倒さないで多収を得るための生育診断と制御法
生育診断と制御法
「葉色、茎数による生育診断」
●稲の生育ステージごとに、適正な葉色や茎数、葉色×計数値があります。
生育診断適正値(葉色×茎数値)の適正値の推移
(出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p70(農文協))
●小苗植え、元肥窒素を減らした「じっくり型稲作り」のコシヒカリの適正値を、別表に示します。
※ 葉色は富士平工業の水稲用葉色板、茎数は㎡当たりの換算値
コシヒカリの生育診断指標 (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p70(農文協)より)
左上 :水稲用葉色板 / 右下 :葉色板測定の様子
●適正値を上回っていると、生育過剰、籾数が多くなりますが、倒伏しやすく、登熟も低下します。よって、中干しを強くしたり、穂肥の時期を遅らせます。
●適正値を下回っている場合は、籾数不足で収量が低下しますので、穂肥時期を早めます。
「天候のパターンで穂肥を判断する」
●田植後の天候の経過で、ある程度その年の穂肥、栽培法の考え方を判断することができます。
穂肥時期の判断 (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p65(農文協))
●「田植~梅雨入り」の天候が良く、「梅雨入り後」の天候も良ければ、攻めの栽培ができるし、その逆の場合は守りの栽培になります。
「穂肥時期の考え方」
●品種の特性やその年の生育によって、穂肥の時期は変わります。
品種や生育状況で穂肥時期を変える (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p65(農文協))
●倒伏に強い品種は出穂期前23~20日、倒伏に弱いコシヒカリは出穂期前15日が基本になります。
●その上で、その年の生育を診断します。
●葉色が淡く茎数が少ない場合は、穂肥時期を早めます。
●逆に、葉色が濃く生育が過剰な場合は、穂肥時期を遅らせたり、施肥量を減らします。
●穂肥を早めれば、籾数が増えますが、倒伏しやすくなります。
●穂肥を遅らせれば、倒伏が軽くなりますが、籾数は増えません。
「幼穂による穂肥時期の判断」
●幼穂は、出穂期の35日頃に分化して、伸びていきます。
●幼穂長と出穂前日数との関係は、コシヒカリの場合で1mmがほぼ25日前、8mmが18日前、20mmが15日前、80mmが10日前です。
●太い茎の基部をカッターで割いて、幼穂の長さを計ってみます。
幼穂の見方 (出典 『米の事典』p47(幸書房))
●タバコの長さと比べてみます。
●タバコの直径が出穂前18日前、フィルターの長さが出穂前15日前、タバコの長さが出穂前10日前です。
穂肥適期判断のめやす (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p74(農文協))
●タバコを吸わない人は、人差し指の爪の幅が出穂前18日前、指先の関節の長さが出穂前15日前、指の長さが出穂前10日前です。
●標準の生育をしていれば、タバコのフィルターの長さの時期に穂肥を施用し、葉色が淡かったら、タバコの直径の時期に早め、葉色が濃く倒伏が心配される場合は、タバコの長さまで遅らせます。
●この3つの診断と対応で、稲の状態は、かなり安定します。
「刈り取り適期の診断」
●出穂後40~45日たつと、成熟期を迎えます。
●刈り取り適期は、年によって、また、圃場によって異なるので、帯緑色籾率で診断します。
平均的な生育箇所の5~6本の穂をまとめて握って、基のほうの薄緑色の籾の割合で判定する。10~3%が適期(不穂籾は含めない)。
収穫適期の判断 (出典 :別冊現代農業 『イネつくりコツのコツ』p131(農文協))
●穂を5~6本束ねて握り、穂の基の方に薄緑色が残っている籾が「帯緑色籾」です。この籾の割合が10%程度のときが、刈り取り適期です。
●作付面積が多い場合は、15%程度から刈り始め、3%ぐらいに終えるようにします。
山口 正篤
全農とちぎ 技術参与
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