飼料作・畜産編【4】 細断型ロールベーラを活用した発酵TMRの調製・貯蔵技術
(2016年2月 一部改訂)
TMRとは
●TMR(Total Mixed Rations:完全混合飼料)とは、牛が必要とするすべての飼料成分が均一に保たれた「混合飼料」のことをいいます。大きく分類すると、製造後、すぐに利用するフレッシュ型TMRと、梱包して2~3週間発酵させて利用する発酵TMRの形態があります。
●TMRの原料には、粗飼料、濃厚飼料、ビタミン、ミネラル等を準備します。
粗飼料 :生草、サイレージ、乾草など(牧草や飼料作物から作られたエサ)
濃厚飼料 :配合飼料、トウモロコシ、ぬか類、大豆・大豆かす、綿実など(デンプンやタンパク質量が多いもの)
●酪農経営においては、経営規模の拡大が進行するにつれて、通年作業である乳牛の飼養管理作業と、夏期における飼料生産作業の競合による労働負担が増してきており、効率的かつ合理的な飼料給与方法ということで広がりを見せてきました。現在では肥育を始め、肉用牛経営にも活用され始めています。
●個別で製造するだけでなく、TMRセンターや利用組合等をつくり、共同製造される事例も多く見受けられます。
●地域で生産された自給飼料(飼料イネ、イタリアンライグラス、トウモロコシ等のサイレージ)や食品残さ等を有効利用すると、TMR生産コストの低減を図ることができます。とくに、粕飼料や規格外の農産物などを積極的に活用する事例が多く見受けられます。
●高栄養かつ高収量のトウモロコシサイレージは、濃厚飼料の節減効果もあり、TMR原料として最適です。
●TMRを発酵させたものを、発酵TMRといいます。発酵TMRを使うメリットには、
①水分が高いTMR原料(食品残さも含む)の長期保存性の確保
②給餌作業の省力化
③低嗜好性粗飼料の採食性向上
④製造作業と輸送の弾力化 等があげられます。
飼料給与を単体飼料で行うと、牛が「選び食い」などを行い、適正な栄養摂取ができないこともありますが、TMRを利用することで改善が図れます。
TMR原料の準備
●TMRの原料を準備します。
●カッティング機能がないミキサーを使う場合は、事前に粗飼料を5~7cm程度に切断しておきます。
左から上から
TMR原料のイタリアンライグラスサイレージ
TMR原料の濃厚飼料
TMRの撹拌・混合
●ミキサーへの原料投入は、粗飼料(粗いもの)から濃厚飼料(細いもの)、混合割合が多いものから少ないものの順に行います。
●原料ができるだけ均一に混じり合うように、十分に撹拌します。
●TMR原料の均質化や発酵を促進し、かつ家畜の嗜好性を高めるために、水分含量を40%程度に設定します。
●TMRの水分含量が少ない場合には、必要に応じて加水します。
左から上から
TMR原料をミキサーへ投入
ミキサーでTMR原料を撹拌
TMRを適正水分にするため加水
TMRの詰め込み
●ミキサーで粗飼料と濃厚飼料が十分に撹拌・混合されたら、TMRを取り出します。
●ミキサーから排出されたTMRをコンベアー等で受け、バケットローダー等に積み込み、細断型ロールベーラのホッパーに投入します。
左から上から
ミキサーからTMRを取り出す
バケットにTMRを詰め込む
左から上から
TMRのロール圧力調整
細断型ロールベーラにTMRを投入
TMRの圧縮・成形梱包
●細断型ロールベーラで高密度に圧縮・成形梱包した後、型崩れしないようにネットを巻き付けて、自動で排出します。
●品質の安定化を促進するために空気を入れないこと、梱包に際しては飼料の水分状況を十分に確認しておく必要があります。
●ロールの形状は、円筒形で直径100cm×高さ85cm、重量は350~500kg(容積重520~750kg/㎥)になります。
●ロール成形及び排出する時のロスは、約1%とわずかです。
●ロールサイズは、直径85~115cm、高さ85~100cm対応の機種があります。
●コンビラップによるTMR製造については密封され梱包されます。廃ラップの軽減、再利用あるいは運搬を考慮して、近年はトランスバックによる製造もありますが、製造過程において空気が入らないよう注意する必要があります。
左から上から
細断型ロールベーラで圧縮・成形梱包
ロール状に成形されたTMR
TMRの密封
●細断型ロールベーラから排出された成形ロールに、ラッピングマシーンでラップフィルムを巻き付け、密封します。
●コンビラップタイプの細断型ロールベーラは、ロール成形からラッピングまでの一連の作業を全自動で行います。
●ラップフィルムの巻き付け回数は、TMRの気密性や長期保存性を考慮して、最低3回、6~8層巻にしましょう。
左から上から
ラッピングマシーンで密封
ラップフィルムで密封されたTMR
TMRの保管
●ベールグリッパで穴等をあけないように、密封されたロールをていねいにつかんで、保管場所へ運搬します。
●保管場所は、温度変化が少ない屋内が好ましいですが、一時的には屋外保管も可能です。
●屋外保管の際は、カラスや野鼠等による穴あけに、十分な注意が必要です。
●近年、中山間地域だけでなく平野部でもTMRが鳥獣害に合うことが増加しているため、野外保管の場合は防除用の網、あるいは電気牧柵で被害防止する必要があります。
●施設内保管についても、外部から鳥獣等が入らないための対策を講じる必要があります。
●サイレージ発酵は、通常3~4週間程度で終了します。
●発酵が終わったら、開封して給与します。
●利用については、二次発酵防止のために、開封後速やかに給与することが望ましいです。
●夏場においては開封後2日程度、冬場でも4~5日程度までに給与を完了させるようにして下さい。
左から上から
ベールグリッパでTMRを運搬
屋外保管中のTMR
左から上から
鳥獣害被害を防止のための施設外保存
鳥獣害防止のための施設内の防御対策
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