飼料作・畜産編【2】 ラップサイレージ
飼料作物や牧草の収穫適期
●飼料作物や牧草は、それぞれの適期に収穫します。収穫適期は栄養収量が最大となる時期です。
●ホールクロップ利用の場合、トウモロコシ、ソルガム、イネやムギ類では糊熟期~黄熟期が収穫適期です。また、牧草類では出穂~開花期頃が収穫の適期となります。
●牧草類では材料の水分含量が70%以上の場合、酪酸の生成量が増えて、発酵品質が低下します。
●特に糖含量の少ない材料の場合、高水分では劣質サイレージとなりやすいため、予乾することによって、酪酸発酵が抑制され、発酵品質が改善されます。
●そのため、牧草類では反転・拡散作業を行い、水分含量が40~60%程度に下がるまで予乾処理を行います。
収穫に用いる機械
●牧草の刈落とし作業には、モーアを用いますが、通常、乾燥時間を短縮させるために、モーアの後部に茎部を圧砕する装置(クラッシャー装置など)がついたモーアコンディショナが用いられています。
●刈り落した牧草などの乾燥を促進させるために、草を反転・拡散する作業機械がヘイテッダで、反転・拡散した草を拾い上げやすいように、帯状に草を集めて集草列(ウインドローワ)をつくる作業機械がヘイレーキです。
●ヘイテッダの作業とヘイレーキの作業が兼用できる機械が多く用いられており、テッダレーキと呼ばれています。
作業上の注意点
●ヘイテッダ、ヘイレーキ、テッダレーキは、草を反転・拡散、集草するために、爪(タイン)が付いており、トラクタに各作業機械を装着する場合、タインと地面が水平になるように調整します。
●タインが地面から高すぎるとロスが多くなり、低すぎると土砂をウインドローワに巻き込み、土砂を混入させてしまうため、作業前にタインと地面の位置を確認して調整することが重要です。
●ウインドローワで集草列をつくった後は、ロールベーラで牧草を拾い上げて梱包します。
●梱包作業では、きれいな円筒形に成形することが必要です。台形状や鼓状に成形してしまうと、フィルムを巻付けた後に梱包内に空気が残存して、発酵品質が低下する要因になります。
●変形したロールの2段積み保管では、荷崩れを起こしやすくなります。
●きれいな円筒状のロールを成形するには、ロールベールの拾上げ装置(ピックアップ装置)の左右と中央から均等に草を成形室に送り込むようにします。
トウモロコシの収穫
●トウモロコシやソルガムなどの長大作物も、平成16年度から市販化されている細断型ロールベーラを用いることで、ロールベールサイレージとして収穫調製作業ができるようなりました。
●トウモロコシの収穫適期(黄熟期)の見分け方としては、子実表面の凹みが雌穂全体に広がった頃に雌穂を半分に折り、その断面を観察し、子実の黄色部と白色部の境目(ミルクライン)が、ほぼ2分の1に達した時期が黄熟期です。
細断型ロールベーラ
●細断型ロールベーラは、材料草を投入するためのホッパを有しており、梱包したロールの結束時にも作業を中断せずに連続作業を行うことができることから、作業効率等も飛躍的に向上し、固定サイロ等への詰込み作業も行う必要がないことから、サイロ詰めに係る労力が軽減されます。
●細断型ロールベールの収穫作業体系は、定置作業、伴走作業、ワンマン作業で行うことができます。どのような体系で作業を行うかは、保有するトラクタの大きさや台数、作業人員などによって決めることになります。
左上 :細断型ロールベーラの作業 / 右下 :梱包したロール
●細断型ロールベーラの派生機の一つとして、汎用型飼料収穫機があります。これまでは、収穫部を交換することで、多様な飼料作物の収穫ができましたが、現在は、収穫部を交換することなく、WCS用イネやトウモロコシやソルガム等の長大作物を微細断して収穫ができるように、ロータリードラム式フォレージハーベスタ(マルチヘッダ)が搭載されています。なお、汎用型飼料収穫機には、機体後部に細断型ロールベーラのロール成形室を搭載したロールタイプと、テッピングワゴンを搭載したワゴンタイプの2機種が市販化されています。
●ワゴンタイプは微細断物をトラック等で運搬し、畜産農家の庭先でバンカーサイロに詰め込んだり、飼料基地等まで運搬してきた微細断物をベールラッパ一体型の細断型ロールベーラに投入してロールベールサイレージに調製できます。
左上 :汎用型飼料収穫機 WCS用イネの収穫
右下 :トウモロコシの収穫 (提供 農研機構 九州沖縄農業研究センター 高橋仁康)
ベールラッパを用いた密封作業の留意点
●収穫・梱包された牧草やWCS用イネ、トウモロコシなどのロールベールは、ベールラッパによってラップフィルムで密封します。フィルムの巻き数は、牧草やトウモロコシの場合は4層巻きが基本です。
●WCS用イネの場合、茎が硬いため、刈取られた茎の先端部によって、フィルムにピンホールが開きやすいことから、6層巻を基本とします。
左上 :ベールラッパでの密封作業 トラクタ牽引式体系
右下 :自走式体系
●密封後、3~4週間すると乳酸発酵が安定化し、芳香を伴った良質なサイレージができ上がり、家畜に給与することができます。
●保管から給与が終わるまでの間は鳥獣害対策を行い、フィルムの破損などに注意します。
浦川修司
国立大学法人山形大学農学部附属やまがたフィールド科学センター
エコ農業部門 教授
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