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水稲作におけるカリウム減肥

背景

●肥料価格の高騰や米価の下落により、水稲栽培ではこれまで以上に肥料費の削減が課題となっていますが、安心して減肥を行うためには減肥指針が必要となります。
●そこで岡山県では、土壌診断結果に基づき、カリウム施肥量を明確に決定できる減肥指針を作成しました。

水稲はカリウムが不足するとナトリウムの吸収が増える性質がある

●土壌中のカリウム含量が異なる水田それぞれへ、カリウム施肥量を変えて水稲の栽培試験を実施しました。
●試験を継続しても収量や品質に差は認められませんでした(図1左)
●ところが、土壌と肥料からのカリウム供給量(「交換性+施肥」カリウム飽和度)が少ないほど、稲わら中のナトリウム濃度が上昇する現象が認められました(図1右)
●これまでにも、水稲はカリウム不足時に代替としてナトリウム吸収量が著しく増加することが知られていました。
●そこで、稲わら中のナトリウム濃度が上昇し始めるポイントを、カリウムの潜在的欠乏領域と定義し、これを基にカリウム施肥量を決定する手法を開発しました。

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図1 カリウム供給量と精玄米収量(左図)及び成熟期の茎葉中ナトリウム濃度(右図)との関係

具体的な施肥量の決め方

●土壌分析結果から、施肥前の土壌のカリウム飽和度を求めます(図2)

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図2 土壌分析結果からカリウム施肥量を求める新たなカリウム減肥指針

「カリウム飽和度が4%を下回る場合」
●4%を目標にカリウム施肥を行い、その時の施肥量は図2に示す方法で求めます。
●ただし、施肥量の上限は地域の標準施肥量とします。
●これは、図1で示したとおり、カリウム飽和度が2%程度でも直ちに収量や品質が低下することはないからです。

「カリウム飽和度が4%を上回る場合」
●カリウム飽和度が4%を上回る場合には、カリウムは施肥しません。

岡山県南部の水田土壌の実態と減肥指針に基づく減肥効果

●岡山県南部の児島湾干拓地を中心とする水田地帯で、2006~2010年に合計135圃場で土壌分析を実施し、必要なカリウム施肥量を試算しました。
●本地域は裏作として麦が広く作付けされており、通常年2回以上カリウム施肥が行われているため、カリウム蓄積が予想された地域です。
●その結果、カリウム飽和度が4%以上で、カリウム無施肥栽培が可能な水田が82%(図3)あることが明らかになりました。
●また、カリウム無施肥栽培により施肥コストは約10%削減可能と試算されました。

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図3 岡山県南部、児島湾干拓地周辺水田土壌のカリウム飽和度のヒストグラム
(青塗りの圃場がカリウム無施肥可能な圃場数)

最後に

●今回の試験結果からも分かるように、水稲はカリウムが不足してもナトリウムを代替吸収し、土壌のカリウム飽和度が2%でも収量や品質が低下することはありません。
●しかし、水田は転換利用される場合があるため、本減肥指針は極端にカリウム含量が低下しないことを考慮し作成しています。

執筆者 
赤井直彦
岡山県農林水産総合センター農業研究所環境研究室 室長

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