパリング乾燥はやや乾燥日数を要しますが、貯蔵後の品質は良好となります。

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シート乾燥の様子。コンテナの積み方(左)とファンの取付(右)
出典:農研機構 マニュアル(参考文献参照)

吸引式
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コンテナ上部の処理例(令和元年 青森野菜研)
乾燥の進行によって生じるりん球の沈降分を予想して、すべてのコンテナの上部約20cmをプラスチックフィルムなどで塞ぐ(矢印部分)。
出典:青森県指導参考資料「大型コンテナを利用したにんにくのテンパリング乾燥法」(令和2年度)


「乾燥終了判断」
●乾燥直前の球重量に対し3割程度減少した時点で、盤茎部に爪が立たない状態で乾燥終了とします。
●建築用水分計を活用すると、乾燥終了の判断の参考にできます(盤茎部水分が15%程度)。
●乾燥期間は、概ね3~4週間程度です。

「調製」
(使用機械:簡易皮むき機+コンプレッサー、にんにく根すり機ガーリックトリマー) 

●茎を1.5cm以内に切断し、表皮を1~2枚はいで根を完全に除去し、盤茎部をきれいに削り取ります。
●出荷規格に従い、1kgネット詰めか小袋詰めとします。

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左 :にんにく皮むき機(NSAー1C:株式会社岡山農栄社)
右 :ガーリックトリマー(GN600:株式会社ササキコーポレーション)

貯蔵

(施設:-2℃冷蔵施設、乾熱処理施設)

●農家保管で萌芽や発根を抑えられる限界は、一般に10月位まで。出荷はそれまでに行います。
●長期保管しながら出荷していく場合は、乾燥終了後ただちにJA等の-2℃冷蔵庫に保管します。
●-2℃冷蔵庫から出庫後、青森県ではJA等の専用施設で乾熱処理を行います。乾熱処理は萌芽発根を抑える効果がありますが、出庫時期によって効果的な処理温度や処理時間が異なるため、注意が必要です。

※参考文献
山崎博子・庭田英子・伊藤篤史.2013.ニンニク周年供給のための収穫後処理マニュアル.農研機構東北農業研究センター

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