肥育牛にイネWCSを給与する際の効果や注意点
肥育牛は黒毛和種、乳用種去勢牛、交雑種(F1)に分けられます。
黒毛和種の肥育牛では、多くの場合、ビタミンAをコントロールする肥育法が行われているので、それを前提に説明します。
適期に収穫されて良質なサイレージに調製された稲発酵粗飼料(以下、イネWCS)は嗜好性に優れていて、肉用牛がよく採食します。一方、イネWCSには、ビタミンAのもとになるβ‐カロテンが稲わらよりも多く含まれるので、肥育中期(15~22月齢)には給与を控えます。肥育前期は6kg程度まで、肥育後期には2kg程度の給与が目安です。
表1 黒毛和牛肥育牛への稲発酵粗飼料給与の目安 (ビタミンA制御型)
単位 :原物kg
予乾しないで収穫したサイレージは、β‐カロテンが高いので、肥育前期の段階(例えば12月齢)までに給与を中止した方が良いという報告があります。それとは反対に、収穫後の予乾や収穫自体を遅らせるとβ‐カロテンの低いイネWCSとなるので、稲わらと同様に肥育中期にも給与が可能との報告があります。イネWCSといっても、条件によってβ‐カロテンの含有量は異なるので、その中身を把握しておく必要があります。
ビタミンEには抗酸化作用があることから、ビタミンEの多い飼料を給与した肥育牛では、筋肉中にビタミンEが蓄積し、肉色の退色や脂質の酸化を抑える効果があるといわれています。イネWCSは、ビタミンEを乾物中に100mg/kg以上含んでいるので、肥育後期にイネWCSを多く給与することで、肉色の退色や脂質の酸化を抑制する効果をねらった給与法もあります。
表2 黒毛和種肥育後期牛への稲発酵粗飼料給与の目安 (後期給与型肥育)
単位 :原物kg
交雑種へのイネWCS給与は、黒毛和種と同様に肥育中期には差し控えますが、乳用種去勢肥育牛へは、肥育期間を通して給与することができます。
表3 交雑種肥育牛への稲発酵粗飼料給与の目安 (ビタミンA制御型)
単位 :原物kg
表4 乳用種去勢肥育牛への稲発酵粗飼料給与の目安
単位 :原物kg
(表はすべて『稲発酵粗飼料生産・給与マニュアル』より抜粋)
執筆者
小川 増弘
(財)日本農業研究所 実験農場長
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